乙子ルート 第7日目⑨
⑨
「……み! ……きみ! おい、貞君! もうすぐ着くぞ。起きろ」
「んあ? もう朝か?」
「朝っつーか、昼だけどな。ほら、起きろ」
駅に着いた。
電車を降り、またもやオレと乙子はのそのそと歩き出す。
ホテルが駅に近い末理さんとはすぐお別れだ。
達人は先に乙子を家まで送り届けると、オレの荷物を持って戻ってきた。
まあ、オレの移動速度が遅いから簡単に追いつかれたんですけどね。
いつもならなんてことない道をのそのそ移動してようやく我が家にたどり着く。
「わりー、達人。今日はしゃべるのもだるい。せっかく送ってくれたってのになんのお構いもできんですまんな……」
「ああ。そんくらいわかってっから気にすんな。まあ、ゆっくり休め。鍵はいつもんとこに置いとくぞ」
それだけ言い残して達人は出て行った。
貞君のアパート。
八月七日 午後六時一五分。
目が覚めた。
辺りは茜色に染まり始めていた。
今何時だ?
時計を見る。
午後六時一五分。
あ゛~っ、もうこんな時間だよ……。
オレは携帯を手にすると、謝らなければならない人に電話をかけた。
プルルルルルル…
携帯が無機質な発信音をあげ始める。
そして、三コール目でその人は電話に出た。
「貞君くん?」
「ええ、そうです」
「直接会って、とも思ったんですが、今日中にどうしても謝っておきたくて……。本当にすみませんでした。『考えさせてほしい』なんて言った上に、ムダな時間に付き合わせちゃって……」
オレには平謝りする他になかった。
「謝る必要なんてないわ。私も楽しかったから。決して『ムダな時間』なんかじゃなかったわ」
身勝手なオレにこんな優しい言葉をかけてくれる。本当に人間ができた人だ。
「そう言ってもらえると助かります」
「それより、童貞卒業おめでとう。お互い初恋同士だったんでしょ? 羨ましいわ」
「ええ、まあ……」
「乙子さん、いい子じゃない。大切にしなきゃダメよ?」
「わかってます。それと……末理さんの願いごと、かなうといいですね」
オレは心の底からそう思った。末理さんには絶対幸せになって欲しい。
「ありがとう。貞君くんも彼女とお幸せにね。あ、あと乙子さんには『またお会いする機会があるかもしれない』って伝えておいて」
どうやら、ドラゴンチェリー探しの旅は続行らしい。
確認したわけじゃないが、オレに付いていた星は今、乙子のアソコにあるはずだ。
残りの星を回収したら会うつもりなんだろう。
「わかりました。伝えておきます」
かけるべき電話を済ませ、しばらくするとオレのケータイが鳴った。




