57話 事故に染まったスケッチブック
いつも読んでいただきありがとうございます。
美織は遠藤を見て、
「一緒に行かなくていいです。
妹がすみません!たぶんわざとやってる。」
「愛、ごめんね…今日はダメなの…」
「お姉ちゃん…」
愛はフラペチーノを飲みながら俯いた。
「美織さん…ごめんなさい
割り込んでしまって…」
荒木が謝った。
「でも、谷本…最近、無茶苦茶で、
一度でいいから、会って上げてほしい…」
荒木が頭を下げて頼んだ。
「荒木さん、私は寸くんを避けてるわけじゃないんです…
多分寸くんも同じ、お互いに今は納得しているんです。」
そう言って、言葉に詰まった…
震える声が痛々しかった…
美織と遠藤は、店を出て行った。
残された
荒木と愛は、
「なんか罪悪感が半端ないネ…」
荒木が言うと、
愛は、黙ってフラペチーノを飲んでいた。
「愛ちゃんさん…どう思う?」
「谷本はいったい何やらかしたの…?」
愛は無言で首を振った。
「愛ちゃんさん、寸くんに聞いてよ…」
荒木は難しい顔して、
「あの状況を見たら聞けないよ〜」
「愛ちゃんスマホ持ってるの?」
「持ってるわけないじゃん、私…小学生だよ。」
「来月、中学生になったら買ってくれるって。」
「…」
荒木はメモ帳に、自分のメアドを書いて
愛に渡した。
「スマホ持ったら、連絡して。」
この日をキッカケに恋敵同盟の継続した瞬間だった。
〜 谷本は今日も、事故現場に来ていた…
何か思い出すんじゃないかと、
ランニングの途中に毎日立ち寄っていた。
フラッシュバッグのような感覚は、
最初のあの時だけで、
その後はフラッシュバッグは、起らなかった。
あれから2ヶ月近くが過ぎた頃…
ある日、
谷本は自分の部屋の片隅に、
見たことのないスケッチブックを見つけた…
棚の奥に10冊くらいトートバッグに入っている…
バッグに血の跡のような黒いしみと、
ボロボロになったスケッチブック…
何だ…これ、
谷本はトートバックを引きずりだした。
そのうちの1冊を取り出しパラパラめくった。
上手く無いそのデッサンは小学生くらいのモノだろうか?
「見たことは無いけど…なんか懐かしいな…」
1冊を見終えて、スケッチブックを閉じた背表紙を見て衝撃が走った!!
谷本は急いで階段を降りた。
「母さん!!これ何?」
スケッチブックを持って、
キッチンにいた母に聞いた。
「これ何?」
母は、「スケッチブックだろ…」
「そうじゃない。このスケッチブックに
齋藤絵画教室ってハンコが…」
「あぁ、中学の卒業式の日
それ取りに行ってたんだろ…」
「取りに…?どうゆーこと?」
「あんた、小学生の4年から中学2年までお世話になってただろ…、
高校生は絵画教室には通えなちから、
卒業のタイミングで、
教室に置いてあったスケッチブックを引き取りに行ったのよ…
それが、そのまま事故にあって…」
「え…僕、絵画教室に通ってたの?
初耳なんだけど…」
「覚えて無いの?」
母は絵画教室の事まで忘れているとは、
思っていなかったようだ…
「覚えて無いよ…全然、」
谷本はスケッチブックをめくった…
破れているけど、植物や果物
景色を描いた絵もあった…
齋藤絵画教室って、
齋藤あかりの家の絵画教室だ…
齋藤さんはなんで、何も言わなかったんだ…
知らないはずないよな…
その晩、
バッグに入ったスケッチブックを
めくって全てチェックした。
何年分だろう…
初めの頃、こんな下手くそだったのか…
細い線…薄い影…
僕はこんなに下手くそだったのか…
スケッチブックに涙が落ちた…
全然記憶に無い…この絵も…この絵も…
中学時代のスケッチブックは
かなり上達してきた…
一枚の絵に、心臓が締め付けられた…
〝齋藤あかり”の中学時代か?
少し幼い姿だった…
この絵、見た事ある…
そうだ、美織に渡した絵に似てる…
美織が言ってた、
僕には中学時代に好きだった人がいたって…
齋藤あかりだったのか?
でも…
なんで齋藤がバレーボール部の
マネージャーをやってんだろう…?
谷本は、部屋にある
スケッチブックを朝まで、
めくり続け、
そのまま、朝練に行った…
いつも通りの日常で、
授業中は、ほぼ寝ていた…
そして、部活が終わると
谷本は、齋藤あかりに声を掛けた。
「齋藤さん…ちょっと話しがあるんだけど…
一緒に帰っていいかな?」
「何?告白とかいらないから…」
「そーゆーんじゃないよ…」
谷本の顔はまじめだった。
それを見て齋藤は何かを察知したのか、
「わかった、着替えて来るから待ってて」
2人で帰るのは2回目だったが、
今回は谷本が、齋藤を誘っていた…
2人は歩きながら、
しばらく会話は無かったが、
谷本が切り出した。
「齋藤さん…僕の事、
小さい頃から知ってたんだね…」
齋藤は何も言わない。
「僕は齋藤さん家の、絵画教室の
生徒だったんだよね…」
齋藤は何も答えない…
「ねぇ…何か隠してる?」
齋藤が、谷本を睨んで
「昔から谷本は無神経なやつだった。…」
ここまで読んでいただきありがとうございました。
引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。




