↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新月のふたり  作者: 六花
PR
5/14

第5話 「Fragments」

 朝。


 目が覚めて、時計を見る。


 まだ少し早い。


 もう一度寝ようかと思ったけれど、眠気はそれほど残っていなかった。


 布団を出る。


 顔を洗って、湯を沸かす。


 簡単に朝食を作って、食べる。


 食器を洗い、部屋へ戻る。


 パソコンを起動した。


 昨日録った収録データを開く。


 声を確認する。


 一度聞く。


 もう一度。


 ……こっちかな。


 気になったところを録り直して、データを整理する。


 あとは送るだけ。


 そう思ってファイルを閉じた。


 机の横に立てかけてあるギターが目に入った。


 手に取る。


 コードを鳴らす。


 もう一つ。


 そこから、昨日の夜に思いついたフレーズを弾いてみる。


 違う。


 少し変える。


 今度は悪くない。


 録音しておく。


 昼前になって、腹が減った。


 ギターを置いて、外へ出る。


 駅の近くまで歩いたところで、CDショップに入った。


 特に買うものを決めていたわけじゃない。


 新譜を眺めていると、試聴機から知らない曲が流れてきた。


 サックス。


 足を止める。


 フレーズを聴く。


 もう一度。


 ……これ、ギターならどう弾くんだろ。


 頭の中で音を置き換える。


 そのままだと、なんだか違う。


 音の長さを変える。


 少し間を空ける。


 こっちなら。


 そんなことを考えているうちに、一曲終わった。


 店を出る。


 昼食を済ませて帰宅した。


 ギターを手に取る。


 さっきのフレーズを試す。


 違う。


 やっぱり、そのままじゃない。


 音を減らす。


 弾き方を変える。


 何度か繰り返しているうちに、別のフレーズになった。


 これはこれでいい。


 そこにコードをつける。


 さらに音を重ねる。


 いつの間にか、さっきとは違う曲になっていた。


 ふと、前のライブを思い出す。


 Ayaのギター。


 歌の隙間に入っていた音。


 ……これなら。


 ここを空けたら、Ayaが弾けそうだな。


 弾いてみる。


 悪くない。


 今度はドラム。


 Renなら、ここで叩くかな。


 いや。


 前のライブでは、もっと叩いてた。


 でも、あれはあれで面白かった。


 ベース。


 Kouは……。


 まだ始めてそんなに経ってないって言ってたっけ。


 まあ、そこはいいか。


 Akiraは歌だから――。


 手が止まる。


 パソコンの画面を見る。


 波形がいくつも並んでいる。


 ……何やってるんだろ。


 ライブを二回見ただけなのに。


 四人がこの曲をやったら、なんとなく面白そうだと思った。


 それだけだった。


 時計を見る。


 夕方になっていた。


 腹が減った。


 ギターを置いて、買い物に出る。


 帰って、夕飯を作る。


 野菜を切る。


 鍋に入れる。


 火をつける。


 煮込んでいる間、さっきの曲がまた頭に浮かぶ。


 Ayaなら、ここ。


 Renなら……。


 Kouは、もう少し――。


 Akiraのところは、どうするか。


 包丁を置く。


 ……知らないな。


 そもそも、どんな音楽を聴いてきたのかも分からない。


 どんなふうに音を作るのかも。


 分かるわけがない。


 ライブを二回見ただけなんだから。


 鍋を見る。


 もういいかな。


 火を止める。


 夕飯を食べる。


 食器を洗う。


 部屋へ戻る。


 パソコンには、昼間の曲が残っている。


 もう少しだけ触る。


 ギターを重ねる。


 音を消す。


 また弾く。


 気づけば夜になっていた。


 そこで、別のことを思い出す。


 ……収録データ。


 送ってない。


 時計を見る。


 締切は今日だった。


「……やば」


 慌ててデータを確認する。


 問題ない。


 そのまま送信する。


 進行バーが伸びていく。


 終わる。


「……間に合った」


 椅子にもたれる。


 疲れた。


 保存していない音源があることに気づく。


 保存する。


 ファイル名を入力する。


 Lunatic Child_rough_01。


 パソコンの画面に残った曲を見る。


 まだ、誰にも聴かせるつもりはない。


 まあ、消す理由もなかった。


 パソコンを閉じようとして、ふと思い出す。


 スマートフォンを取り出す。


 Lunatic Childのアカウントを開く。


 次のライブの日程を見る。


 ……行こう。


 スマートフォンを机に置いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。