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85:地雷

クラガが「選ばれし者」になった事を知ったコウヤ達は……

85:地雷




翌日、日曜日。

コウヤ達はユウリの家に集まり、顔を合わせてのマジホリ会を行っていた。

コウヤ、マヤ、ユウリ、ユウイ、カナリ、ハナミ、ソノカの七名に増えたため、コウヤの自宅ではやや手狭で、ユウリの家の倉庫部屋を使わせてもらっている。

倉庫の片隅には、ユウリの父の会社が余剰機材として倉庫に溜め込んだ型遅れのノートPCが積み上げられている。

これらの廃棄待ちPCに、(いかがわしいサイトに接続しないように)安全対策を施した上でタダ同然で放出した事が、コウヤのクラスでのマジホリ普及に大きく貢献していた。

当初はタブレットでプレイしていたソノカも、遊びにくさからこの型遅れPCに乗り換え、今ではすっかりキーボードとマウスでプレイする事に慣れ親しんでいた。



「でも、よく私達に追いついて来れたね、お姉ちゃんたち」


「ああ……その……それには訳があって……」


不思議そうに尋ねるユウイに、ソノカが答える。


短期間でソノカ達がレベルを上げる事が出来たのには、訳があった。

彼女とハナミの二人は、コウヤ達と共に戦えるようにと、ブッチー直伝の宝部屋レベリングを行っていたのだが、最近、ある発見があってからその効率は更に上昇していた。


「なるほど、定期メンテナンスが無くなった今なら、不自然なレベルの上がり方をチェックする機構も働いていない訳か……」


「なんだ? 事情通のユウリにしちゃ、基本的な事抑えてないんだな」


「コウヤ君は、そういう裏技的なやり方は嫌いだって言ってたじゃないですか。

僕も、このマジホリ会では正々堂々のプレイで行くつもりですからね」


かつては、毎週火曜の定期メンテナンス時に、あり得ない動きをしているセーブデータが無いかチェックし、異常のある者は凍結するという処理が行われていた。

ソノカ達のような稼ぎ方なら問題は無いのだろうが、より激しい、異常なレベルアップの場合、不正として処理されるはずだ。

そのシステムの監視が、ゲームの崩壊を阻止するためメンテナンスを停止している現状では機能していない。


直接セーブデータを弄ったり、異常な操作をしている訳でもなく、宝部屋を出入りして戦い続けるという、通常のゲームプレイの範疇の作業を高速で行うだけ。

だから、メンテと関係なく常に機能している違反監視システムにも引っかからず、BOTを使った宝部屋レベリングが可能となっているのだ。


「その内、委員長もソノカに追い抜かれちまうんじゃねーか?」


「別に、私は勝ち負けを競ってなどいませんから、それならそれで構いませんわよ」


「またまた~ 負けず嫌いなの分かってんだぜー!」


「そういうのを気にするのは、貴方の方ではなくて?」


カナリはもう、からかわれても以前のように取り乱したりしない。

気心の知れた友達関係がしっかりと築けている。

そんな様子を見て、ソノカとハナミは嬉しそうに微笑む。


「と言う事は、クラガ君が300レベルも稼げた理由も、BOTを使った高速レベリングが可能になったからこそ、ですか」


「あー、だろうなぁ アイツなら迷わずツール使うっしょ」


その、コウヤとユウリの会話を聞き、カナリがビクッと肩を震わせる。


「クラガ……?」


ハッ、と、ハナミとソノカも顔を見合わせる。


「どういう事ですの?」


「なんだ、委員長知らなかったのか? 虚無スレに出てるじゃん」


「+10ポーションをかき集めて虚無を倒すプレイヤーの選抜、その第一候補に選ばれたのは、クラガ君なんですよ」


マジホリの起動準備をしていた手が止まり、カナリの表情がこわばる。


「いやー、手段はインチキだったとしてもさ、正直見直したぜ。

まさか俺らより後から始めたアイツが、そこまでやり込んでるとかさ」


「ウスデ君、モジヤ君を見かけたからには、彼も始めているのは当然だった訳ですね」


「ちょっと! コウヤ君!!」


ソノカが大声を出し、コウヤ達は驚いて言葉を途切れさせる。

ようやく二人も、無表情のまま金縛りにあったかのように身動き一つしなくなったカナリの様子に気付く。

倉庫部屋は沈黙に包まれ、皆の視線がカナリに集まる。


意味が分からず、何を言えばいいかも分からず、ただただ狼狽えるばかりのコウヤ達だったが、マヤだけは一人、おおよその察しを付けていた。

あれは、三年ほど前だったか。

当事者は、彼女と、クラスメイトか。

なるほど、辻褄が合う。

彼女の抱える、暗い部分。彼女の無理をしているようなお嬢様ぶり。

そういう事か。


「帰る」


カナリは、唐突にふいと立ち上がり、部屋の外に向かう。

パソコンも、自分のバッグも置いたまま、手ぶらで。


「おい! 委員長!!」


あまりに突然の事に皆があっけに取られる中、コウヤが立ち上がり、叫ぶ。

だが、彼女は振り返りもせず、そのまま部屋の外に出ていってしまった。


「なんだよ!! ワケわかんねぇ!!」


苛立つようにコウヤが大声を上げる。


そのコウヤの袖を、ソノカがチョンと引っ張る。


「多分……私達じゃダメ、だから…… コウヤ君……おねがい……」


「だからさ、何がどうなってんのか説明して……」


「きっと……コウヤ君なら…… 何も知らないままで、いい。

追いかけて!」


言葉の意味が分からず、一瞬きょとんとするコウヤ。

だが、それも一瞬。


「あったり前だ!」


コウヤもまた、カナリが出ていったドアに向かって、走り始める。





二人が出ていった後、残された五人の間には、どうしたものか、何から話したものかと思い悩み、気まずい空気だけが流れていた。


「じゃ、部外者のお姉さんから、いいかしら」


口火を切ったのはマヤだった。


「三年前の事件で、逮捕されたのがクラガ君の父親で、被害に遭ったのがカナリちゃんの家……って事でいいのね?」


「はい……」


ソノカは、小さく頷く。








Windowsの子供向け有害性フィルタ設定っていつ頃からあったんだっけ……

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