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勇者が英雄に変わる瞬間  作者: しろたん
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「おかえり〜」


「ただいま、戻りました。」


「おう。」


レスティアは普段と変わらないようにしてるつもりだが、声が微妙に明るくなっている。顔も普段はあまり笑わないが、今いつもより笑顔が多い。


「む〜」


一人、少し不機嫌な奴が一名いるが…


「練、凜の機嫌を治してくれよ。帰って来た時からずっとコレなんだ。」


「違うもん!!!」


「はいはい。」


「凜、ユヤンドが終わったら連れて行ってやるからそれまで我慢しろ。」


「本当⁉︎」


「ああ。」


とりあえず、コレで大丈夫だろう。


「それより、カタリナから新人共は来たか?」


「はい。先程、到着しました。」


「じゃあ、シュハイツは編成を頼む。俺は第三部隊のところに行って、ユヤンドのことで話してくる。」


「急にどうしたんですか?」


「何と無く、嫌な予感がする。第三部隊に今回は任せることにする。新人は一旦、イゼリアで使い物にしてから任務に出す。」


「わかりました。」


それから、レスティアを連れて第三部隊のところに行った。


到着すると


「団長、どうしたんですか⁉︎」


第三部隊隊長であるセリアが声をかけて来た。


「明日、ユヤンドを落とすことになった。それで第三部隊に任せようと思ってるんだ。そこに俺とランシェとシンを加える。」


「ランシェさんとシン君をですか?」


「ああ…今回はなんか、嫌な予感がするからな。安全第一で行く。おそらく、レスティアを誘拐したことが響いている気がするからな。」


「それは団長の所為ですよね?」


「セリア、お前、言うようになったな。」


「まぁ、隊長をやって数ヶ月経ちますから…」


「グランとは上手くやってるか?」


「はい。あの人、思ってたより全然優しくて、部下達とも上手くやってるみたいです。まぁ、飲みに行った後に風俗街に通ってるみたいですけど…」


セリアは恥ずかしそうに言った。


「そんなとこで遊んでないで結婚相手を探せよ。」


「本当ですよね。団長なんて、誘拐して来てそのまま、結婚でもんね。」


「セリア、会った時よりキツくなったな。」


「そうですか?」


「まぁ、周りとは上手くやれてるならいいけどな。」


「はい。」


「明日までに準備をさせておけよ。」


「はい。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その頃、凜とレスティアは話していた。


「綺麗な髪飾りね。」


「はい。こういう物を貰ったのは初めてです。」


「えっ?そうなの?」


「はい。聖女にと贈られて来る物は確かにありますが、誰から贈られたのかがわからないのです。なので、個人的に貰ったのは初めてです。」


「そうなんだ。」


「それに聖女宛に送っても、教会の人が良い物は持って行ってしまうので、私に来るのはそんなに良くない物ばかりでした。」


「なんか、ひどくない?」


「はい。検査をするという名目で勝手に持って行って、暗殺のために送られてきた物で死んでしまう人もたまにいます。」


「自業自得ね…」


「はい…」


「教会も怪しい組織なのね。」


「否定は出来ません。」


「聖女って大変なの?」


「いえ、特には…たまに治癒をするくらいです。その他は退屈しのぎです。」


「婚約者とかはいなかったの?」


「確かにそういう話はありましたが、全て断っていました。」


「なんで?」


「未来予知で練様と会うことがわかっていましたから…」


「なるほどね。」


「凜さんは婚約者はいなかったんですか?」


「あっちの世界では恋愛結婚が当たり前なの。だから、いなかったわ。逆にいるひとのほうが断然、少ないわよ。」


「そうなんですか?」


「ええ。」


「では、練様とはどのようにして結婚したんですか?」


「うっ…簡単に言うと押して押して押しきった感じ。」


「なんと言うか、凜さんって過激なんですね。」


「そういうことは言わないで…事実だけど。」


「こちらの世界では男性が行く方が多いんですけど、そちらの世界では女性が行くんですか?」


「そんなことないわよ。私が特別なだけ…」


「どんな感じに出会ったんですか?」


「私が、初めて会った時に一目惚れして少しでも近づきたくて、いろいろと理由を作って話しかけたの。初めに会ったのは入学試験の時ね。初めは全然、その学校に行くつもりはなかったんだけど、練君に会った瞬間にその学校に受かったら行こうと思ったの…」


