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けれど、あんな気味の悪いもの、好きにしていいですよ、と置かれて、本当に雑に扱う人なんているんだろうか……? わたしなら近づきたくもない。
とはいえ、どうやら真壁、というクラスメイトは積極的にいじめていたらしいし、やる人はやるのかもしれない。
「生贄の名前が『うりはりぷりんせす』で、……りくさんの……、いえ、貴女にとって、アレの名前が『うりはりぷりんせす』なのは、気味が悪いでしょう。だから黙っていようと思ったのだけど……」
椿ちゃんが、説明しながらも、言葉を濁す。わたしの名前がアレと一緒、ということを口にしたくないのかもしれない。
「アレの名前って、『うりはりぷりんせす』に限らず、絶対に学年に同じ名前や似たような名前にならないように、一年のときに皆で考えるんだよな。うりはり、って実在するのかも怪しい苗字らしいし、ぷりんせす、なんて名前普通はいないって……あー……えっと……」
説明してくれていた鴻巣本くんが、ハッとしたような表情をして、一気に口ごもる。そして、言葉を失うと、久慈くんに軽くどつかれていた。
普通はいない名前。
そう思ってあのマネキンにその名前をつけたのだろうけど――実際、その名前で十七年、生きてきた人間がここにいる。普通はいない名前、と言われたけれど、鴻巣本くんの顔からして、悪気があって言ったわけではないのだろう。
「――……わたしもそう思う」
なるべく笑っていったつもりだったのに、鴻巣本くんは気まずそうに目線を逸らした。うまく笑顔を作れなかったのかもしれない。
「でも、その……『うりはりぷりんせす』って名前だと、何が問題なの?」
わたしからしたら、気味が悪いし、嫌だなって思うけど、そこまで必死になって、名前が一緒だと言わないようにしたり、テストまで徹底的に別名を使ったり、そうする必要はあるのだろうか。
わたしが聞いてみると、四人は顔を見合わせ、四人で言葉を探しているような素振りだった。
誰が、何を言うのか、視線で探りを入れている。
少しして、ようやく口を開いたのは琴葉ちゃんだった。
「全部話すのは平気なんだけど……最初から話さないと分かりにくいし……。……えっと、時間大丈夫なら、場所、変えない?」
琴葉ちゃんがちらり、と、マネキンの方を見て、言った。
これ以上、ここで――あのマネキンのいる空間で、この話を続けたくないのだろう。
幸い、特に用事があるわけでもない。荷解きは終わっていないけれど、すぐに必要なものは全部段ボールから出してあるから、二、三日くらい、荷解きを放置したって問題はない。
わたしたちはそれぞれ荷物を持ち、教室を出る。
少し先を歩く四人の後をわたしはついて行く。いつも、わたしが使っているのとは違うルート。少し遠回りだったけれど――四人が選んだ廊下は、一度も、他のクラスの教室の前を通ることはなかった。




