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94:セカンドチャンス

虚無に挑む8人が発表されてから、10日が経過したその頃……

94:セカンドチャンス




虚無討伐メンバー8人が発表されてから、10日ほどが経過。

各自が懸命にレベル上げに努める中……



虚無、9階に到達。



その日、+10ポーション収集は70000個を突破。

既に、一日に3000個以上のポーションが集まるようになっている上、増加速度は更に上昇傾向にある。

プレイヤーの増加が頭打ちになったとは言え、Quitterでの情報拡散の効果は絶大だったという事だ。


各プレイヤーが画面写真付きで収集報告を行ったり、ロビーで手持ちの数を報告したりと、綿密な数の確認が日々繰り返され、マジメイジの献身的な作業努力によって、逐次wiki上で統計の報告が更新されていく。


いい流れだ。

このまま行けば、決戦の時までに、200レベルに満たない一層選抜メンバーでも十分に100万ダメージを確保できるだけの数が既に揃っている。

万一に備え、ポーション集めの作業は継続されているが、プレイヤーの間には勝利を確信した余裕さえも生まれていた。



が、しかし、トップランカーの面々はwiki掲示板に出没する事も少なくなり、頻々とチャットルームのランカー部屋に集合し、慌ただしく何かのやり取りを続けている。


サイバラ、山田マン達も活動報告が減り、ここ半月ほど何やら忙しそうにしている。


彼らは、ずっと、その時に備えていた。


これは、彼らにしかできない事なのだから。




『推定時刻は、今夜8時頃』


『もうちょっと遅い時間ならやりやすかったんだがな』


『朝や昼に出てこられたらもっと厄介だったんだから、十分ラッキーでしょ』


『それもそうか……』


ここ最近151階に集まっていた面々、ムラマサ、キツネ、マジメイジ、ブッチー、人形姫、一閃、辻スミス、発光大王子の八名がフルメンバーで集合していた。


場所は、かつて階段が存在していた、151階の最奥。

まるで下から何かが来るのを待ち構えているかのように、八人は包囲陣形を組んでいた。


そして……


『っしゃあ! 想定通りだ! ビビってんじゃねえぞ!』


『ああ、みんな頼むぞ!!』



虚無、151階に出現。


二体目である。






時は、半月以上前に遡る。

サイバラは、一つの警告を送っていた。


プレイヤーデータ総数が想定を越えて増えた事によって虚無が発生したのであれば、+10ポーションを集める行為は、そのまま、「二体目」を発生し得る危険性を秘めている、と言うのだ。


一度、サイバラはユウリの父の協力を得て、山田マンが荒らした際に大量生産された古いセーブデータの殆どを手作業で退避させていた。

この「間引き」により、プレイヤー総数に起因する問題は一時的に解決された。

だが、ポーション収集によってプレイヤー数が爆発的に増えつつある中、再び限界が迫っていた。


サイバラの計算によると、プレイヤー総数が30000を越えた時点で「二度目」が発生し得ると言うのだが……

この警告の時点で、既にその数を越えていた。


もう、二体目の虚無が発生しているはずだ、と、そう言うのだ。




サイバラの当初の考えでは、ダンジョン最深部200階に再び虚無が生成されたとして、上への階段が存在しないため、対応のしようが無く、二体目の討伐は後回しにせざるを得ないと思われていた。

が、しかし、虚無の行動パターンを調べるうち、そうではない事が判明した。


虚無に割り振られた行動パターンは、「0」。

そんな行動パターンは存在しない。


存在しないAIパターンを割り振られた結果、「パターンが1の場合、1番目のAIを読み込む」といった条件付けが成立せず、パターンリストをどんどん見送る事となる。

そして、どの条件にも当てはまらない場合、エラー表示が出てゲームが強制終了されてしまうのだが……

大量のオリジナルモンスターを扱うMOD開発において、そのままの仕様では誰か一人が作業ミスをする度にゲームに深刻なエラーが発生する事になるため、開発の初期段階の時点で簡単な応急処置が施されていた。

どの条件にも当てはまらない場合は、AIパターンリストの一番下、「救出されたNPCが出口に向かう」という行動が割り振られる事になったのだ。


虚無がずっと出口を目指し続けるという行動パターンは、ここに起因する。


厄介なのは、虚無の本来の姿…… 200階ボス、大邪神ガラエルが、追加ボスモンスターであった事だ。

本来、ボスは階を跨いで移動したりする事は無い。

だが、MODで追加したボスモンスターの全ては、元来プレイヤーのセーブデータ領域だったものを転用して作られている。

つまり、移動の挙動は、プレイヤーとして扱われるのだ。

上への階段に触れれば、次の階へと進んでしまうという事だ。


そこまでは、サイバラや山田マンの解析により、比較的早期に判明していた。

階段が無ければ、上に登る事も無い。

それだけなら、問題は無いと思われていた。


だが、長期の解析の結果、「そうではない」という事が分かった。


そもそも、虚無が触れた時点で、移動判定の前に階段が消滅するのなら、虚無の階を越えた移動は発生しないのではないか?

その思いつきをきっかけとして、虚無の挙動を精査した結果、虚無が階段無しでも階やエリアを移動可能であるとの結論に達した。

AI行動パターンが「NPCの撤退挙動」の場合、MAPに設定された終点に移動した時点で、エリア間移動が発生するのだ。

つまり、階段が存在しなくとも、終点座標に到達しさえすれば移動は成立する。


通常、終点は「入り口」である。

正常に行動パターンが設定されたNPCならば、「エリア○○に辿りついた場合、所定の位置△△で移動を停止する」といったような、行動終了パターンが設定されている。

が、当然、虚無に行動終了パターンなど存在しない。

これによって、虚無は出口から入り口への移動を延々繰り返すようになってしまっていたのだ。


そして、プレイヤー数が再び限界を迎えた時、200階に二体目の虚無が発生。

一日に3階分ほどの移動速度で、ジワリジワリと階を進行。

今日、この時、151階に姿を現した、という事だ。


キャラクターを作っては消し、作っては消ししてポーションを収集する作業上、大量の削除済みデータがサーバーに残されている。

サイバラ、山田マン、ユウリ、そしてカノザキの遺族の手により、逐次大量に増え続けるこの「残骸」の撤去が行われ、三体目の発生は防がれていた。

プレイヤーの手で削除されたセーブデータを判別し、手作業でそれらをサーバー上から削除する。

彼らの努力によって、今ではそれくらいの事なら可能になっていのだ。



『あいつらの頑張りに応えるためにも、ここでしっかり仕留めてやらねぇとな』


『ああ、今度こそ…… やってやるさ!』



この日、この時のため、彼らは備えてきた。


今こそ、リベンジの時だ。







いよいよ最終章突入、といった辺りです。

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