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翌日。あの後、あの変な人影がわたしの部屋に来ることもなく、妙な手が再びふすまを開けることもなく、無事に学校へと来ることができた。……寝不足なので、本当に無事、というわけでもないけど……。
課題はなかなか終わらなかったし、結局むかごがわたしのベッドを朝まで占領していたからしっかり横になることもできなかった。もっとも、むかごがいなかったら、周りが気になり過ぎて、課題を終わらせることも、寝ることもできなかっただろうから、その辺はむかごに恨みはない。
「……おはよ」
下駄箱で靴を履き替えていると、久慈くんが声をかけてきてくれる。
「昨日、あの後大丈夫だった?」
「うん。……課題がなかなか難しくて、すぐには寝られなかったけど、特に問題はなかったよ?」
わたしがそう言うと、久慈くんは、ほっとしたような表情を浮かべた。昨晩、おそらくは久慈くんが家に着いたのであろうタイミングで、わたしのスマホにメッセージも届いていたし、気にかけてくれたんだろう。すぐに逃げ出せないほど、ビビッてたわけだし。
「久慈くんも、大丈夫だった?」
「全く何も問題なし。……アレ、なんだったんだろうな」
見間違い、ではない。
三人が三人とも、同じものを見ているのに、見間違いというのは、あまりにも不自然だ。
わたしも久慈くんも、答えが出せなくて、無言のまま、廊下を歩く。昨日とは一転して、明るく、人通りも多いそこは、何かが出るかも、という考えは浮かばない。
それでも、わたしたちの間には、確実に、重たい雰囲気が流れていた。
昨日のアレは不審者、と言えれば良かったのだろうけれど、それがただの現実逃避でしかないことは、わたしも、久慈くんも、分かり切っていた。
「――……?」
階段を上り、教室が近づくにつれ、何やら騒がしくなっていく。わたしと久慈くんは、思わず顔を見合わせた。
教室の方へと進むと、わたしたちの教室の前がすごい人だかりになっているのが目に入る。
「あ、りっちゃん……!」
人だかりの一番外側にいた琴葉ちゃんがわたしに気が付いて、声をかける。その一瞬、ざわめきが静かになって、すぐにまた、大きくなった。
わたしたちに駆け寄り、わたしの手を取って、琴葉ちゃんがそれを握りこむ。わたしが生きているのかを、確認するような素振り。
「うちのクラスのマネキン、いなくなってるの……!」
今にも泣きそうなほど、不安で一杯という表情の琴葉ちゃん。周りの人も、いなくなったマネキンの話を聞いて、ここに駆け付けたのだろうか。
昨日の夜から、いなかったマネキン。
どうやら、朝になっても、それは戻ってはこなかったようだ。




