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「――……それで? 昨日の夜、何があったのよ」
椿ちゃんは席に座るなり、弁当を広げるよりも先に、そう言った。
わたしたちの態度から、もはや何かがあったことを決めつけているようだ。実際、何かあったのは間違いないんだけど。
わたしと久慈くん、鴻巣本くんは顔を見合わせ、迷っていたけれど、結局、鴻巣本くんが全て説明してくれた。
マネキンを探していたら、わたしが人影を見つけたこと。その人影に追いかけられたこと。――その人影が、おおよそ、人間とは思えないような挙動をしていたこと。
鴻巣本くんの話を聞いた椿ちゃんは、「そんな馬鹿なこと――」と言いかけて、口をつぐんでしまった。わたしたちが、嘘を言っているように見えなかったんだろう。
琴葉ちゃんは、すぐに信じたようで、おびえたような表情を見せている。
「で、でもさ、ほら、大丈夫じゃない? りっちゃん、生きてるし……」
励ますように琴葉ちゃんが言う。その言葉と、表情で――わたしはようやく気が付いた。
今、この状況は、ただマネキンがいなくなった、で済まないのだ。
マネキンと同じ名前の生徒は、マネキンに成り代わられる。マネキンがいなくなり、マネキンの生徒が座っていた席に、生きていた人間の、同じ名前の生徒が死んで座らされている。
つまり、今、マネキンが成り代わるという件の噂は、途中まで進んでいるのだ。
わたしが死んで、あの席に座れば、噂通り。
ならば、昨日、わたしたちを追いかけてきた人影は、やっぱり……――。
「……まだ、僕たちの前に不審者が侵入して、マネキンを盗んだ可能性も、あるでしょ」
久慈くんが、妙な沈黙を打ち消すように言う。
「……仮に、僕たちを追いかけてきたのが人ならざるものだったとして。マネキンだってはっきり見たわけじゃないし。そもそも、この学校の警備と戸締りって意外と雑だし、人間の一人や二人、入るのも難しくないでしょ」
「まあ、実際、俺たち三人、昨日入ってるしな……」
「そういうこと。あの一件と、マネキンの呪いがつながってるとは限らない。マネキンは変質者が盗んでいって、僕たちを追いかけてきたのは……驚かすのが好きなおばけだったのかもしれない」
「本気で殺すつもりなら、校舎の外に出たって、いつまでも追いかけてくればいいんだよ」と、久慈くんは言う。……それは、確かにそうかも。
「確かに、そう、だよね……」
わたしがそう言うと、久慈くんと鴻巣本くんが、あからさまにホッとしたような表情を見せた。




