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朝のショートホームルームが終わると、わたしと久慈くん、鴻巣本くんは、椿ちゃんと琴葉ちゃんに呼び出される。彼女たちについて行った先は、廊下の突き当り、ちょっと奥まったところ。すぐそばに階段があるから、人通りが全くないわけではないけれど、でも、少なくとも教室の中や、教室を出てすぐの廊下よりは人がいない。
「……昨日、問題集取りに行ったのよね?」
廊下の隅に着くと、すぐに椿ちゃんが、声を抑えながらもわたしたちに聞いてきた。椿ちゃんが何をわたしたちに尋ねたいのか、その一言だけですぐに分かる。
「俺たちが行ったときにはもうなかった」
わたしたちを代表して、鴻巣本くんが答える。
「俺と久慈は結構教室探したんだけどさ、全然なくて。……盗まれたとしたんだったら、俺らより前だろうな」
そういう鴻巣本くんの声音は、みじんも、盗まれたと思っていないようだった。やっぱり、彼も彼で、わたしたちを追ってきた人影のことを、ただの不審者ということにできないでいるのだろう。
椿ちゃんの質問に答えても、わたしたちは顔を見合わせたまま。わたしたちを追いかけた何かの存在を、言うか言わないか、迷っているのだ。
人間でない何かに追いかけられた、など、実際に見ていないと信じられないだろう。たとえ、人形が成り代わろうと同じ名前の生徒を殺す、という噂の存在を認めていたとしても。
わたしたちが何かに追いかけられた、ということはすんなり受け入れてくれるかもしれないけれど、それが何だったかは、分かってくれないだろう。
だって、遭遇したわたし自身が、あれがなんだったのか分からないままなんだから。
わたしたちは、あまりにも怪訝な表情で、互いの様子をうかがっているように見えたのだろう。椿ちゃんが「何かあったの?」と聞いてくる。
「……えっと、多分、警備員さんが、不審者がいるって気が付いたの、わたしたちのことだと思う、んだけど……」
逃げるときに結構な物音を立てた。その後、警備員さんが、わたしたちが逃げ出した図書室までやってきたので、それは間違いないはず。
なぜバレたのか、という話を、してもいいのだろうか。
わたしたちが迷っている間に、一時間目の予鈴のチャイムが鳴る。一時間目は体育。着替えをしなくちゃいけないし、このままだと遅れてしまう。
椿ちゃんと琴葉ちゃんは、まだ話し足りなそうな様子だったが、授業に遅れるわけにはいかない。
「……仕方ないわ。とりあえず、授業に行きましょう」
椿ちゃんの一言で、わたしたちは解散した。




