夢、霊障の中
男がいる。
顔つきを見て思い出す。
首に縄をかけられ、処刑される場面。
一度も会ったことはないが、あの男だ。
連続殺人犯として処刑された男。
どこかで見た待ち合わせ場所。
その男に、隣人が声をかける。
『早速頼みがあるんだ。物件を契約して欲しい』
二人は、街を歩き、見覚えのある不動産屋の前に立った。
『この紙に書かれた物件を契約するんだ』
『……』
処刑された男は、懸命に不動産屋と話をしている。
『内見なんかいい。いいからすぐ契約したいんだ!』
『……は、はい』
男は苛立っていた。
契約の手続きを終えると、不動産屋と処刑された男は車で物件に向かった。
何もない部屋。
窓からは電車の線路が見える。
ガタガタと揺れ出すと、電車が通った。
男は渡された鍵を手に持ったまま、床に座り込み、呆然と窓の外を見ている。
何度も電車が通り過ぎた後、部屋の扉が開いた。
軽く床が軋み、処刑された男が振り返る。
隣人が立っている。
『鍵を置いて出てけよ』
処刑された男は、また窓の方を向き直って無言で窓の外を見ている。
『出てけって言ってんだろ!』
隣人は背中を蹴った。
鍵が床を転がった。
それでも隣人は男の背中を蹴った。
何度も、何度も。
隣人は、処刑された男の名で借りた物件に住み始めた。
再び隣人は待ち合わせ場所にいた。
隣人は、女性に声をかける。
『自殺、するんですよね』
女性は頷き、隣人についていく。
ATMコーナーにいく。
隣人は操作をじっと見ている。
そのまま、二人は沿線のアパートにいく。
部屋に入ると女性に遺書を書かせた。
ユニットバスの部屋に入ると、睡眠薬を山ほど渡す。
女性は無言で飲んで、バスタブに座る。
火のついてない練炭を持って隣人が戻ってくる。
『おい』
女性の反応がない。
『寝たな……』
隣人は笑う。声は出ない。
漏れ出る息が、不気味にユニットバスの中に響く。
隣人は女性の服を脱がした。
続けて淡々と作業をするように、首を絞めて女性を殺す。
死んだ女性をしばらくユニットバスの中に放っておくと、またやってきて今度は女性の体を洗った。
『クソが出てこないように栓をしとかねぇと』
隣人は女性を部屋に運び出した。
部屋に横たえると、自らも裸になった。
電車の振動が部屋を揺らす。
隣人は全裸の死体を見下ろしながら、笑った。
声は出ない。
漏れ出るような息が、笑っていることを示している。
死姦。
電車がアパートの横を通り過ぎる時だけ、挿入する。
隣人が絶頂に達するには、電車の本数が必要だった。
そして達した後は、再びユニットバスに女性を戻す。
完全に遺体が固まった後、また部屋に戻すと、電車の振動に合わせて遺体を切断した。
複数の冷凍専用冷蔵庫。
部屋中に敷かれたペット用のおしっこシート
隣人は、血まみれの体をユニットバスで洗い流す。
繰り返される悪夢。
悪夢。
繰り返される、赤い悪夢。
……殺して。
どこかから聞こえてくる。
後ろ、と思って振り返るが誰もいない。
処刑された男が部屋に入ってくる。
隣人はいう。
『手筈通りにな』
処刑された男は頷く。
令状。
踏み込んでくる警察。
大勢の警察の中に制服姿の久世がいる。
確認される冷凍庫の中身。
大量のペット用のシート。
処刑された男は警察に連れられて、出ていく。
法廷。
手錠で繋がれた処刑された男。
沿線のアパートの封鎖が消えた頃。
再び部屋に入る男がいた。
窓を閉め切り、外から人がいると分からないように過ごしているようだ。
部屋には冷凍冷蔵庫があり、部屋の電力は勝手に使っていた。
隣人が部屋に戻ってくる。
『白石さん!』
俺は思わず叫んだ。
だが本人に声は届いていない。
それは隣人も同じだ。
口座を確認し、遺書を書かせ、睡眠薬を飲ませる。
今までと同じように繰り返される絞殺。
電車の通過に合わせ死体を陵辱するまで同じ。
『やっぱり君も殺されていたんだ』
床に寝転んだ死体が言う。
『殺して!』
俺は夢の中で考えをまとめる。
本当の犯人は一人。
捕まった男は、死にたくて真犯人から全てを引き受けただけ……
真っ黒な液体がどこからか溜まって、勝手に沈んでいく。
膝上、腹の上、胸の上、そして俺は全身がその黒の液体に飲まれた。
黒い液体の中、俺は感覚がなくなっていくにつれ、意識も薄れていった。




