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一人でも大丈夫。そう思ったはずなのに、旧校舎の入口で、わたしは後悔していた。大人しく、久慈くんか、琴葉ちゃんについてきてもらうべきだったと。
旧校舎には、わたし以外にひと気がない。普段なら、部活動があるから、誰もいない、っていうこともないんだろうけど、マネキンの窃盗事件のせいで部活動がなくなったので、今は人ひとりいない。どこからともなく、運動部の掛け声や、吹奏楽部の楽器の音が聞こえてきたりもしない。それどころか、旧校舎は正門からも裏門からも近くないので、帰る生徒が通りかかることもない。
まだ日が明るいのに、深夜の校舎内くらいに不気味だった。
普段使っている校舎と繋がっている渡り廊下から入ってすぐの教室だったらまだ良かったのかもしれないけれど、わたしたちが昼に使った教室は、二階の真ん中の教室。琴葉ちゃんが部活動に使う教室だから勝手に使っても怒られないだろう、と、その教室を選んだんだけど……。
「パッと行ってパパッと探して取ってくる……パッと行ってパパッと探して取ってくる……」
わたしはぶつぶつと、自分に言い聞かせるように声に出す。すぐに行って帰ってくれば大丈夫。心配するようなことは何もない。
ごくり、と唾を飲み込み、わたしは旧校舎に入る。
どうせ誰もいないのだから、走って行ったって怒られないから、駆け足で行こうと思っていたのに、いざ旧校舎に入り、廊下の床と上履きの擦れる音が大きく響くと、脚がすくんで、走る、という選択肢がわたしの中からなくなってしまっていた。
走って物音を立てたら、何かが来そうな、そんな嫌な考えが、わたしの頭によぎってしまったのだ。
警備員や、先生に見つかって怒られるならまだいい。でも、昨晩、わたしたちを追いかけてきた、あの人影にバレたら。
わたしはその考えを払拭するように、首を横に振る。
なるべく足音を立てないように目的の教室へと向かう。極力静かに歩いているつもりなのに、意識しすぎているのか、妙にわたしから音を発してしまっているような感覚がする。
けれど、わたしがビビり過ぎたのか、別に、何かと遭遇するということもない。
後ろ側から教室に入って、窓際の席。軽くかがんで、わたしが座っていた机の中を見ると、わたしの巾着袋が入っていた。やっぱりここに忘れてきていたのか。
目的のものを無事に手に入れられた、と安堵し、息を吐く。無意識に息が詰まっていたのか、随分と深いため息だった。
後は帰るだけ、と立ち上がろうとした瞬間。
――ガタリ。
妙に大きな物音がして、反射的に、わたしはその場へとしゃがみこんでしまった。




