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記喪転我意 (きそうてんがい)―Lost Memory―  作者: Spumante Rock


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58話 時間の止まった部屋

いつも読んでいただきありがとうございます。

齋藤あかりが、谷本に聞いた。


「記憶は戻ってないんでしょ…」


谷本は事故現場でフラッシュバックがあった事を、

齋藤に話した。

「齋藤さんの家の近くで、事故に遭ったんだ…」


齋藤あかりは静かに話しだした。

「その事故、私…知ってる…

だって、救急車を読んだの私だから…」


谷本は、状況を理解出来なかった…


「どうゆー事?」

谷本は齋藤を見ていた…


「ちゃんと話すから…」

齋藤が大きく息を吸った…


谷本が無くした記憶の断片を、

齋藤は丁寧に話してくれた。 


まず、僕との出会いは小学校4年の事だった。


僕達は学校が、隣りの学区だったので、

小中学校で同級生ではなかった。


僕達の繋がりは、

齋藤絵画教室に谷本が習いに来た事だ…


一緒の教室で、絵画を学んだ。

先生は齋藤の母だった。


齋藤の声のトーンが優しくなった…

「谷本は絵が下手くそだった…いつも私の絵を見て凄いって言ってた…」


「それが…どんどん上手くなって、

コンクールで賞を獲るようになった。」


「小学6年の時、市のコンクールで大賞獲ったでしょ…覚えてないでしょうけど…」


「私は佳作だった…」


「その頃から、お母さんの自慢は谷本になった…

凄い才能だ…とか、感性が他と違うとか…」


「その頃から、私は勝手にライバル視してしまって、

谷本と同じコンクールに何度も応募した」


「結果は佳作すら獲れなかった…」


「そんなある日、受験を理由に教室に谷本は来なくなったの、

何だか逃げられた様な感じで私は腹を立ててしまって、

高校の受験会場で会った時、谷本に冷たい態度を取ってしまったの…」


「戸陽高校の受験会場で谷本に会った事を、

私は母に言わなかった…」


「なのに、中学の卒業式の日…

小学校の頃から描き溜めたスケッチブックを、谷本が取りに来たの…」


齋藤の話しが止まった…

谷本は自分の知らなかった事実をはじめて聞かされて少し混乱していたが、

自分が当時、齋藤に思いを寄せていたのかもしれないと思いはじめていた。


「ありがとう、齋藤さん

僕は昔、齋藤さんが好きだったのかな…?」


「まだ…大事な話しが抜けてるから…」

「えっ…何?」


「そうかもしれない、

谷本が言う通り、その日あなたは私に、

思いを伝えようとしたのかもしれないし、

違うかもしれない…そんな話しにならなかった。

谷本が母に会う事を、私が拒絶した…」


「また、谷本と比較される…母に比較される…」


「それが只々、怖くて…」

「谷本に嫉妬している自分は恥ずかしくて…

腹が立ってしまって…」


「私、谷本を強く押してしまってたの…

倒れた谷本は頭を怪我してしまって…」


「倒れたイーゼルやガバンが凄い音だったから、」


「奥から母が来て…」


『何やってるの!!』

『大丈夫?谷本くん頭怪我してるじゃない』


『あかり!あんた何やったの!』


「私が悪いんだけど、素直になれなくて…」

すごく叱られたわ…


『病院連れて行くからあかり、車の鍵持って来て!』


「そう言って、谷本を車に乗せて病院に向かったの…」


「その後よ、事故に遭ったのは…」


「私が見てる目の前で…」


「トラックの運転手が飲酒運転で、

ぶつかって来たらしい。」


「それが事故の真相…あなたが知りたがっていた事故の真実よ…」

「ごめんなさい…谷本くん…ずっと隠していて」

齋藤は泣いていた…


「齋藤さん謝らないでよ、

それよりも齋藤さんのお母さんにお礼を言わなきゃ…」

谷本が言うと、


齋藤は少し俯いて、

「お母さんは、その事故で亡くなったの…

即死だったそうよ…」


「えっ…」谷本の背筋が凍り付いた


「その事故で、谷本は記憶喪失になってたでしょ…

私、罪悪感が消えなくて…」


「谷本が記憶を取り戻す事があるなら、

その時は近くにいたいと思って…近くにいたの…」


「それが、私がマネージャーをやってた理由…」

そう言って、齋藤は家に入った。


「どうぞ〜」と、谷本を招いた。


中に入ると玄関横に大きなステンドグラスが飾られた扉があった…


扉を開けると広い部屋、

沢山のイーゼル、ガバンの束、絵の具の匂い…


記憶には無いけど、懐かしい場所だった。


「ここで、絵を描いてたんだね…?」

谷本は自然と笑顔になったが、その頬に涙が流れた…


時間の止まった空間…

ここだけが、事故の日から何も動いていない…


谷本は深く、深呼吸して平静を保とうとした。


「谷本はいつもそこに座ってたよ…

座ってみたら、」


「うん…」


谷本は座って、周りを見渡した…

「何か思い出した?…」


「いや…思い出せないな…」と、その時

棚の上の写真が目に入った…


「これは?」


「あ〜それ、小学校6年の時のクリスマス会の写真だね、」


「そこに谷本も写ってるでしょ…

後にいるのが母だよ。」


「そうなんだ…」

優しそうな女性の姿に、

谷本は、記憶を辿っていたが、

思い出せなかった。


「ありがとう齋藤さん…

記憶は戻っていないけど…

懐かしい感覚は戻ってきたと思う…」


そう言って、谷本が帰ろうとした時

齋藤が、


「その齋藤さんって呼び方も

気持ち悪いからやめてほしい…」


「僕はなんて呼んでたの?」


齋藤は少し恥ずかしそうに

「あかりんって呼ばれてたんだよ…」


「あかりん…?」


「努力するよ…あかりん!」

二人は顔を見て笑い合った!!

ここまで読んでいただきありがとうございました。


引き続き次回もお楽しみ、いただけると幸いです。

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