19
「練君、これはどういうこと?」
「成り行きで…」
「それは昨日も聞いたよ?」
「今回もだ…」
「成り行きで妻を一人増やそうとしてるの?」
「そういうつもりはないんだが…」
「練君がカッコいいの知ってるけど、少しは自重した方がいいよ?」
「ああ…」
「そこにいる頭の硬い人はほっといて、今日は私と寝ませんか?」
そう言って、レスティアが膝の上に乗って、首に腕を回してきた。
「ちょっと!レスティア、そこを離れなさい!!!」
「なんでですか?」
「そこは私の場所よ⁉︎」
「じゃあ、今日から私の場所です。」
「嫌よ!!!」
「やはり、胸と一緒で器が小さいですね。」
「胸は関係ないでしょ!!!」
この時、フィアナは自分の胸を見てかなり落ち込んでいた。精霊族という種族が比較的、胸はないのだ。たまに例外はいるが…だからどうしょうもないのだが、いざ、考えてみると残念な気持ちになるらしい。
「二人とも、耳の近くで騒ぐな。」
「「ごめんなさい。」」
「で、こいつらはどうするんだ?」
「シンはランシェが面倒を見ろ。今から練習場に行って好きなだけ模擬戦をして来い。」
「いいのか⁉︎」
「ああ…」
「兄貴、さっきの約束は本当ですか?」
「ああ。」
「約束ってなんだよ?」
「シンがランシェとメルエールを倒したら俺が弟子にしてやるっていう約束だ。」
「ほう…」
「早く、行きましょう。できる限り早く、俺は兄貴の弟子になりたいんだ。」
「いいぜ…世の中、そんなに甘くないことを教えてやるよ。」
二人はすごいやる気を出して練習場に向かった。
「これでシンは大丈夫だな。問題はフィアナの所属だが…」
「私は団長のお側から離れません。」
(また、厄介な奴が来た…)
「私が副官をするのでお側は足りています。」
「なら、代わってください。」
ブチ
「あなたは何様なんですか?」
レスティアがキレた。少しくらいの喧嘩は見たことがあるが、キレたところを見るのは初めてだ。
(俺の妻になる奴はキレたら怖いな…)
「私は今日の朝に妻になることが決まりましたが、あなたはそれすらないのでしょう?」
「くっ」
「レスティア、言い過ぎだ。」
「練様、この際、言いますけど、練様は女に甘過ぎです。だから、この女のように勘違いをする人がいるんです。仕事の時はすぐに良い判断をして行動に移すのに、女のことになると途端に優柔不断になります。仕事の時ほどとは言いませんが、女性関係はもっと、正しい判断をお願いします。でないと、ここから先、苦労しますよ?いいですか?」
「あ、ああ…」
レスティアの口撃を食らった。正直、レスティアがここまで言うと思ってなかったため、かなり驚いている。周りにいるみんなも目を悪くしている。
「レスティア、落ち着け。フィアナの配置は決めているんだ。」
「そ、そうなんですか?私は余計なことをたくさん言ってしまいましたか?」
「いや、別に良い。スキルを使わないとお前は何を考えているのか、わからない時があるからたまには言って欲しい。」
なんだかんだでまだ、膝の上に乗っているレスティアの頭を撫でた。
「は、はい…」
レスティアは目を細めて、口を前に出して来た。
「あなた、どさくさに紛れてキスしようとしたでしょ…」
凛がレスティアの頭を掴んで止めていた。
「凛さん、今、すごく良いところだったのになんで止めるんですか?」
「ズルイからよ。」
「酷過ぎます…」
かなり、落ち込んでいる。
(レスティアは俺とキスをしたことがまだ、ないからな…)
「今日は俺の寝室に来な。好きなだけしてあげるから。」
「本当ですか?」
「ああ。」
「なら、我慢します。」
レスティアの機嫌が直った。
「それでこの子の配属先は何処なんですか?」
「このイゼリアを守る部隊がなくないか?」
「そうですね。第四部隊がいますが…防衛力はないに等しいですから。」
「そこで第一部隊の隊長を瞬にして、副隊長にルーサクを置く。瞬の副官にユーアにする。それで新しく作られる部隊の隊長を俺が団長と兼任して、副隊長にフィアナ、俺には副官のレスティアがいるからなんとかなるだろ。」
「そうですね。ユヤンドを落とせば、イゼリアの周りの街を全て落としすことになるので、イゼリアのことを考えるべきですね。」
