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勇者が英雄に変わる瞬間  作者: しろたん
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「凄い金額の取引をしてるんですね。」


「そうでもないよ。毎回、こんな感じだ。それにグロリアにある街はほとんどがダンジョンがあるところが多いから、今頃のカタリナとダカワナにある魔石の量が怖いな。」


ダカワナには第二部隊がいる。第二部隊は戦闘力が異様に高いからダンジョンとかに行きまくってるだろうから、大量に溜まってるだろう。


「そうなんですか?」


「ああ…あいつらはダンジョンに行きまくって鍛えるタイプだからな。まあ、メルエールがセーブしてるだろうから酷いことにはなっていないだろう。」


「私はまだ、メルエールさんに会ったことがないのでよく、分からないのですが…」


「そうか…まだ、会ったことがなかったな。ユヤンドが終わったら、会いに行くか?」


「はい。」


『練君、今、大丈夫⁉︎』


『どうした?そんなに慌てて…』


『実は定期連絡の時間になったから念話をしたら、第一部隊が交戦してるらしいの。』


『どういうことだ?』


『カタリナの東にあるサイヌっていう街の領主からの命令で攻撃して来たらしいの。』


『状況はどうなんだ?』


『そこまで、強くないらしくて援軍はいらないって言われた。今は交戦中だから連絡を取っていないの。』


『わかった。今すぐに本部に帰る。』


『よろしくね。』


「どうされたんですか?」


「第一部隊が交戦してるみたいで至急、本部に戻らなくてはならなくなった。いくぞ!!!」


「きゃっ」


レスティアをお姫様抱っこをして走り始めた。


「しっかり、捕まっていろよ。」


「はい…」


真っ赤な顔を胸に擦り付けて来た。コッソリとやってるからバレないと思ってるらしいが、バレバレである。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「今、戻ったぞ。」


「おかえり。今、確認したんだけど、ほとんど制圧し…た…みた…い。なんで、お姫様抱っこされてるのよ⁉︎」


念話をしていたようで途中までは気づかなかったようだ。


「そんなことより、今の状況はどうなってるのですか?」


「まずは降りなさい!!!」


未だに、お姫様抱っこされてるレスティアが答える。降ろそうとしているが、意地でも降りないようだ。首に回す手を退ける気配がない。しょうがないので、落ちないようにゆっくりと降ろしてやった。レスティアはまだ、不満そうだが、優越感に浸っている。


「凛、制圧はしたんだな?」


「うん。あんまり強い人がいなかったらしくて、簡単に制圧出来たみたい。ただ、亡くなった人も出たらしくて…」


「そうか…」


今まで、怪我人が出たことはしょっちゅうだったが、死人が出たのは初めてだった。戦争をするということは簡単に人が死んでいくのだ。


(俺は瞬や凛、瘉沙に元クラスメイトとも命の駆け引きになると言ったんだよな。)


もし、元クラスメイトと戦うことになったら迷わず殺せるか?と聞かれたら否と答えるだろう。だが、自分の理想を叶えるためにはまず、覚悟を決めなくてはいけない。すでに俺らは人を殺したことがあるが、それでも元々、平和の国で生きてきたので慣れるということは一生来ないだろう。しかし、少しの躊躇をすると一瞬で殺されることがあるかもしれないのだ。だから殺す覚悟は決まっているが、仲間が死ぬのは初めてだったため、覚悟をしていたつもりだが、全然足りないことに気がついた。


「何人だ?」


「3人よ。シィとナイカとバルドよ。負傷者はもっと沢山いるけど…」


「黙祷をするか…」


「そうだな。」


「凛、瞬とメルエールとセリアに伝えろ。夕方の五時に全員で黙祷しろと…全員、夕方の五時に訓練場に集まれ。」


「わかったわ。」


そう言って、部屋を出た。


(人の上に立つことがこんなにツライものだとは思わなかったな。自分の知らないところで死んでいく奴らがいるのだ。だけど、泣いてはいけない。ここで泣いてしまったら、死んでいった仲間への冒涜だ。あいつらは国を変えるために自ら進んで革命軍に入ったのだ。なら、革命を成功させてから思いっきり、泣こう。)


そう決意して、自分の部屋に一度、戻った。


(ただ、落ち込むのは良いよな?)


