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75/104

75:決戦前夜

いよいよ阻止限界点が間近に迫り、トップランカー達が集結するのだが……

75:決戦前夜



土曜日。

虚無はいよいよ152階に到達。

明日、トップランカー達は最後の決戦を仕掛ける。


サイバラ&山田マンは戦闘システムや、ダメージ計算の仕組みを解析中だが、残念ながら明日までに成果が出る事は無いだろう。

勝算、勝機という物が存在しないまま、どう決戦に挑むべきなのか、彼らの作戦会議は延々と続いていた。


現在、参戦可能なランカーは6名。


ムラマサ  :侍   レベル791

キツネっち :忍者  レベル779

ブッチー  :戦士  レベル753

マジメイジ :魔術師 レベル739

人形姫   :人形使いレベル703

一閃    :聖騎士 レベル700


山田マンは解析作業に集中するため、参加不可能。

この他、中堅勢で参戦の意思を示しているのが、以下の7名。


辻スミス :付与術士 レベル589

つらぬき丸:忍者   レベル514

発光大王子:君主   レベル500

軍団長ゴリ:魔獣使い レベル499

杜谷みみか:天使   レベル475

竜発破  :砲兵   レベル474

アルパン :砲兵   レベル468


この内、ゴリ、つらぬき丸、みみかの三人は現在も虚無の足止め作戦に参加しているため、この場にいない。


13名のうち、誰を八人の選抜メンバーとして編成し、どう戦うか。

それを明日の夕方までには決めてしまわなければならない。

夜遅くにはもう、151階は陥落する見込みだ。

欠席者を除く10人全員がMisscodeのチャットに集い、作戦会議を始める。


:ムラマサ

:まず最初に、これまで通り足止めを限界まで続けるか、それとも、別の何かを試すのか、どちらにするのかを決めよう


:キツネっち

:多数決、取る?


:ムラマサ

:そうだな。誰かが音頭を取って決めるより、その方が後腐れ無くていいだろう

:せっかくの機能、使おじゃないか

:いいよな?


:ブッチー

:任せる


:マジメイジ

:それで構わない


Misscodeのアンケート機能を使い、投票が行われる。

誰がどっちに票を投じたのかが分からない分、余計な気を使わなくて済むため、使い勝手がいい。


結果……


足止めの継続、2票、

その他の作戦、7票、

それに、棄権が1票となった。


:ムラマサ

:さあ、ここからが問題だ

:じゃあ、どう戦えばいいんだって話になる


虚無とは、ボスのデータの読み込みに失敗した結果生まれたバグであると目されている。

現在の所、全ての攻撃が通じず、有効な手は何も無い。

プレイヤーがゲーム内で何を行えば、虚無を倒す事が出来るのか……

それは、ゲームの仕様を熟知した廃プレイヤー達からしても、未だ答えを出せていなかった。


:ブッチー

:正攻法がダメってなら、いっそプレイヤーデータ自体を弄っちまえばいいんじゃないか?

:今からじゃ間に合わないかもしれねーけど、山田のヤツは現地に行ってるんだろ?


今、誰かが何とかしてくれるとすれば、それは山田マンでしか有り得ない。

何らかの解決策が見つかった時、最速でなんとかする事が出来るように、彼はカノザキのマンションに陣取り、現地でソースコードの解析を続けている。

山田マンに直接サーバー内のプレイヤーデータの書き換えを行ってもらい、チートを行って虚無に対抗するのはどうか、というのがブッチーの提案だ。


:キツネっち

:それは、山田くんが一番先に考えて、実験もしてみたけど……

:やっぱり、ゲームの枠に収まっていないデータ変化は、システムが見逃してくれないみたいでね

:変化を起こせるのは一瞬だけ

:数秒でキャラをBANされてしまうわ


:人形姫

:カベやキャバがやられた時、みたいに?


