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もしかして、久慈くんに、名前を書き直そうとしたことがバレた? と思って、消しゴムを使う手を止め、ちらっと彼の方を見る。しかし、久慈くんは、普通にテストを受けていた。
じゃあ、琴葉ちゃん? 流石に振り返っていたらカンニングを疑われても仕方がないので、そんなことはないだろう、と思いつつも、前を確認する。案の定、彼女がこっちを見ている、なんてことはない。
定期テストではないとはいえ、テストはテスト。あまり周囲を確認することはできない、と分かっているけれど、それでも、あまりにも強く感じる、誰かに見られている、という感覚に、わたしは落ち着かなかった。
とりあえず、名前を書き換えることを諦め、わたしは問題を解いていく。名前を書くことくらい、そんなに時間もかからずできるので、後回しにしたって問題ないだろう。
一問、また一問、と回答欄を埋めていくたびに、先ほどまで感じていたはずの、痛いくらいの視線が和らいでいくのが分かる。
全部で十五問。問題自体はそこまで難しくないもので、すぐに解き終わってしまう。すぐに小テストに取り掛からなかったから時間が足りるか、と思っていたけれど、時計を確認すれば、あと二分ほど残っている。これなら名前を書き直すこともできそうだ。
そう思って、再び名前を消そうとした瞬間――再び、強い視線。
先ほどよりも、もっとはっきりしたそれに、わたしは思わず顔を上げてしまう。
パッと反射的に見た、その先にいたのは――あの、マネキンだった。
しかも、こちらを見ている。
下半身はしっかり前を向いているのに、上半身はねじ切れるのでは、と思うほど、こちらに向いていた。
あの気持ち悪い笑顔が張られた頭が、こっちを向いている。
その事実に気が付き、わたしは思わずそのまま固まってしまった。目がそらせない。一刻も視界から消したいのに。目を離すのが、怖い。
「――六月一日さん?」
ガタ、ガタガタッ。
土湯先生がわたしをとがめるように呼んだ瞬間、クラス内のいろんなところから、机や椅子の脚が動く音がする。一人や二人ではないその音は、いくつも重なり、かなりの音量になっている。
「もう、皆、どうしたの」
驚いた声を上げる土湯先生。しかし、誰も、何も言わない。
マネキンが動いていることが、土湯先生は分かっていないのか、それともわたしの幻覚なのか。それとも、朝からこちらを向いていたことに気が付いていなかっただけなのか。
「まったく……。小テスト、回収しますよ。後ろから回して」
呆れたように、土湯先生は指示を出す。
「あ……」
わたしが名前を書き換えるよりも早く、琴葉ちゃんがわたしの机の上の小テストを回収し、琴葉ちゃんの前の席へと回してしまった。




