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パシャパシャと問題集を撮る鴻巣本くんの傍らで、わたしは学校を囲うフェンスにもたれかかるようにして座った。鴻巣本くんが問題集の写真を撮ったら帰るので、すぐに立たなきゃいけないのは分かっているんだけど、一息ついたら、ドッと疲れが出てしまった。
……帰るの、嫌だな。
校舎内でわたしたちを追いかけてきた何かは、校舎の外に出てからは、わたしたちを追いかけることはなかった。警備員さんも見つけられなかったみたいだし、どこかに消えたのかもしれない。……見間違い、ということだけはないだろう。
あんなのがいるのに、一人になるのが怖かった。
学校からずっと家までアレが付いてくるわけじゃない。
でも、家に帰ったら帰ったで、もしかしたら、さっきわたしの部屋に入ってこようとした手の持ち主が待っているかも……。
――ポコン。
そんなことを考えていると、わたしのスマホの通知音が鳴った。
琴葉ちゃんか椿ちゃん辺りが心配してメッセージをくれたのかな、と思って、わたしは何の疑いもなくスマホの通知を見て――息が詰まった。
今日作ったグループからのメッセージではない。
前の学校の、クラスグループからのメッセージだった。
よくよく考えれば、琴葉ちゃんか椿ちゃんがメッセージを送ってくれたのなら、久慈くんと鴻巣本くんのスマホにも通知が行くはず。それなのに、わたしのスマホだけが鳴ったというのは、わたし個人のメッセージということに他ならない。
もう、抜けてもいいはずのグループ。
返信をする義務はない。そもそも、メッセージを確認する必要もない。
そのはずなのに、わたしは、そのグループを消すことができないでいる。
「――……りっちゃん?」
「ッ――、いたッ!」
急に話しかけられて、わたしは大げさなほど肩を跳ねさせてしまう。そのはずみで、背中をフェンスの錆にひっかけてしまった。
「おい、鴻巣本」
「うわ、悪い! 大丈夫か?」
久慈くんに軽く肩をどつかれながら、鴻巣本くんがわたしに謝ってくれる。
「だ、大丈夫だよ。びっくりしてつい言っちゃっただけで、そこまで痛くなかったから……」
錆に引っ掛かったところを服の上からさすってみるが、特に血が出ているということもなさそうだ。
「ホント、ごめん。これ、ありがとな」
そう言って、鴻巣本くんが、わたしに問題集を返してきた。
「……早く帰ろう。りくのところも、心配してるだろ」
「え?」
「今の通知音、まだ帰ってこないの、って催促じゃなかったの?」
久慈くんの言葉に、心臓を掴まれたような気分になる。
大丈夫。久慈くんは、わたしのスマホのロック画面を見たわけじゃないから。
――大丈夫。
「あ、う、うん。そ、そんなとこ……。おばあちゃんからだったよ。時間も時間だし、もしかしたら、さっきのがまた来るかもしれないし、早く、帰ろ」
祖父母からの連絡じゃないし、本当は一人になるのが怖いから帰りたくないけれど、これ以上、今の通知のことを聞かれたくなくて、わたしは、そう言うしかなかった。




