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午後の授業も、あまり身に入らなかった。わたしだけじゃない。他の生徒や先生、皆が授業に集中できていない。
マネキンの呪いを信じてないのであろう土湯先生や、移動教室でそもそも普段の教室を使わない先生はともかく、わたしたちの教室で授業を行う先生は、わたしたちのクラスのマネキンがいないことに、どことなく、おびえているようだった。先生も大人なので、生徒ほど露骨な態度を取るわけではなかったけど、ふとした瞬間、どうにもぎこちない。
マネキンの呪い、先生たちも信じているんだろうか。
マネキンの呪いが嘘だと思っていても、以前にそうやって死んだ生徒がいるというのは事実。学校内で、生徒の死者が出るのは、きっと大変なことだろうから、そう言った意味で、怖いと思っているのかも。
――ただ、わたしが授業に集中できなかったのは、それだけが原因じゃない。
勿論、わたしが殺されるのかも、という怯えはある。ただ、授業中というのは、少なくともわたし以外の人間が近くにいるということで。おかげで、少しだけ、緊張と恐怖が和らいでいる。
隣の席には久慈くんがいるし、前の席には琴葉ちゃんがいる。今日は休みの人はいないから、マネキンの席以外は全て生徒が座っているし、教室の前では、先生が黒板に授業の内容を書いている。
怖いには怖いけれど、教室にいられない、と、教室を出ていき、一人になる方が考えられない。
夜の学校に忍び込んだときと同じ。
恐怖と同時に、妙な、根拠のない安心感がある。
一人じゃない、って。
だからこそ――考えてしまうのだ。
もし、一人になってしまったらどうしよう、と。
……そろそろ、前の学校のこと、隠しておくのも限界なのかな。
そんなことを思うと、無意識のうちに手に力が入ってしまったのか、パキリ、とシャーペンの芯が折れてしまった。でも、わたしは新しく、芯を出す気になれない。呆然とノートの上に転がる、折れたシャーペンの芯を見る。先生の授業を進める声が、どこか遠くに聞こえる。
転校生としての質問攻めは、ほとんどなかった。多分、わたしが、あのマネキンと同じ名前をしている、ということで、気味が悪いんだと思う。
琴葉ちゃんたち以外は、わたしに積極的に話しかけてこない。もちろん、意図的に無視されている、存在がなかったことにされている、なんてことはなくて、話しかければ普通に受け答えしてくれる。
でも、壁がある。明確に。
だから、というのもおかしな話だから、すっかり安心していたのだが、でも、普通、聞かれるものだよね。前の学校ってどんなだったの? こことどう違う? って。
……嫌だなあ。
それでも、わたしは前の学校のことを話したくなくて、知られたくなくて、そんなことを、つい思ってしまう。
久慈くんたちと過ごすのは楽しいけれど、その話題だけは、絶対に出なければいいのに、と、常に緊張してしまうような、そんな心地だった。




