乙子ルート 第7日目⑧
⑧
そして、朝。
眠気は一気にやってきた。
それは乙子も同じだったようで、再び顔を合わせた時、ものすごく眠そうな顔をしていた。
昨晩ずっと起きていたオレたちは説明するまでもなく寝不足だった。
「お前ら、どうした? すんげー顔してるぞ」
「いや、なんか眠れなくてさ……はしゃぎ過ぎたのかもしれん……」
「あたしも……。それに昨日雷鳴ってたし……」
「そっか、大丈夫か?」
「体調のこと言ってるなら大丈夫……。ただの寝不足だから……」
「オレもそう……。ただの寝不足だから気にしないでくれ……」
「少し休んでくか?」
「いんや、とっとと帰ろうぜ……。どうせ寝るなら自分ちで寝たい……」
「オトコもそれでいいのか?」
「ん、大丈夫……。我慢できる……」
「お前らがそれでいいんならいいけどさ……」
そんな風に達人に心配されつつもオレはもそもそと朝食をとった。
味なんてもちろんわからない。
その後、眠気と戦いながらチェックアウトの準備を済ませ、部屋を出た。
そして、フロントで宿泊料金をを支払う。
某有名RPGの宿屋だったら「夕べはお楽しみでしたね」とか言われてるところだ。
そんなこと言われた日には訴えるけど。そして、高額で勝つけど。
「んじゃ、行くか」
宿を出発し始めたものの、オレと乙子の足取りは重い。
それを見かねた達人がオレと乙子の荷物を持ってくれた。
末理さんも乙子の荷物を持ってくれると言ったのだが、達人はそれを丁重に断っていた。
チャラチャラしてるように見えるけど、達人はすごい気配り上手だ。
普段はあまり気づかないけど、今はその優しさが身に染みる。
その辺が達人がモテる理由なんだろうか。
眠くて仕方がないオレは手をだらり、とぶら下げて前かがみの姿勢でゾンビのように歩いた。
はっきり言って不審者だ。
いきなり「キョオーーーッッ!!」とか叫んでも全然違和感がない。血が暴走したあの人みたく。
そんなオレの様子を見て達人が言った。
「貞君、マジで大丈夫か? タクシー呼ぶか?」
「いや、いい……。今座っちまったらしばらく起きれる自信がない……」
「あたしも……。今眠ったらしばらく起きるの無理……」
「そうか。辛くなったら言えよ?」
そんなこんなで時間にして十分程度の永遠とも思える時間を経て、ようやく駅に着いた。
あと少しだ。
駅に着き電車を待つ。
今にも眠ってしまいそうだが、我慢する。
あと、ほんの二、三分だ。耐えろ、オレ。
ガタゴトと音を立てながら、ようやく電車が来た。
マジで長かった。眠い。まぶたが重い。
ともあれ、車内に入る。
幸いオレたちが座るくらいの空きはあった。
オレは最後の力を振り絞り、これだけ言い残す。
「オレは寝る……。わりーけど、着いたら起こしてくれ……」
「あたしも……。悪いけど頼むわね……」
座った瞬間、オレの意識は眠りに落ちていった。




