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乙子ルート 第4日目①

 貞君のアパート。

 八月四日 午前八時一〇分。


 ピンポーン。


 その日の目覚めは最悪だった。


 目が覚める前に玄関のチャイムで起こされたからだ。


 オレの眠りを妨げる者は何人なんぴとたりとも許さん!


 誰だ? こんな朝っぱらから……。


 セールスとかだったらマジで殺す。


 ゾンビとかでも殺す。


 死んでても殺す。


 一回生き返らせてからでもまた殺す。


 祖に会ったら祖を殺す。


 そんな物騒なことを考えながら、ドアに手をかける。


 そして眠い目をこすりながらドアを開けると、そこには見慣れた親友の顔が。


「悪いな、貞君。寝てたか?」


 そんなしおらしい親友の態度に一気に毒気を抜かれる。


「別にいいけど……。どうしたんだ? こんな朝早く」


「最近お前忙しそうだからさ。朝くらいしか会う機会もないじゃん? だから早朝突撃してみたってわけだ。それで、どうだ? 貞君。童貞は切れそうか?」


「ん? いや、どうかな……」


 あいまいに答える。


「そんなお前のために今日はいいものを持ってきた」


「いいもの? 洋ピンのビデオでもくれんのか? それとも裏モノのDVD?」


「エロ関係から離れろ……」


「じゃあ、一体何をくれるというのか、お前は?」


年増園としまえん遊園地のタダ券~~~」


 例のダミ声を真似て宣言する達人。


 全然似てないけどな。


 そこはまあご愛嬌ってことで。


「これで気になる女がいたら誘ってみろ。好感度が一定以上あれば、まず断る女はいない」


 「好感度」。


 これは一般生活においてあまり使用頻度の高い言葉ではないような気が。


 どうやら、オレだけではなく達人もエロゲ菌に侵されてしまっているらしかった。


 感染源は……オレ、だろうか。


「それを役立てられるか、ムダにするかはお前次第だ。応援してっから、がんばれよ?」


 そう言って二枚のチケットをオレに手渡す。


 少しジーン、としてしまった。


「達人、サンキュな。お前には本当にどうやって恩返しすればいいのかさえわからん……」


 本気でそう思う。


 打算も何もなく、本当にオレのためだけに尽力してくれる。


 普段はおちゃらけているが、かけがえのない友達だ。


「ま、親友の一大イベントだからな。このくらい何でもねーさ。とにかくそういうことだから。邪魔したな」


 それだけ言い残して達人は出て行った。


 サンキュー、マイ・ベスト・フレンド。


 本当にお前との友情は永遠だ。


 「永遠」なんて言葉を信じていなかったオレだけど、今ならその「永遠」を信じられる。


 そんな風に感じたオレだった。


 ともあれ、いつものように支度を済ませ、家を出る。

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