84:選ばれし者
新たな作戦に合わせ、「全てを託す者」の選定が必要となり……
84:選ばれし者
四日後。
三層の最終防衛ライン、101階が陥落する。
現在、推定される+10ポーション総数は約9000個。
予定通りに決戦は見送られ、三層の戦いは終わった。
第二層が終わるのが先か、ポーションが溜まるのが先か……
本当の戦いは、ここからだ。
『で、候補は三人に絞られたって?』
『立候補五名のうち、明らかにレベル不足の二名を除いて、三名ね』
ロビーで候補者のチェックを終えて戻ってきたキツネは、ボイスチャットでムラマサ達に結果を報告していた。
ポーションを集中する相手として相応しいのは、対単体最高ダメージを叩き出せるサムライの使い手。
インフェルノダンジョン第二層到達メンバーの中から、最強のサムライを選抜する必要があった。
『一人目、KIRISAKI_MARU。レベル334。
堅実なプレイヤーで、装備もレベルも十分。
ただし、予定日に参戦可能かどうか不明』
『ああ、それはつらぬき丸のサブキャラだ!
あえて二層に留まってくれてたんだな……』
334はレベル的には十分三層に行ける数字だが、作戦に合わせてくれたのだろう。
サブキャラでもこのレベルまで持ってこれるというのは、流石ベテランプレイヤーと言ったところか。
『二人目、OGRE_SLASH。レベル319。
レベルはやや落ちるけど、装備は一番充実してるわね。
投げ武器の厳選もしてるみたい。
こちらも仕事の都合で、当日参戦の確約は取れて無いわ』
『装備はこちらで融通出来るから、その努力に意味は無いな……
予めその事も告知しておくべきだったか』
サムライ用の最強の投げ武器「村正」と「正宗」は、要求レベルこそ300止まりだが、三層でも二層でも手に入らない最高級品。
これらを用意するのはムラマサ達の仕事だ。
『三人目、KYOMUGOROSHI。レベル301。
レベルは一番低いけど、熱意は一番高いわね。
毎日長時間プレイしてて、何時集合であろうと必ず出撃するって』
『予定が狂わないのはありがたいが、そのレベルではちょっとなぁ。
33レベルの差は流石に……』
『それがね…… 名前を見ても分かるように、作戦に合わせてキャラ作って来たって言うのよ、この人』
『半月で、レベル301だと?!』
『経験者に聞いてみたけど、ずっとBOT走らせとけば不可能ではないって』
『確かに、それは一番の熱意だな』
+10ポーション用の周回プレイのため、BOT利用はますます盛んになっていて、レベリング用のBOTも複数配布されている。
その最新のツールを使い、24時間ゲームを起動し続け、ようやく可能となる速度、とのことだが……
手段を選ばず、虚無を殺すためだけに全力を尽くす姿勢。
半月で育てたと言うのが嘘で無いのなら、必ず出撃すると言うのも空約束では無いだろう。
こいつは、本気だ。
『第二層が陥落するまで、約半月。
そのままのペースでレベルを上げて来たら、彼が一番の候補になると思うワケ』
『よし…… なら、まずは仮決めだな』
『ブッチーも山田マンもそのつもりみたい。
他のみんなにも相談してから、マジメイジに伝えとくわ』
『死亡バグの方も忘れずに!』
『分かってますって!』
対虚無戦も長期化してしまい、四層の面々はなかなかメンツが揃わなくなっていた事もあり、連絡を取るのが遅れがちだった。
足繁く通うムラマサ達で大体の事を決め、後は事後承諾のようになってしまうのも仕方のない事だった。
第三層のプレイヤーの多くがスレッドに顔を出すことすら稀になってしまった現状、リーダーシップを求められるのは、やはりトップランカー達。
虚無足止め作戦に駆り出される事も無い彼らが、作戦を取り仕切り、様々な雑務を請け負っている。
ムラマサも自身の仕事がある中、懸命に下準備を行っていたが、やはり限界はある。
連絡の取り回し等々、常駐出来るキツネ一人に負担が行っている状態だった。
プレイヤーデータの増加に伴い、新たな不具合も幾つか生まれているが、それら問題点の告知も、忘れてはいけない仕事だ。
今回新たに見つかった問題は、死亡時ペナルティのバグである。
所持金がどれだけ失われるかの設定が壊れたらしく、一度の死亡で全財産を失う状態になっている。
ますます、インフェルノダンジョンで戦うリスクは高くなり、挑戦しようとする者は減っていくだろう。
現状では、士気の高さ、意欲の高さが候補者に一番求められる資質になるのかもしれない。
『候補者のハンドルネームって、分かってるのかな?』
『ええ。虚無殺し君の名前は、通称「期待の新人」。
ハンドルネームは改めて、今度から「クラガ11S5」って名乗るそうよ』
『ああ! あいつか!』
ムラマサはその意欲の高さに納得する。
ブッチーが目をかけていた期待の新人だ。
決戦に合わせてダークナイトを捨て、わざわざサムライを育て直して来るとは、本当に大したものだ。
他のトップランカー達も、判断に賛同。
wiki上に告知が行われ、三名候補の名前が告知される。
ハンドルネーム、クラガ11S5。
キャラクター名、KYOMUGIROSHI。
「11S5って……
11才小5!? ぜってーあのクラガじゃんか!!」
トップランカーに一目置かれる、期待の新人……
コウヤ達がその正体にようやく気付いたのは、この時であった。
今更ですが、アルファベットを全角表記すると、読みづらいですかね……?