「入学試験の時は名前も知らなかったんですよね?」


「うん。」


「凄い行動力ですね…」


「でも、普段はその時の判断を後悔はしてないわ。」


「ほとんど人生の終着点まで来てますからね。」


「まだ、16なんだけど!!!」


「まぁ…墓場じゃないだけ、マシじゃないですか。」


「墓場なわけ、ないじゃない!!!」


「はいはい。」


完全にレスティアにからかわれている。


「ただいま〜」


ランシェがシンと模擬戦をして来たみたいだ。シンは案の定、ボロボロになっていた。


「シン君は大丈夫ですか?」


「レスティア様、できれば治癒をかけて欲しいです。」


「わかりました。『癒しの光』」


シンの怪我がどんどん、治っていく。


「ありがとうございます。」


「いえ、良いですよ。」


「ランシェ、もう少し、手加減してあげなよ。」


「手加減なんかしたら、こっちがやられちまうよ。」


「へぇ〜シン君って強いのね。」


「いえ、まだまだです。」


「私ももっと、訓練をしないと落ちこぼれちゃう。」


「凜は十分やっているだろ…」


凜は毎日、ダンジョンの上層部でレベル上げをして、そのあとに部隊の訓練をしている。


「けど、練君に置いて行かれちゃう。」


「アレはちょっと別だろ。」


「それでも気持ちだけでもね。」


「私も訓練をした方が良いですね。」


「そうだな。教会でかなり鍛えられてるがレベルだけでは勝てないからな…経験は積んだ方が良いかもな。」


「明日から訓練に出ます。」


「そういえば、明日、ユヤンドを落とすんだよね?」


「そうだな。」


「教会も潰す気なのかな?」


「そりゃあ、練のことだから潰すだろうな。」


「レスティアは誰か、教会から救いたい人はいないの?」


「一人だけいますね。それ以外の人はどうでも良いです。」


「どんな子なの?」


「私の唯一の友達です。教会の巫女をしていたのですが、他の子と比べて才能が凄かったので私のサポート役をしていました。」


「じゃあ、練君に言っておいた方が良いよ?」


「はい。」


「教会って、強い奴はいるのか?」


「やはり、あの教会には聖女がいたので、強い護衛は他の教会よりはいると思います。」


「どのくらいの強さなんだ?」


「革命軍のレベルは高すぎるのでそこまで強くないと思いますよ。」


「そうなのか…」


強者と戦えると思って楽しみにしていたようで残念そうだ。


「そんなに強者とやりたいのか?」


「うおっ⁉︎いつからいたんだ⁉︎」


真後ろに練が立っていた。


「さっきの答えはどうなんだ?」


「まぁ、強い奴とは戦いたいな。」


「じゃあ、今から俺と戦うぞ。」


「えっ⁉︎」


「たまには、俺も強いやつと訓練した方が良いと思ってな。」


「俺は強い奴と戦いたいが練とだけは戦いたくないよ!!!」


「大丈夫だ。ちゃんと手加減する。」


「嫌だ〜明日に響くから〜」


「治癒師がいるから問題ない。」


「そういう問題じゃねぇんだよ!!!」


弱音を吐きながらも、首の根っこを掴まれて連れて行かれた。


「ランシェ、南無阿弥陀仏。」


「凛ちゃん、助けてあげなくて良いんですか?」


「練君がやりたいならやらせておいて良いのよ。」


「ランシェさん、かわいそうに」


「なら、代わりに瘉沙が行けば?」


「さて、仕事に戻りますか。」


瘉沙はランシェを見捨てる方を選んだ。よっぽど、王城で訓練したのがトラウマのようだ。


「皆さん、ランシェさんに対して冷たくないですか?」