ここでやっと、シュハイツが参加して来た。女の喧嘩に怖くて気配を消していた。
「じゃあ、今回、入ってきた連中の半分くらいをそれに回していいか?」
「はい。大丈夫です。」
「名前は第六部隊でいいだろ…」
「そうですね。」
「いつか、フィアナに隊長を任せて誰か、良い奴を副隊長にすればいいだろ。」
「では、人選を行います。」
「ああ…任せる。」
シュハイツが出て行くと
「そういえば、凛さんは練様と一緒の部屋じゃないんですか?」
「一応、凛の部屋はあるが、今まで必要としていなかったから使ってなかった。」
「では、今日は練様と二人っきりってことですね?」
「まぁ、そうなるだろうな…」
「私も行くわよ!!!」
「なっ⁉︎」
これにはレスティアもびっくりしたみたいだ。
「妻になってからの初夜くらい、二人っきりにしてもいいじゃないですか⁉︎」
「ダメよ。」
「なんでですか⁉︎」
「だって、ズルイもん!!!」
「何が⁉︎」
「私は何ヶ月も練君と寝ていたせいで、一人じゃ、寝れないの!!!」
「子供ですか⁉︎」
「しょうがないじゃない…」
「そのせいで邪魔されそうになってるこっちの身にもなってください…」
これは流石にかわいそうだ…確かに何ヶ月も一緒のベットで寝ていたからそうなるのはわからなくもないが、いくらなんでも行き過ぎだろう…
「だって、一回練君がいないで寝たら怖い夢を見たんだもん。」
「子供じゃないですか⁉︎」
「うう…」
「凛、1日くらい我慢してやれ。俺の部屋で寝ていいから。」
「でも…」
「流石にレスティアがかわいそうだぞ…」
「うっ」
その隣ではレスティアが首を縦に降っている。
「次の日はちゃんと、寝てやるから…」
「私も一緒にですね。」
「なんでよ⁉︎」
「もし、凛さんが明日寝たら明後日は私の番ですよ?そしたら1日おきに一人になってしまいます。だから明日からは三人で寝れば良いのです。」
「確かに、そうだけど…」
「特別な日は例外ですけどね。」
「例えは?」
「どちらかの誕生日だったら二人っきりの方が良いと思いませんか?」
「確かにそうね。」
「なら、特別な日以外は三人で寝ましょう。」
「わかったわ。」
(完全に俺の意見は聞いてないな。まぁ、二人が仲良くしていることは良いことだな。だが、凛が完全にレスティアに手のひらで転がされてるぞ…)
「じゃあ、練様、今日はよろしくお願いします。」
「ああ…」
それから、教会のこととかを話しているうちにランシェとシンが帰ってきた。明らかにランシェがシンのことをボコボコにした感じだ。ランシェは生き生きした顔で帰ってきた。逆にシンは疲労困憊で倒れそうになっている。
「ランシェ、やり過ぎじゃないのか?」
「だって、こいつが全然諦めねぇんだよ。」
「手加減をしてやれよ…」
「手加減をすることは相手に失礼だから、俺は誰であろうと全力でいく。」
「そうか…癒沙を呼んで、シンのことを治してやれ。」
「はい。」
「私が治しましょうか?」
ここでレスティアが反応した。聖女の実力を見ておくにはちょうど良いかもしれない。
「じゃあ、頼む。」
「はい…『癒しの光』」
光属性の治癒魔法だ。レベルとしてはあまり高くないが、光属性に適性があっても、治癒に適性がなかったら使うことができない。だから、光属性で治癒が使える者は重宝されるのだ。光属性は攻撃や防御にも使えるので、ただのヒーラーではないのだ。
レスティアが魔法をかけると、シンの傷や疲れが見ていてもわかるほど、消えていった。流石、聖女だな…
「ありがとうございます。レスティア様」
「様?」
「兄貴の妻になるなら敬意を払うのは当然です。」
「つ、妻…」
「兄貴、このクランには化け物みたいに強い奴がたくさんいるんですね。」
「それなりだと思うが…」
「確かに兄貴は次元が違いますが、副隊長やグランさん、セリアさんも強かったです。ルーサクさんや瞬さんと一対一で戦ったら本当は負けていたんだと思いました…」
「そうか…約束を守れるようにがんばれよ。」
「はい…」
「ランシェ、シンはどうだった?」
「たしかに強かったが、まだ、若すぎるな…」
「そうか…」
「それより、フィアナの配属はどうなったんだ?」
「イゼリアを守るための部隊の副隊長になってもらおうかと思ってる。」
「なるほど…ここは要塞ばりの防御力を誇るようになるんだな…」
