08
転校して初日の夕食は、唐揚げだった。頑張ったから、と、祖母がわたしの好物を作ってくれたのである。
一方で、祖母たちの席には肉じゃがが置かれていて、わざわざわたしのためだけに唐揚げを揚げてくれたのだろう。
「わたしも一緒で良かったのに」
唐揚げは嬉しいものの、別で作るには手間だっただろうと、祖母に言うと、「今日だけよぉ」と笑われてしまった。
「一日くらいはおばあちゃんも頑張りますよ。でも、明日からはおばあちゃんたちと同じメニューだからね」
「……ありがとう」
そう言われてしまえば、素直にありがたく受け入れるしかない。せっかく祖母が作ってくれたのだから。
いただきます、と三人で声を合わせ、食事を食べ始める。すると、すぐに「学校はどうだった?」と祖母が尋ねてきた。
わたしは一瞬、マネキンのことが頭に浮かぶ。でも、そんなこと、言えるわけもない。クラスにマネキンが生徒と一緒に混ざっている、なんてありえない状況をすぐに信じてもらえるとは思えないし、仮に理解してもらえたって、そんな変なクラスにいると知られたら、心配をかけてしまうだろう。
わたしはマネキンのこと頭の外へと追いやる。
「皆、いい人そうだったよ。あ、でね、わたし、あだ名付けてもらったの。可愛いやつ」
祖父母は意識してか、わたしの名前をあまり言わない。わたしが名前を嫌っているのを知って、可能な限り呼ばないでいてくれている。
だからこそ、わたしはこのあだ名を報告したかった。
「うりはり、って、六月一日って書くでしょ? その六から取って、りく、とか、りっちゃん、とか」
「あらぁ、良かったねえ」
わたしの予想通り、祖母は笑って喜んでくれた。
「将来、りく、って名前に改名しようかな」
冗談で言ってみると、祖母よりも祖父の方が食いついてきた。
「そうしたらいい。……全く、あの人もペットに名前を付ける感覚で人に名前をつけおって」
自分の好物がむかごだからむかご、と、茶トラ猫に命名した祖父が言うと、なんだか説得力が違う。……でも、いくら犬猫でも、プリンセス、とはあまりつけないような気がする。
「大体、あの人もいい歳して――」
「はいはい、その辺にしよ。ご飯冷めちゃうって」
母への悪口が加速しそうな気配を感じたので、わたしは祖父の言葉を遮る。せっかく祖母が美味しい唐揚げを作ってくれたのに、ご飯がまずくなるような話題は避けたい。
「友達、たくさんできるといいねえ」
祖母もわたしの考えを察してくれたのか、そう言って、話題を変えるのに協力してくれる。
それからは、わたしの学校の話題に戻り、わたしは、マネキンのことを知られないようにしながら、今日あったことを話すのだった。