「レスティアはまだ、練君と一緒に訓練を受けたことがないからそんなことが言えるのよ。」


「そんなに酷いんですか?」


「とりあえず、片方が倒れるまでやるの。練君が倒れることはないから自分が倒れるまでやらされるの。さらに練君の方が強いから相手の全力に近いくらいの力で戦って来るの。だから、少しでも油断したらやられちゃうの。」


「なんか、追い込み方が異常ですね…」


「ええ…」


「ですが、強くはなれますね。」


「私たちは一ヶ月くらい、毎日やっていたからもう、思い出したくないのよ…」


「そうですか…御愁傷様です。」


「今度、レスティアもやってもらえば?」


「いえ、遠慮しておきます。」


レスティアも結局、ランシェを見捨てることにしたのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ランシェとの訓練を終えて、商会に来ていた。


「あら、その綺麗な子は誰なの?」


「初めまして、練様の側室に入りましたレスティアと申します。」


「また、こんなに綺麗な子を貰っちゃって…私はリリィよ。よろしく。あまりそういうことをすると後ろから男に刺されるわよ?」


「気を付けておく。」


今日はレスティアが副官となったため、凜ではなく、レスティアと来ていた。レスティアは商会に来るのが初めてだったため、リリィは知らなかったのだ。まぁ、商会の情報網ならレスティアが側室に入ったのを知っている筈なんだが、警戒をされないための社交辞令的なやつだろう。


「今日はどんな用事かしら?この頃はあなたが持って来ることは無くなっていたから、余程のことじゃないんでしょ?」


最近は部下に魔石を持ってこさせていた。正直、それも自分でやろうと思うと本当に寝れなくなってしまうくらい忙しいのだ。


「今日はユヤンドの物件を聞きに来た。それと珍しい魔石を手に入れたから俺が持って来たんだ。」


「前半はいつものことだから良いんだけど、後半はどういうこと?」


「実はこの魔石を見て欲しいんだが…」


死霊の墓で取った魔石だ。


「これは…」


「俺が見る限り、大きさは中位より小さいが、どこからどう見ても濃度が上位クラスなんだ。」


魔石の価値は三つの要素で決まる。まずは大きさ、次に濃度、最後に属性だ。

例えば、大きいなら風呂の魔道具には持ってこいだ。ただし、大きい魔石を元に武器を作ろうとすると武器も大きくなってしまうので、使われることがなくなってしまう。それにより武器は魔力の通しやすいミスリルなどが使われることが多いのだ。しかし、稀に魔石が小さくても濃度が高い物が出ることがある。そういう物は武器に使われるか、片手ぐらいの大きさの魔道具に使われることになる。

今回、死霊の墓で取れた魔石は大きさは小さいが濃度が上位と同じ位なのだ。それに闇属性がついているのだ。これは需要が高くつく筈だ。


「どこで手に入れたの⁉︎」


やはり、金になりそうなことに関しては行動が早い。

闇属性は使える人は少ないから武器としては使われることがあまりないが、魔道具としては闇属性が最も需要があるのだ。なぜなら、アイテムボックスは錬金術により作られる。その材料が闇属性の魔石なのだ。だが、人が持てる大きさの魔石は下位だけなので、下位の魔石を材料にしている。それで今回、発見した魔石は大きさが下位より少し大きい位だが、濃度が上位クラスなのだ。これを材料にして作られたアイテムボックスはより良い物になるのだ。今は一人分の荷物しか運べないが、この魔石を使ったアイテムボックスはかなりの量が入る物になるだろう。


