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81:3つ目の発見

山田マン達が見つけた「二つ目の発見」、そしてその数日後に見つかった新たな発見とは、一体?!

81:3つ目の発見





彼らは、wikiの掲示板に書き込まれた内容を見て、また、大きな溜息をつく事になる。


「あーっ! もう見つかったかぁ!」


「そりゃまあ、誰かは気付くでしょうけど…… 早かったですね、こりゃ」



山田マンとサイバラが見つけたもう一つの事実とは、「難易度設定の崩壊」である。


が、しかし、難易度設定が消滅してしまったのは、ストーリーモードのみ。

肝心のインフェルノダンジョンの難易度設定は未だ健在。

ムラマサ達が三層に戻って虚無を追いかける事は出来ない。


これ以上ぬかよろこびに近い発見報告を続けると、ただでさえ萎えきってしまったプレイヤーの戦意を余計に失わせる事にもなりかねないと、山田マン達はこの難易度崩壊の事実を発見した後も発表を控え、公表を後回しにする事にしていた。

が、山田マン達が知らなかっただけで、実際にはこれは新たに発生した訳ではなく、かなり前から起きていた不具合だった。

誰かが気付くのは時間の問題だったのである。


「見つけたのは、最近ちょっと話題になってた期待の新人くんですか」


掲示板に発見を書き込んだのは、クラガと言う新人プレイヤーだ。

難易度を越えられるという事実には、インフェルノで遊ぶ事が当たり前になっている玄人勢より、新人の方が気付きやすかったのかもしれない。


「あーもう、余計な事書き込んでくれたなぁ……」


「ようやく役に立つバグが起きてくれたかと思ったらこれですもんねぇ……

システムに沿わない使い方をすると、どこでどんな異常が出るか分かったもんじゃないですし」


かつて、本家マジホリでは、高レベルプレイヤーが引率して、あっという間にストーリーを終わらせるプレイが横行していた。

そういう「楽」は出来ないようにしようとMOD開発時に設定を変更し、会話とトレードのみロビーで可能にするという調整に落ち着いた経緯がある。

難易度設定を無視したままプレイをしていれば、不正行為としてキャラデータの凍結が行われたりはしないかという心配もある。

彼らは、未だシステムを把握していないままなのだ。



「と言って、僕らでどうにか出来る訳でもないですからね……」


「ああ。俺の方もそろそろ仕事に戻らないといけないし……」


今からシステムに手を入れるような余裕は無い。

たまたま有識者の手を借りる事が出来たから、定期メンテナンスの停止設定だけはいち早く実現出来たが、彼らはズブの素人なのだ。

そんな彼らが、生活を犠牲にしてまで、必死に力を尽くし、ようやく二つの事実を発見した。

そろそろ仕事やバイトを犠牲にするのも限界。

これからは、もっと解析の速度が落ちる事になるだろう。


「誰か助けに来てくんないかなぁ……」


サイバラは、また、今日何度目かも分からない溜息をつく。


先は遠く、見通しは暗い。





虚無が第四層を突破し、戦いが第三層に入ってから、一週間が過ぎた。


第三層のプレイヤーも虚無の足止め作戦を続けてはいたが、いかんせんその効果は薄く、虚無の進行も元の速度……一日に2~3階進行……に戻っていた。

実力と経験の不足したプレイヤー達の無謀な挑戦も幾度かあり、さらに三名のデータロスト犠牲者も出していた。


山田マンとサイバラはカノザキのマンションから自宅に戻り、日々の生活の傍らの解析作業となって、その作業速度は大きく落ちている。

彼らは現在も虚無のデータの本体を発見出来ずにいて、そろそろ諦めて破損したデータの修復を優先すべきではないかという話にもなっていた。

根本の原因を究明する前の対処療法ではあるが、いつまでも糸口の掴めないまま無駄に時間を使うよりかは、出来る事をした方がいいのでは、という判断だ。

その解析の途上、もしもプレイヤーデータの削除が実現すれば、それで問題の根本は解決する。

この方針変更は掲示板上でも強く支持されていた。


一方で、そんな二人の苦悩に対し、苛立ちを抱えている者もいた。


ユウリである。


流石の秀才も、所詮は小学五年生。

自力でのデータ解析は一行に進まず、父の手助けを借りずにはいられなかったのだが、父も小さな会社とは言え、社長として忙しい身であり、あまり多くの時間を割く訳にはいかなかった。