:キツネっち

:そう。山田くんもそう考えてるみたい

:虚無に手を出すと、何らかのデータ変動が発生し、プレイヤーがチートを行ったと判定されて、キャラが消されちゃうってワケ


:ムラマサ

:あの妙な間とCTD(クラッシュ)はそのせいか…


カベやVキャヴァリアーが虚無に殴りかかった際、死亡して町に戻され、そこから数秒を経てからゲームがクラッシュ、タイトル画面へと戻された。

あの僅かな猶予時間と不審なシステムの挙動は、キャラクターがBANされる際に発生するものと良く似ていた。

山田マンだけは過去の経験からその事に気付いていたが、それは、キツネ以外の誰にも話せない事だった。



:ブッチー

:でもよ、その数秒を使って、何かが出来るなら、俺はやっても構わないぜ


:ムラマサ

:おい!


:ブッチー

:どうせ、虚無のせいでもうマトモにRSを遊べねーんだ

:虚無を道連れに出来るなら、キャラが消えたって構わねえって話さ


:一閃

:もしも道連れに出来たとして、RSの修復が終わった後、自分のキャラクターが残っていなければ…


:マジメイジ

:いや、凍結解除の可能性も有るから…


キャラクターがゲームシステムから「不正」と判断され、キャラクターが消されても、そのデータは凍結されるだけで、実際にはファイルが削除されている訳ではない。

この事実は山田マンによって明かされ、現在wiki掲示板上で告知もされている。


:キツネっち

:あー、それは… 期待しない方が…


凍結解除の手段は今の所存在しない。

どのファイルをどう弄れば解除出来るのか、まだ解析が完了していない。

解析すべきファイルが今も無事残っているならまだいいが、もしそれが既に消滅してしまっていれば、故・カノザキ以外に凍結解除出来る者はいない事になる。

キツネはかいつまんでその辺りの事情を説明する。


:ブッチー

:終わりなら終わりで、別に構わねぇって

:もう疲れた、ここらで潮時、なんて考えてる野郎は、俺だけじゃねーだろ?


:辻スミス

:私なんか、実際引退済みでしたしね

:いいですよ。チートで何とか出来るなら、私もやります


:キツネっち

:その方法で何とか出来るなら、山田くんがもう何か思いついてる気はするけど…

:ま、それじゃ一応そのアイデアは送っときますか、っと


ただでさえ解析作業で忙しい山田に意見を求めるのは気が引けたが、決死のチート攻撃で何かが出来ないか、と、キツネは決死隊が結成された旨と共に彼に伝える。


:ムラマサ

:正直に言うが、俺はその作戦には乗れないぞ

:万が一、このデータが消えて、元に戻らないって事になったら…

:俺の十年が、全て消えて無くなるんだからな


:ブッチー

:分かってるって

:あくまで、やりたいヤツだけやればいい


:竜発破

:でも、チートするって言っても、どうすれば?

:数十万ダメージを出しても0にされるんじゃ、チートしたって無意味じゃ?


:ムラマサ

:その通りだ…


虚無。

あの日たまたまブッチーが呟いた言葉の、まさにその通り。

何もかも、自身に触れた物を無に帰してしまう、虚無。

そんな相手を倒すのは、例え全パラメーターを9999にしたところで不可能だろう。


何か、こちらも何か、ゲームの枠を越えた一手を思いつかなければ……


:キツネっち

:えっ……ちょっ……


:マジメイジ

:返事、来ました?


:人形姫

:山田、なんて?


:キツネっち

:山田じゃない!

:掲示板見て!



こうしてトップランカーが作戦会議に集まっている以上、こうなる事は予見して然るべきだったのではないだろうか。

そう、ムラマサは後に悔やむ事になる。



中堅勢六名による、虚無足止め部隊。


彼らが全滅した。






あれ? キツネのレベル設定今まで出てなかったんだっけ……

手元の設定まとめメモにも無いし、今回適当に決めました。

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