死んでいった仲間の顔を思い浮かべながら思っていた。


(特にバルドとはよく、酒を飲んだものだ。シィは元々、冒険者で臆病だったが、辞めてまで革命軍に入って来た。ナイカはバカだったな。)


(こんなことを考えていると泣きそうになるな。)


コンコン


「誰だ?」


「凛よ。入ってもいい?」


「いいぞ。」


凛が部屋に入って来て俺の横に腰掛けた。しばらく、二人とも無言でいた。


「練君、悲しいね。」


「ああ…」


たとえ、一緒にいた時間が短くても知ってる奴が死ぬのは悲しい。


「けど、泣かないね。」


「泣きたいが泣けないんだ。」


「なんで?」


「死んでいった奴らにカッコ悪いところは見せたくないからな…」


「そうかな?」


「きっとな…」


「自分達が殺した人のために泣くのは確かにダメだけど、仲間が死んでいった時くらい泣いても良いんじゃない?周りに部下がいない時くらい。」


「いや…」


「本当に練君って不器用だよね。死んでいった仲間は自分達のために泣いてくれることは嬉しいと思うよ?何回も泣いてたら呆れられちゃうだろうけど…一回くらいなら大丈夫だよ。」


「そうか?」


「うん。」


それから凛に抱きついた。


「少しだけ、このままでも良いか?」


「良いよ。」


誰にもバレないようにコッソリと涙を流した。凛は黙って、頭を撫で続けてくれた。この時、凛には一生、敵わないなと思った。




夕方の五時になった。


訓練場には第三部隊、第四部隊、第六部隊、それから保護している子供達がいた。誰一人として話していない。


「今回、カタリナで隣の街から侵攻があった。そこで革命軍にとって、初めての死者がでた。そこで黙祷を行う。今、カタリナとダカワナでは全員がこのように集まっている。仲間のために全員同時に行う。黙祷!」


(今頃、泣いてる奴もいるだろう。俺はお前達のことを忘れはしない。記憶力だけは自信があるんだ。良い国にしたらまた、黙祷をするからその時まで待っていてくれ。)


「黙祷、止め。凛、念話で伝え終わったか?」


「うん。」


「全員、持ち場に戻れ。解散だ。」


誰一人と喋らずに持ち場に戻った。ここにいる全員が国を変えるために集まったのだ。同士が死んで悲しまない奴は一人もいるわけがなかった。


(瞬は初めて自分の部下を亡くしたが大丈夫だろうか…ランシェのように無茶をするなら一発殴りにいかなければならないからな。)


「練君、明日のことで話さないと。」


「そうだな。今後の話もしないとな。」


「うん。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「シュハイツ、ユヤンドを落としたら次はどうする?」


「まだ、決めていないんですが、団長は何か良い案はありますか?」


「とりあえず、北と西は最終的にここから一つか二つ程度で良いだろう。攻めるなら東と南だな。」


「どうして北と西は攻めないんですか?」


レスティアが質問をして来た。


「まず、国が俺たちをすぐに、倒せない理由はわかるか?」


「魔軍の警戒に人員を多くしているからですよね?」


「そうだ。なら、俺たちが北を制圧した場合、魔界に近づくから自分達で警戒をしなければならない。だからできるだけ、魔界に面している土地は国から奪う余裕は俺たちにない。西はディザイアに面しているカラな。流石に魔界が活性化してるから侵攻して来るとは思わないが、もしものための保険だ。なんか、あったらメルエールが動くだろ。だから、まずは東と南をできる限り早く攻める。」


イゼリアはグロリアの西に位置している。そしてイゼリアから西に五つほど、街があってその隣はディザイアがある。北にも五つほど、進むと魔界がある。西はすでに一つは落としているので、あとは四つとなっているのだ。北にある街は自分達の街を魔界から守るのに必死で、他の街を攻撃する余裕がないのだ。だから、北にある街は特に警戒をしなくて良い。

なら、警戒をするのは自然と南と東と西になるのだ。だが、西はメルエールに任せるので自分達は南と東を攻めるのだ。ランシェはユヤンドの件が終わったら、シンと一緒に第二部隊に戻ってもらう予定だ。第二部隊にはメルエール、ランシェ、シン、サリオがいるので何かが起きてもおかしくなんとかするだろう。それにまだ、始動はしていないが、第五部隊も今はいるので大丈夫な筈だ。

