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クエストは基本的に冒険者ギルドでしか受ける事が出来ない。
冒険者ギルド1階にある酒場のクエスト掲示板だって冒険者ギルドにある酒場だからこそ掲示板を置く事が許されているという公式設定があったはずだ。
だから他の酒場や宿屋でクエスト掲示板を見かけた事はなかった。
初めての例外と言えるこの喫茶店のクエスト掲示板にはどんなクエストがあるんだろうか?
俺はクエスト掲示板の前まで行ってどんなクエストがあるのか見てみる事にした。
【斬鉄鋼を探しています。】【アライアスの仮面入手依頼】【絶望の鎖求む】
聞いたこともないアイテムを求める依頼で掲示板は隙間なく埋まっている。
そのどれもが高レベルのアイテムだと考えられる物ばかりだ。
報酬も当然ながら高額になっているが俺にはちょっと敷居が高い。
【ケルベロス捕獲依頼】【バハムートをペットにしたいです】
これは本当にこの街にあっていいクエストなんだろうか?
もっと先にある……そう、魔王の城一歩手前とかの街とかそんな感じの所にあるクエストなんじゃないだろうか?
(これは俺には無理なクエストばかりだな。高レベルになってから来た方が良さそうだ。)
まだ始めたばかりでレベルも実力も足りない俺にはこういう高難易度のクエストは無理だろう。
「……ん?これは?」
俺はそんな中から変なクエスト依頼書を見つけた。
【魔力使いになってみませんか?弟子募集中!定員1名】
報酬の欄にはスキル【魔力操作】【凝固】と書かれている。
魔法使いじゃなくて魔力使い?っていうかこれってもしかしなくても限定クエストじゃないのか?
しかも定員1名かよ。この喫茶店に来たのは俺が初めてらしいからこう言うのも残ってるんだな。
気になるけどゲームを始めたばかりの俺が受けちゃってもいいんだろうか?何か申し訳ない気がする。
報酬の2つのスキルが魔力使いと言われる為に必要な必須スキルなんだろう。
この世界には職と言う物がない。自称で名乗っているやつらがいるだけだ。
魔法や魔術といった物は一応ある。スキルで覚えることができたはずだ。
威力は誰が使っても同じで、スキルに必要なMPもスキルの威力も補助スキルで底上げしない限りレベルに依存するといった物だけれど。
杖を装備して魔法スキルの威力を上げるプレイヤーはいるけれど、そういう人達だって杖はサブ武器でメインに他の武器を使っている。
魔法使いのローブみたいのもあるけど動きにくいので装備している人は少ない。魔法使いや魔術師はこのゲームでは絶滅危惧種なのだ。
というか、魔力使いっていうのは一体何だろう?
かなり気になる。他のクエストが高難易度なだけに報酬のスキルは強力なスキルであることは間違いないだろう。
制限レベルもないし、俺でも受ける事は出来そうだ。
少し悩んだが俺はこのクエストを受ける事にした。
・・・
店主にクエストを受ける事を告げて依頼人が居る場所を教えてもらった。
場所はエグベアから少し離れた場所にあるそうだ。
コボゴブの森近くにある小さな丘の上に依頼人が住んでいる家があるらしい。
俺は酒場を出て直ぐにコボゴブの森に行く事にした。
普通は準備をしっかりしてから外に出るものだけど、コボゴブの森は近いし何度も行っている場所だ。
それにレベル的にもそこまで苦戦する場所じゃない。
俺は回復アイテムだけをほんの少しだけ買ってコボゴブの森に向かった。
コボゴブの森は何時も通り人の気配が無い。
因みにコボゴブの森の付近はそこまでモンスターが出ないので、コボゴブの森周辺は森の中以上に人気がなかったりする。
俺は依頼人がいる家を目指して森から少し離れた場所にある小さな丘の上にある目的地を目指した。
丘の上にある家らしき物はコボゴブの森の入り口からでも目視できていたので、迷う事は無いだろう。
……まぁ、あれが人の住める状態の家には見えない所が不安ではあるのだけれど。
丘の上には確かに家がある。しかしその建物は遠目に見て廃墟と言っても納得が出来る程にボロボロだったので探索は後回しにしていたのだ。
まぁ、遠くで見た感じがボロボロなだけで近くで見ると意外としっかりした造りになっており、住むには快適とはいえないが人が住む事が出来ない程ではなさそうだ。
レンガ造りの建物は所々ひび割れており中々に不安が残る建物なのは間違いないけれど。
建物の入り口は壊れかけた木の扉がキイキイと揺れていた。
取りあえず扉の前に立ち呼び鈴を鳴らす。
「すいません、黒猫の瞳でクエストを受けてきたんですけど。」
しばらくして扉が開くと、2mは超えているだろうと思われる長身の老人が現れた。
顔は皺だらけの如何にも老人といった感じだが、筋肉質な引き締まった体は20代の青年といっても納得出来る程だ。
「ようやっと冒険者もあの店を見つけたか。お主が儂のスキルを使いこなせるかどうかは分らんが、教えてやろう。付いてきなさい。」
老人はそう言うと建物の奥の方へ引っ込んで行った。




