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沿線のおと  作者: ゆずさくら


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15/19

焦燥

 俺は朝になるとすぐ友人に別れを告げて、自分のアパートへ戻った。

 アパートで寝たわけでもないのに、白石さんや犯人の夢は見る。

 おそらく俺が部屋を出ても、ずっとこの『霊障』に悩まされるのだろう。

 ならば、この問題を解いてしまおう。俺はそう思った。

 真実を明らかにすれば、妙な音や霊に悩まされずに済むだろう。

 俺はまず、掲示板を調べた。

 犯人がこの部屋を契約した頃からだ。

 マイクロSDを調べてくれた友達がくれた、過去ログを探す。

 並行して、犯人の名前を調べたサイトのウェブ魚拓を調べる。

 死刑が執行された犯人について、わかる限りの情報を引き出したいからだ。

 掲示板には、ずっと目をつけていた犯人らしき書き込みがあった。

 それとなく、引っ越したことが書き込まれている。

 この頃が隣部屋を契約した日なのだろうか。

 事件をまとめたウィキもある。

 俺はそのページを開きながら、内容を確認した。

 確かに、そのページに書かれている犯人が『部屋を契約した』時期とあっている。

 この書き込みがきっと犯人だ、と言うものを見つけた。

 掲示板には、書き込みごとに端末のIDに類似する識別子が記録される。

 同じ日の書き込みなら、この識別子を追うことで同じ人の発言かを確認することができるのだ。

 さらにアパートの近所を待ち合わせにしている書き込みをピックアップする。

 その識別子で、同じ日にどんな書き込みをしているかを追っていく。

「……」

 うまくいくと思っていた。

 書き込み内容からは同一人物でも、識別子が違う。

 たくみに日付が変わってから書き込んだりしているのだ。

 これが証拠、とは言い難い。

 俺はパソコンでそいつの書き込みと、相手がいた場合はそのレスを整理して並べてみた。

 自殺をしないかと誘い、出会う約束をする。

 別日に書き込みがあり、会えなかったとか、話をしたが本当に自殺を考えている人では無かった、とかそういう書き込みになっている。

 自殺したくて、掲示板をうろうろする人。

 並べると、そう見える。

 ただ実際、誘って会うまでの流れ、その一回一回は三ヶ月から六ヶ月、ある時は一年ほどの間隔が空いている。

 期間が開くと、掲示板そのものも次スレ、次々スレになっているので、よっぽど怪しんでこの書き込みを追わないとわからないだろう。

 ウィキを見ると、おそらくこの出会いが『被害者』との出会いだ。

 流石に会った人、全員を殺しているわけではない。

 本当に場所に来ず会えなかった場合もあるだろう、会っても犯人について行かなかった者もいたろう。

 俺は、今も細々とやっている「自メ木殳願望掲示板」を覗いた。

「あっ……」

 ヤツだ。 

 俺は『今まさに』書き込んだ『ヤツ』の書き込みを見てしまった。

 十分ほど前だ。

 この近所に待ち合わせを設定している。

 こんなところに書き込めば何人に見られるのか、理解しているのだろうか。

 時間が書いてない。

 どうやってこの場所で出会うんだ?

 俺は慌てた。

 これから巻き込まれて殺される人がいると思うと、いてもたってもいられなくなった。

 俺はすぐにその待ち合わせ場所に行った。

 周囲を見回す。

 ここで間違いない。

 おそらく、相手も同じ掲示板を見ているはずだ。

 俺はスマホを見て待っている人に近づき、それとなく画面を見る。

 そもそも背後に寄れなかったり、画面に覗き見防止フィルターなどが付けられていて、確認できない。

 それでも俺は近づき、自分が見ている掲示板をそれとなく相手に見せたりしながら、周囲を回った。

 いないのだろうか。

 まさか待ち合わせの時間とか、どんな格好をしているとか、そう言うところまで気にしていなかった。

 まだ待ち合わせの時間になっていないのかもしれない。

 掲示板の書き込みを全て読み解けていないと言うことだ。

 だが、今更家に帰るわけにも行かない。

 ここに犯人が現れ、自殺願望を持つ人物と出会い、連れ去ってしまったら……

 俺は申し訳が立たない。

 自分の意思で死にたいのであって、殺されたいわけじゃないだろう。

 死後、口座から金を抜き取られ、遺体は陵辱される。

 死んでしまえばわからない、そんなことではない。

 人の尊厳を踏みにじるような人間に、死を捧げる(・・・)のは違う気がする。

 次第に夜は更けていき、待つ人もいなくなり、ただ通り過ぎていくだけになっていた。

 そのうち通り過ぎる人も減って、俺一人スマホを持ってその場にいる状況になった。

「……」

 帰るか……

 そう思った瞬間、俺は一人の男に気づいた。

 息を殺しながら、物陰に隠れた。

 隣部屋の住人ではない。

 だが、確実に知っている人間だ。

 思い出した。

 久世と一緒にいた制服の警官だ。

 今は私服で、出会った時は帽子をかぶっていたせいで、印象が違い、パッと思い出せなかった。

 確か三枝(さえぐさ)という名だった。

 なぜ、こんなところで会うのか。

 三枝は、鋭い目で周囲を見渡すと、雑居ビルの壁に寄りかかって、腕をくみ、顔を伏せた。

 何かを待っている?

 待っているとしたら、何を?

 普通に考えれば、別の捜査で私服に着替えて張り込みに来ているのだろう。

 事件とは無関係の、本当にプライベートなかもしれない。

 だが、もし、事件と関係があったら?

 変な想像を重ねていると、俺は恐ろしくなった。





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