82:虚無の倒し方
ユウリは新たに発見した事実を、トップランカー達に伝えに行くのだが……
82:虚無の倒し方
ユウリは自分で新キャラを作成し、「その方法」の実効性を確認。
その後すぐ、この「問題点のある朗報」を伝えるべく、父が受け取っていた「招待アドレス」を使い、トップランカー達のチャットルームへと加わった。
:キュウリ
:というワケで、この方法なら確実に虚無を倒せると思うんです
:リスクもあるので、実践前にここに相談に来たのですが
:どうでしょうか
流石に本名で参加するのは躊躇われたため、ユウリは新たにハンドルネーム「キュウリ」を名乗った。
マイキャラの射手のキャラ名「シャドウ丸」が以前カナリに失笑された事から、使用を躊躇し、笑いを取りに行ったユウリであった。
:ブッチー
:どこの誰かと思ったが、いい判断じゃねーか
:合格だな
:ムラマサ
:ああ よく一人で気付いたもんだ
:迂闊さも無い
その時チャットにいたのは、キツネっち、ムラマサ、ブッチーの三名。
が、三人とも驚いた様子はない。
彼らは、この方法に既に気付いていたのか。
それもそうか。
この方法は、迂闊に実行に移す訳には行かない物……
公表を手控えるのも当然の事と言える。
:ブッチー
:おっしゃる通りで、リスクは高ぇ
:オレも三日ほど前に気付いて、相談して、さあどうするかって丁度悩んでた所でな
:キュウリ
:やるなら、早い内から準備を始めないと、間に合わないですよね
:キツネっち
:ええ
:だから、内々にはもう準備を始めていて、溜めてるトコ
:問題は、誰に託すのか、と、どこで投入するのか、よ
ユウリは、なるほど、と納得する。
やはり、この人達はトップランカーと呼ばれるだけの事はある、と。
:ブッチー
:アイテム管理の設定値がブッ壊れてんだろうな
:気付いたらキューブが無くなっててビビッたぜ
ブッチーが四層最後の決戦で虚無に向かって手当たり次第、所持品を投げ続けていた時、本来投げられない物まで投げてしまっていた。
長時間の戦闘で消費し尽くしたポーションをクラフトで補充しようとして、合成機であるキューブが消えている事に気付いたブッチーは、なぜ消えるはずの無い物が消えてしまったのかの原因を考え、悩み、虚無との最後の戦いの動画を見返し、ようやく「投げた」という事実に気付いた。
あまりに大量のアイテムを投げつけてしまったがため、地面に大量の武器が散乱し、投げられないはずの物がその中に混じっている事が分からない状態になっていたのが、この気付きが遅れた原因の一つだ。
もう一つ、最後の希望が断たれた、間に合わなかった、という絶望から、最後の戦いを動画で見返す者が少なかったという点も、気付き遅れた原因になっていたのであろう。
緊張の糸が断たれ、諦めの空気が漂う中、最早虚無との戦いに以前ほどの熱気は無かったのだから。
それから、ブッチーもまたユウリと同じ結論に至る。
この方法なら虚無を確実に倒せる、と。
そして、相談を受けたトップランカーの面々はサイバラを交えて作戦会議を行い、即時公表を差し控えるという結論に至った。
:キツネっち
:三層の最後で終わらせるのが理想的だけど、準備期間が足りない気もするのよね
:ムラマサ
:準備が長ければ長いほど、システムに及ぼすダメージも大きくなるだろうが……
:ブッチー
:そんなこんなで悩んじまって、どうすりゃいいか決断出来ずにいるってトコなんだわ
:情けない事にな
ユウリもまた、どう答えればいいか、言葉が見つからず、沈黙を続けてしまう。
もしこれで新たに致命的な問題が発生してしまうと、解析を続けている山田マンやサイバラにも迷惑が掛かる。
でも……
:キュウリ
:でも……
:ブッチー
:そう
:でも、だ
:キュウリ
:これしかない
:ブッチー
:ああ 俺もそっち派だ
:ムラマサ
:手間暇労力を考えると、うんざりもしてしまうが……
:まあ、やるしか無いよな、こうなったら
:キツネっち
:これ以上山田くんに負担を掛けるのは気が進まないけど……
:こうして第三者が気付いちゃうんだから、もういつどこで誰が勝手におっ始めちゃうか分からない、と
:それなら、私達でコントロールしやすい今のうちに、形を整えて発表するのがいいんでしょうね
言葉使いから、二人が消極的な賛成である事は分かる。
だが、それでも……
もっと強く主張したい気持ちをグッと抑え、ユウリは言葉を選んで入力する。
:キュウリ
:じゃあ…… 始めてしまって、いいんでしょうか?
:キツネっち
:最後に、山田マンとサイバラさんに許可を貰ってからにしましょう
:こうなったらあっちも決断を先延ばしには出来ないでしょうから
:キュウリ
:なんだかすいません、僕が急がせてしまったみたいで
:ムラマサ
:いいんだよ
:議論も堂々巡りになっていたところだし、君が来てくれたお陰で決断できたようなもんだ
:ブッチー
:そうそう 後は俺達にまかせて……って話じゃなくなっちまってるし、密室会議はもう終わりだ
:もう文面出来てんだろ?
:キツネっち
:まぁね
そして、キツネはマジメイジに連絡し、wiki上での告知を依頼。
同時に掲示板上にも「その方法」を書き込み、広く知らしめる。
くれぐれも先走らないように、と書き添えて……
751 キツネっち ****/**/**(月) 20:12:38.28
虚無撃破の100万ダメージ達成方法が見つかりました
・イベントアイテムのトレード制限設定が虚無バグで消失しています
・アクト3クエスト報酬の ダメージ+10ポーション を他人に譲渡出来ます
・これを一人のプレイヤーに集中する事で、百万ダメージが実現可能
・新キャラを大量に作成する事になるため、新たなバグ発生のリスクを伴います
・誰に集中するか、どこを決戦の場所とするか、等、熟議を要します
・今はまだ使わず、とにかくポーションを貯め込む事を優先しましょう
・繰り返します リスクを伴うため、無計画な利用はやめましょう
「リスク! ハッ! 知った事かよ!!」
その書き込みを見て、当然、クラガはこういう反応を見せる。
既に彼が新たに作り直したサムライのレベルは103。
二日間仮病で学校を休んでまで、八台のPCを使って8キャラ同時レベリングを行う今の彼にとっては、そのような警告は、「この手を使え」と囁かれているにも等しい。
クラガの妄執は、どこまでも暴走していく。
更新遅れて申し訳ありません。
61話ぶりの伏線改修です。




