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どうめい  作者: ゴルゴンゾーラ三国


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 名前――名前。

 十中八九、わたしの名前のことだろう。この名前については、散々言われてきたことだ。

 おかしい名前だって、新しいクラスメイトが陰口を叩いているに違いない。


 わたしの陰口を叩いている人たちの中に入っていく勇気がない。

 気味の悪いマネキンがいる、という事実と同じくらい、この状況で教室に入るのは、わたしにとって恐ろしかった。


「でも、だからって、どうするんだよ」


 男子生徒の声。……少なくとも、久慈くんじゃない。さっきの声も、琴葉ちゃんとは別の子のものだった。

 もしかして、二人はいないのか、と思ったけれど――そんなのは、わたしの勝手な希望に過ぎなかった。


「……変える、とか?」


 そう言ったのは、琴葉ちゃん。


「今? まだ二年だけど」


 久慈くんの声も聞こえてくる。

 あの二人の声がして、本格的にわたしは教室内に入ることができなくなってしまった。

 このクラスにやってきて、まだ数日。人となりをハッキリ分かっているわけではなかったけれど、あの二人は優しいと思っていたのに。


「でも、先生が許可くれないわよ。今年入ってきた先生で、クラスを持ってるのは土湯先生と真壁先生だけ。でも、真壁先生はここ出身だから絶対駄目だって言うと思うわ。ほら、このクラスの真壁くんの従妹なんでしょう?」


 『あの名前、まずいわよね』、と言った女子生徒の声。


「じゃあ、勝手に変えちまうとか」


「それなら君がやってくれよ」


 『どうするんだよ』と言っていた男子生徒の声と、久慈くんの声。どうやら四人で話をしているらしい。


「あー、もー、なんでこののクラスに転校生なんて入れちゃったのかしら! 先生だって彼女の名前を把握してるでしょうに」


「……どこのクラスに入ろうと、そんなに変わらないよ」


 女子生徒と久慈くんが言い合っている。


「――……」


 まるで、わたしが来なければ良かった、みたいな言い方に、わたしの視線は、廊下の床に落ちる。

 わたしだって、来たくて来たわけじゃない。でも、母があんなことをして、学校を変えざるを得なかったんだから。仕方ないじゃない。

 本当なら、一年前の、母がいなくなる前のまま、高校生活を過ごしたかったのに。


「まあ、でも、確かに変えるなら真壁にやらせるか? アレを一番いじめてたの、真壁だろ」


 「この前だって、背中から思いっきり蹴飛ばして、座り直させるの大変だったじゃん」と男子生徒が言う。


「…………?」


 あれ、何か、話がおかしいような。

 てっきりわたしのことだと思っていたのに。なんだか少し、違うような……?

 もう少し聞いたら、話の全容が分かるだろうか、と、教室の方に集中してしまったからだろうか。


 ――ガタリ。


 身を乗り出し過ぎたのか、扉を揺らしてしまったのは。

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