「死霊の墓で取れたんだ。」


「あの星十のダンジョンね。クリアしたと聞いてたからいつ、魔石が来るのか、待っていたのよ?」


「そうか。この魔石は個人的にはかなりの需要があると思うんだが、どうだろうか?」


「正直に言うと、かなりあるわ。それも最上位の魔石くらい。うちで雇っている錬金術師に頼んでそれを売ればかなりの額になるでしょう。」


「やはり、魔石を取引してから売上は伸びたのか?」


「当たり前よ。機密事項だけど、取引する前と比べて、売上が五倍に増えたわ。」


これには流石にびっくりした。


「そんなにか?」


「だって、魔石が欲しいなら国から買わないといけないし、その魔石で作った物を売ろうとすると国で売っている物と性能は同じだけど、値段がこっちの方が高くなってしまうのよ。だけど、冒険者に直接、売ってもらえば、コストを抑えることができるから国よりも断然、安くできるのよ。」


「なるほど…確かにそれぞれの機関が利益を出そうとしたら商会に来る時はとんでもない額になってるな。」


冒険者ギルドは儲けるために、国に買い取った額より高く売る。次に国が儲けるために商人に買い取った額より高く売ると額が高くなってしまうのだ。大体の機関が利益を出そうと買い取った額の1.5倍の額で売るのが基本なのだ。そうすると冒険者ギルドに売られた額の2.25倍の額で商人の手に渡るのだ。それにより商人は利益があまりでないので、魔石を使った取引をしようと思わない。しかし、ウィーン商会は栄光の剣から魔石を直接買い取ることに成功しているため、商会で唯一、魔石で儲けるようになったのだ。それにより、他の商会より一歩リードした形になっているのだ。それにまだ競争相手がいないため、がっぽり儲けているのだ。


「そうなのよ。それでこの魔石はいくつあるの?」


「一応、百個程、手に入れたんだが、俺たちのクランにも錬金術師がいるから自分達の分で手一杯なんだ。」


「そんな〜」


リリィがかなり、落ち込んでいる。


「ただ、リリィにはかなり、世話になってるから半分、持って来たんだ。」


「本当に⁉︎」


「これからもちょくちょく、持ってくる。できればサービスをしてくれると助かるな。」


「任せなさい!セバス、早く来なさい!!!ユヤンドの良い物件を探して、それとこの魔石を鑑定する人を呼んで、あと経理担当者を呼んで来て。早く!!!」


「かしこまりました。」


このセバスチャンという執事は本当に大変そうだ。毎回、無茶ぶりをされている。


「この魔石はいくらで買い取ってくれるんだ?」


「そうねぇ、上位魔石の属性がある場合の値段でどうかしら?」


「サービスを付けてくれるんだよな?」


「ええ…また、家を無料で提供するわ。」


「じゃあ、その値段で買い取ってくれ。」


「一個につき、金板一枚ね。全部で五十枚ね。」


「あの、その魔石で金板一枚って高いと思うんですが…」


レスティアが恐る恐る聞いていた。確かに金板一枚は1000万だ。


「そうでもないのよ、それが。」


「なんでですか?」


「もし、この魔石で作ったアイテムボックスが家一軒分の容量があるとするわね。」


「はい。」


「商会にとって最も危険なことで最も損失が大きいのは盗賊とか魔物に物を取られることなのよ。それがアイテムボックスで荷物を移動すれば、誰にも盗まれないのよ。最悪、冒険者を雇って取り返せば問題がないのよ。そうすると他の商会と比べると、とんでもないアドバンテージなるのよ。それに移動も楽だしね。それに自分達の分のアイテムボックスが用意出来たら、他の商会に高い額で売れば、ぼろ儲けできるのよ。」


「なるほど…ありがとうございます。」


「どういたしまして。練君、この子は凛ちゃんとは違うタイプのようね。」


「そうですね。」


凛は比較的、こういう場で意見をしたり、質問をしたりしない。レスティアは性格に反して気になることは意外に聞くことが多い。


「はい。金板五十枚ね。」


「どうも。」


「じゃあ、また来る。」


「よろしくね。」




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