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門の外に出て、わたしたちは一息つく。逃げ切れたのか、と安心したのもつかの間。久慈くんが、「……待って、まだ動かない方がいいかも」と、校舎の方を見ながら、小声で言うものだから、わたしの体は、びくり、とこわばった。
「ま、まだ追ってきてる……?」
「いや、さっきのは大丈夫そう。ただ――ほら」
久慈くんが指さす方を見ると、懐中電灯の明かりが移動しているのが分かった。走っているのか、少し移動スピードが早い。わたしたちがあまりにも物音を立てたから、警備員が様子を見に行ったのだろう。
「け、警備員さん大丈夫かな……。アレに見つかったら……」
「いや、でも、不審者を捕まえるのが警備員の仕事……じゃん?」
わたしの言葉に鴻巣本くんが反論するが、彼の声はどんどん小さくなっていく。鴻巣本くんも、あれがただの不審者、人間ではないことが分かっているのだろう。
それでも、もう、校舎に戻りたくないから、自分もアレに遭遇したくないから、動けない。警備員があの化け物と鉢合わせたら死ぬかも、と思いながら助けられないでいる。
わたしたちがどうするか迷っている間に、警備員は図書室に着いたようだった。明らかに、何かを探すように懐中電灯が右往左往しているが、やがて諦めたかのように、元来た道を戻っている先ほどと変わらない小走りだが、逃げている様子はない。
何もなかったらしい。
いつの間にか息を止めていたようで、わたしは思わず、ほっと溜息を吐いた。
あれが何だったのか。わたしたちには全く分からないが――なんとなく、マネキンが動いたのでは、という考えが、ぬぐえなかった。
そんな非現実なことありえない、と思っていても、どうしても、その考えが頭から離れない。
それはわたしだけじゃなかったのか、久慈くんも、鴻巣本くんも、先ほどのアレを話題にしようとしなかった。
「――……あ」
動くことも話すこともできず、長いこと固まっていたわたしたちだったが、ふと、鴻巣本くんが声を上げる。
「……問題集、教室に置いてきちまった」
そう言う彼の手には、確かに何もない。マネキンを探すために教室の適当な机に置き、そのまま慌てて逃げたから、そこに置きっぱなしにしてしまったのだと言う。
先ほどとは違う、なんとも言えない沈黙が、わたしたちの中に流れる。
「……もう、君一人で行って来てよ」
今度、沈黙を破ったのは久慈くんだった。
「え、やだやだやだ、無理無理無理」
鴻巣本くんは、全力で首と手を振っている。あんなことがあった後だ。久慈くんも本気で言っているわけではないだろう。
「あ……わたしはちゃんとあるから、写真、撮る?」
「あああ~ありがとう、りっちゃん様ッ! 女神!」
大げさなくらい、鴻巣本くんが喜んだ。
わたしも、今から再び校舎に入るのは、嫌だった。もう一度、取りに戻るくらいなら、問題集を見せることくらい、なんてことない。