「流石に要塞程じゃないけどな。」
「だって、大体の時なら練がいて、その側には凛とレスティアがいて、さらにフィアナ、回復役の癒沙がいるんだぜ?そこに少なくない数の奴が入ってきたら下手な要塞より戦力が高いぞ。」
「個の力が強いだけだがな…」
「それでも、十分だろ。」
「凛、瞬に連絡を入れておいてくれ。」
「うん。」
「ユヤンドは第三部隊に任せれば良いから、ランシェはお留守番にして…」
今、練は一人で考えていた。
練はたまにこうして一人になってよく、考え事をするのだ。ただ、大体のことが仕事のことなので休まる暇がないのだ。睡眠時間はちゃんと取ってはいるが、かなりキツイ。移動と面談をして、さらに自主練をして、首輪を取る時は必ず、移動しなければならない。
(瞬間移動のスキルを持ってる奴がいたら良いのにな…)
各街で面談がある度に、移動するのはかなりキツイのだ。
(イゼリアでしか、面談ができないようにすれば良いのか?でも、それだと募集人数が減ってしまうかもしれん…できる限り早く、進軍をしてしまいたいからな。)
コンコン
「レスティアです。入ってもよろしいですか?」
「ああ…良いぞ。」
「失礼します。」
入ってきたレスティアは肌が所々見えるネグリジェを着ていた。男をより興奮させる作りになっているようだ。ネグリジェは大胆にも金色に輝いているが、髪の毛と同じ色なのでとても似合っていた。
「レスティア、もしかして、その格好でここまで来たのか?」
「はい。」
「今度からは何か、羽織って着い。」
「わかりました。」
「こっちにおいで…」
「はい…」
「やっぱり、緊張してるのか?」
「それは、まぁ…」
「そういえば、俺が教会に来るのはいつくらいから知っていたんだ?」
「それは、本当に小さい頃から知っていました。聖女になるという未来を見てからすぐに。最初はそこで殺されるのかな…と思いました。けれど、それから数日後、教会から連れてかれるのを見ました。また、数日後、あなたと一緒に笑っている私を見ました。そこで、ああ…この人は運命の人なのかもしれないと、思いました。けれど、未来予知は変わるかもしれないので、正しいかはその時まで信じられませんでした。」
「一度も外れたことがないんじゃないのか?」
「はい…ですが、未来を変えようとしたことがなかったので変えようとしたらどうなるかは、わかりません。」
「なるほど…じゃあ、ここにいるのはレスティアの意思ということか?」
「はい。」
これは素直に嬉しかった。もしかしたら、変えられる運命を変えずに俺のところに自分の意思で来てくれたのだから。
「ですので、私の全てをあなたに捧げるつもりです。今もこれからも…むっ」
そう言って来たので返事はキスという行動で示した。正直、恥ずかしかったが、ここはちょっとでも格好をつけるべきだと思った。そのまま、ベットに倒れこんだ。
次の日の朝
「レスティアさん、すごくご機嫌ですね。」
「ああ…ちょっと別人に見える。」
癒沙とランシェは話していた。レスティアは鼻歌を歌いながら紅茶を入れている。
「やっぱり、昨日の夜の所為ですかね?」
「大人になるとやっぱり、変わるんだな。」
「お、大人ですか…」
「癒沙、ちょっと子供過ぎるぞ。」
「そうなことないです!」
「でも、ちょっと初心過ぎるな。」
「うっ」
顔を真っ赤にして否定してるので説得力がまるでない。
「けど、反対にあっちがすごく、不機嫌だけどな…」
「はい…」
ソファに座っている凛がかなり不機嫌だ。まぁ…目の前であんなに幸せ満点の笑顔でいたれたら少し、わからなくもない。それもレスティアがご機嫌の理由は自分の好きな人なのだ。
「ふふ〜ん、ふふふ〜ん」
「レスティア、うるさいわよ!!!」
「凛さん、そんなに怒ってばかりいると老けますよ?」
「老けないわよ!!!」
「お前ら、少し静かにしろ…」
「「練様/練君」」
「凛は今日からまた、一緒に寝るんだから少しは元気を出せ。レスティアは少しは抑えろ。見てる方が恥ずかしくなる。」
「「はい…」」
「練、助かった。ここが地獄とかすところだった…」
「いや、大丈夫だ。今日からまた、忙しくなるからな。ユヤンドをあと、数日で落とすぞ。」
それからすぐに、朝の会議が始まった。




