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夕食とお風呂を済ませたわたしは、先に自室だと割り当てられた小さい方の部屋の、押し入れの上にある天袋を探っていた。ここには、父の昔の私物が置かれている。父からは、祖父母宅に住むことになった際に、ここの荷物は邪魔なら処分してもいいけど、卒業アルバムだけは取っておいて欲しい、と言われていたのだ。
わたしの目的は、卒業アルバムだ。
わたしが代古北高校に通わざるを得なかったように、父も代古北高校の学生だったのでは、と思ったのだ。父の出身高校の話を聞いたことはなかったけれど、この家に住んでいたなら、よっぽど学びたいことがない限りは、代古北高校に行くはず。
天袋に押し込められていた段ボールを下ろし、開けていく。中には教科書など、父の学生時代に使っていたであろうものが入っていた。その中に、卒業アルバムもある。
「……やっぱり」
わたしの想像通り、それは、代古北高校の卒業アルバムだった。
中をめくる。今と少し制服のデザインが違うが、間違いなく、代古北の校舎も映っている。そして、わたしは、集合写真のところで手を止めた。
異質なそれは、すぐに分かった。
どのクラスの集合写真にも、マネキンが一緒に映っている。ただ、一緒に、と言っても、右上に、後から付け足されていた。合成写真が上手く作れなかった時代の、欠席者の扱いそのものだ。
映っているマネキンに張られた紙の顔は、笑顔なことには変わらないが、明らかに絵だと分かるものだった。この時代は、写真を使わず、絵を描いていたのかも……。
いや、むしろ、今の代古北高校にあるの方も、絵なのかも。今ならAIとかで、すぐにそれっぽいものが作れると思う。
そんなことよりも。
父の卒業アルバムにもこうして映っているということは、昔から、あのマネキンが代古北高校にあるのは事実なのだろう。
わたしは、父の卒業年数を確認する。
ちょうど、二十五年前だった。
もしかしたら、父が学校にいる際に、久慈くんたちが話してくれた、名前が一緒になって死んでしまった人がいたかもしれない。
父に詳しく聞いてみたいけど……、でも、仮に父がいた時代にその事件が起きていたのなら、呪いが事実の真偽がどうであれ、わたしと同じ名前の身代わり人形がいるというのは父に心配をかけてしまうのではないだろうか。
迷っていると、すす、と、部屋のふすまが開く。
「むかご?」
むかごは扉を開けられる猫。普通の、ドアノブがあるタイプのドアだって、ドアノブを下ろして扉を開けられるのだ。ふすまくらい、造作もない。
この家に来てからも、その前に来たときも、ひょいとふすまを開けて、わたしの部屋へ遊びに来ていた。
だから、むかごだろうと思って、深く考えず、彼の名を呼んだ。
――でも、入ってこない。
どうしたのかな、と思って、開いたふすまの隙間を見ると――そこには、人の手が、あった。