ユヤンドを落とすと、教会での問題を公に出来るので、また、戦力を増やすことができるかもしれないのだ。


「団長はこんなエグいことをよく、考えられますね。この作戦は国にとっては最悪です。」


国にとっては制圧される街が増える度に国に入る税が少なくなり、兵力も少なくなるが、警戒をしなくてはならないのは魔界とディザイアと変わらないのだ。それにより、国はどんどん厳しくなり、国民の不満は溜まっていくのだ。


「けど、俺たちにとってはこれが一番だろ。」


「そうですね。」


「なら、まずはユヤンドのことを考えるか…」


「はい。」


「なら、解散だ。」


部屋を出て、自分のへやに戻るとレスティアが訪ねてきた。


コンコン


「誰だ?」


「レスティアです。入ってもよろしいですか?」


「いいぞ。」


「失礼します。」


「どうしたんだ?寝る時間にははやいだろ?」


「悲しそうにしていらしたので、慰めに来ました。」


「⁉︎」


「そこまでビックリすることですか?」


「いや、バレないようにしていたつもりだったからな。」


「私にはバレちゃいましたね。」


レスティアが可愛く言ってきた。


(俺の嫁達は鋭いな。)


「そうだな。」


「ほら、こちらに来てください。」


ベットに腰掛けたレスティアが毛招きをしながら呼んで来た。試しに行ってみた。すると、自分の太ももをポンポンと叩きながら言ってきた。


「頭を乗せていいですよ。」


「膝枕か…」


「はい。嫌ですか?」


「いや、嬉しいよ。」


レスティアの太ももはものすごく、柔らかかった。ただ、柔らかいだけではなく、その中にしっかり弾力があり、ネグリジェから伝わる体温が気持ちよかった。それに、レスティアが少し、前屈みになると後頭部に胸が当たるのでドキドキした。元クラスメイトで女の子に膝枕をしてもらうのは男のロマンだとか、わけの分からないことを言っていた奴がいたが今はよく、わかる気がする。


「どうですか?」


「最高だ。安心する。」


「そうですか…良かったです。」


レスティアはそれから何も言わずに頭を撫で続けてくれた。女は相手を安心させるために頭を撫でるものなのか、と思った。


それは二人が特別なだけだった。


「凛もレスティアも優しいな。」


「そうですか?」


「ああ…」


「これが恋する女の子の強さです。」


「恋って、もう俺たちは結婚してるんだぞ?」


「私はあなたと結婚しても恋し続けます。」


「そうか。男として嬉しいな。」


「正直、私は正妻が良かったんですが、それは諦めます。」


「それはしょうがないな。出会ったのが凛の方が早かったんだから、しょうがないな。」


「出会っただけで奇跡ですもんね。でも、未来予知であなたのことを知っていたから私は四歳の頃からあなたに恋をしていたんですよ?長さでは負けません。」


「それは早いな。確かに文句が言いたくなるのも分からなくもない。」


「私の初恋ですよ?」


「じゃあ、レスティアは俺のことを好き続けたってことか?」


「はい。」


「嬉しいよ。」


「私はあなたと会えて嬉しいです。」


いつの間にか、言葉使いが柔らかくなってるが、気にしないようにした。


コンコン


「練君、入ってもいい?」


凛がやって来た。


「いいですよ。」


俺の代わりにレスティアが答えた。


「⁉︎ なんで、レスティアが膝枕してるの⁉︎」


「今日は辛そうだなと思い、早めに来てこうしておりました。」


「来るのはわかるけど、膝枕は違くない⁉︎」


「別にいいじゃないですか。練様も嫌がってないですし…」


「なら、私がやるわ。」


「ダメです。私がやってる途中ですから、奪わないでください。」


俺を守るようにかなり前屈みになった。そうすると胸がと太ももに挟まれるという嬉しいハプニングが起こったのだ。


「ちょっと、練君が苦しそうじゃない!」


「けど、嬉しいですよね?」


(確信犯か…)


「まぁな。」


「うっ」


「ほら、練様がこうして言ってるのですから、おとなしく、座っていてください。」


「う〜」


流石に凛がかわいそうになって来たので、起き上がり、言った。


「少し早いが、3人で寝るぞ。」


「本当に練様は凛さんに対して甘いですね。」


「レスティアにも大概だと思うがな。」


「でないと、困ります。」


そう言って、俺の右側に寝て腕に抱きついた。


「ちょっと、早いわよ!」


凛は左側に寝て来た。いつの間にか、凛が左で、レスティアが右と決まっていた。それからすぐに3人は寝た。







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