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大人の警備員、というには、少し身長が足りない。それだけなら、ただ背の低い人が警備員をしているんだな、と思ったかもしれないけど、警備員であれば、巡回用に、懐中電灯を用意しているものだろう。
でも、あの人影が、そういうものを持っているようには見えなかった。暗くてよく分からないが――そもそも、警備員が来たのなら、暗くて分からない、というのが不自然だ。懐中電灯の光がある気配はない。
わたしたちと同じように忘れ物を取りに来た子なのかな……。でも、向こうの方にいるということは、わたしたちが使ったのとは違う階段を上ってきたということ。図書室からはだいぶ遠回りになると思うんだけど……図書室以外にも空きっぱなしの窓があるのかな。わたしが知らないだけで。
――カクン。
何かがおかしいな、と様子をうかがっていると、人影は、あまりにも不自然な動きを見せた。この距離と暗さでは、男か女かも分からないけれど、ただ、頭に当たる部分が、首の骨が折れているかのように、大きく、上下に揺れた。上下、というより、もはや前後と言っても過言ではない。
そして、それは、ゆっくりと、こちらを向き――明らかに、わたしたちの方へと近づいてきていた。
「ぁ――」
喉がひきつる。
足から力が抜ける。
それでも、少しでも、アレから遠ざからなきゃいけない、と、数歩、後ろに下がる。
「……りく?」
背後で、久慈くんの声がする。教室の中を探し終えたのかもしれない。
そして――その呼びかけに反応した人影が、ビクリ、と体を震わせ、先ほどよりも早いスピードで、こちらに向かっていた。人が走るよりは遅いけれど、何もせずに突っ立っていれば、すぐに追いつかれるだろう。
その人影に気がついた久慈くんも、鴻巣本くんも、怪訝そうな顔から一転して、焦ったような表情に変わる。
「なんだあれ、人? 生き物か?」
「馬鹿、見てないで逃げるぞ!」
観察しながらもすでに走り出している鴻巣本くんと、そのすぐ横で駆けだす久慈くん。わたしも二人の後に続きたいのに、膝が震えて、進めはするけれど、思ったように脚が動かない。
「――ッ、早く!」
久慈くんが、わたしの、問題集を持っていない方の腕をつかみ、引っ張ってくれる。おかげで、先ほどよりはまともに走ることができた。
バタバタと、足音も気にせず走れば、あっという間に図書室へとたどり着く。
「落ち着いて。まだ来てないから。焦って出られない方が時間ロスになる」
久慈くんが、廊下の方を確認しながら、そう声をかけてくれる。そのおかげか、窓のサッシにかけた手は震えていたけれど、一発で窓を超えることができた。
そうしてわたしたちは、窓から這い出るようにして、外へと逃げ出すのだった。