父が本気で作業を手伝ってくれれば、もっと早く根本の解決が可能になるだろうに、と、彼は苛立ちを募らせていたのだ。


本当は、サーバー管理やシステム業務プログラムに詳しいだけで、父がゲームのソースコード解析に長けている訳では無かったのだが、ユウリにはまだ、それだけの理解は無い。

いつも仕事で忙しく、家で兄妹に構ってくれる事が少ない父であったから、その日頃の不満から、ユウリは何かにつけ、とかく父に対して失望しやすくなっていた。


もうしばらくすれば、彼も六年生。

コウヤと一緒にいられる時間は、あと一年程度しかない。

それなのに、せっかくのゲーム会がこんな形でメチャクチャにされて終わるなんて……


ならば、僕が解決してみせる。


その覚悟から、彼はゲームプログラミングの勉強に没頭し始めていた。

それだけでなく、サーバー構築、マジホリ本来のゲームシステム、訴訟以降のシステムの変更、等々、様々な角度から知識を深めていった。


「お兄ちゃーん! ねー、お兄ちゃんたらー! 聞いてるー!」


そうしてマジホリ、及び虚無の調査に没頭していくうち、ユウリもまた父のように、仲間に対して素っ気ない人間になりつつあった。


「あ、ああ…… ごめん、聞いてなかった。どうしたんだ?」


妹の声に気付き、我に返るユウリ。

ユウイはドルイドソロで戦う事に行き詰まってアドバイスを求めているようだ。

難易度インフェルノに入って数日経つが、やはり難易度の上昇は生半可ではなく、定時のプレイ以外の時間も使い、各自好きに鍛えて定時の協力プレイに備える、という方式に既に変更している。

お陰でトレハンも進み、装備も充実してきてはいるようだが……

どれどれ、とユウイのステータス画面やスキル構成を確認してみる。


「うーん…… 今まで召喚に頼って来た分、そちらに回したスキルポイントの分だけ、火力不足になっているんだろうな」


「でも、振り直しのペナルティ大きいんでしょ?」


「それに、ソロでは厳しいと言っても、パーティープレイならデコイ召喚は損害軽減に大きく貢献してくれる訳だし、振り直す前によくよく考えないとな」


「そうなんだよねー 悩んじゃう」


「装備の方ももう少し……」


と、ユウリはある事に気付く


「あれ? ユウイ、お前、魔剣なんて持っていたっけ?」


ユウイの手荷物枠(インベントリ)に、イベントアイテムである「邪神の祭剣」が入れられている。

キモさ最上級のエリア「蟲の巣窟」に行かなければ作れないクラフトアイテムだ。

ユウイが持っているのはおかしい。


「ははーん、そうか、さてはコウヤに褒められようと思って、苦手克服しに行ってきたんだな?」


丁度、インフェルノ攻略もアクト2に入った所で、細い一本道が多い巣窟MAPはソロで挑むのにも向いている。

鍛え直すには良い判断かもしれない。


「そんな事してないよ?

画面写真見ただけでウェーッてなっちゃったもん。絶対入らないよあんなトコ」


「いや、待て。じゃあなんで、パーツを集めないと作れないこの剣が……」


「うーん…… どうしてだっけ…… あっ! ああ!

それ、誰かが捨ててったみたいで、なんとなく拾っちゃったってだけだよ」


「いや、だから、それも……」


ユウリの頭の中で、電流が走るような感覚が発生する。


「ユウイ、お前…… 偉いぞ!!」


「えっ?! 何? 何!?」


驚くユウイをそのままに、彼女のノートパソコンを操作し、所持品を確認する。


「やっぱり! やっぱりだ!!」


通常なら、他人とトレードしたり、捨てる事も出来ない、イベントアイテム。

そんなイベントアイテムの一つ、クラフトツールである「ミスティカルキューブ」。

それを、床の上に捨てる事が出来てしまった。


「ちょっと! なんで一番大事なアイテム捨ててるのー!」


慌てて兄の手からマウスを取り返し、地面に落ちたキューブを拾う。


「兄さん、閃いたよ。お前のお陰で!」


憤るユウイの頭を、力強くクシャクシャに撫で回すユウリ。

何が何やら理解できず、迷惑そうな顔をするユウイ。


「急いでアクト2をクリアしないと…… いや、いっそ新キャラを作った方が……」


「説明しなさいよこらー!」




ユウリは自室に駆け足で戻ってしまい、それから数時間出てこなかった。



ユウリも、妹と話す時にはいつもの丁寧語から、兄貴らしい口調に変わります。

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