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72/104

72:臨戦態勢

残された時間は少ない。決心した山田マンは、行動を開始する。

72:臨戦態勢



:So, is this problem everything ok?

:Thank you very much.

:I appreciate your company so much.


キツネは機械翻訳で英文メールを返信。

確約は取れた。

このままソースコードを解析し、MODサーバー上で誰がどのような処置を行おうとも法的に問題がない、と、現在マジホリの全権利を有するバジリオン・エンターテイメント社に確認を取っていたのだ。

これは、ある種キツネが自身の推理に基づいて「カマをかけた」行為でもあったのだが、スムーズに話が進んだと言う事は、幸先良く、これが後に良い結果となり得る可能性を予感させてもいた。

この時間のない状況で、手間を掛けてまで下調べをした甲斐があるか、無いか、それはまだ分からないが……


:山田くん、GOサインよ

:やりたいように、なんでもやっちゃって!



そして、山田マンはサイバラに連絡を取る。

キツネの所持しているRSサーバー全データのコピー、それは既に受け取っている。

解析を始め、彼と密な連携を取るための、事前の打ち合わせだ。

今現在、キタガミと連絡が取れない以上、RSに関する裁量権……いや、「通すべき筋」は、カノザキの遺族とサイバラにある。


遺族とは既に話をしてきた。カノザキの両親は頭を下げた自分に、快く応じてくれた。

かつて、カノザキに絶大な迷惑を掛けた自分だ。これで許されたなどとは思うまい。

本当の罪滅ぼしは、これからの働き如何に掛かっている。

企業間の訴訟も、個人間の訴訟も、もう気にしなくていい。

あとは、やるだけ。

気を引き締め、全身全霊、全力を振るう決意を固める。

バイトもしばらく休ませてもらった。

覚悟は出来ている。後はサイバラに話をして、そこからが……決戦だ。







『お願いします! 俺もなんとか間に合わせたいんです!』


『無茶言うなよ。俺たちが出しゃばっていい状況じゃない事くらい分かるだろ?』


『二組の俺らが協力出来るとすれば、補給面くらいだって、スレにもあんだけ書いてあんだろが』


クラガは焦っていた。

インフェルノダンジョンも第一階層を突破し、第二階層に到達。

彼の暗黒騎士のレベルは既に142にも達していた。


腕の立つ面々の協力で、レベル不足ながらも一層を「突破させてもらえた」のは僥倖だった。

クラガと同じように、この先、四層で戦いが終わらなかった場合に間に合わせようと、必死にレベリングを行っている者もある程度いた。

熟練の経験者が、この先必要になりそうなサポート系や召喚系のサブキャラクターを育成し始めたりもしていた。

皆は競い合うようにしてレベルを上げ続け、ここまで必死に頑張ってきた。

中でも、クラガはランカーや中堅勢の間でも「期待の新人」と噂になるくらい、名の通った存在になった。


だがしかし、そんなクラガを持て囃し、貴重な装備を破格で融通してくれるような協力者達も、ここに来て様子が一変してしまった。


『今やるべき事は、俺達のレベル上げじゃないだろう? それくらい分かるだろ』


『あっ、ケンさん、集めといた応援物資、頼んますよ!』


『おうっ! 二組の気持ちは確かに受け取った!』


マジホリRSの全プレイヤーは、レベル帯に応じ、サーバー内に作られた四つの大部屋に割り振られる。

二組と言うのは、下から二番目、今現在クラガ達が割り振られているルームを現す。

150レベル辺りから、タイミング次第では一つ上の三組に割り振られるようになる。

そういう、両ルームを行き来出来るプレイヤーを介して、下から上へと補給物資を輸送する事が出来るのだ。

資金、ポーション、鉱石、等々…… 召喚BOTをフル稼働させている四層・第四ルームのプレイヤー達が、消耗品として日々大量に消費し続けているそれらの物資を、多くの下層プレイヤーが率先して集め、届けている。


『お前もいい加減夢見てねーで、今出来る事で貢献しとけよ……

そういう態度の悪さ、後々まで語り継がれちまうぞ?』


ゲーム史上稀に見る珍事。

既にwiki内では「祭り」を越え、「伝説」とまで言われ始めている。

その生きた伝説が現在進行系で進む中、恥ずかしくない行いをしよう、少しでも出来る事をしようと、皆が一致団結し、トップランカー達の戦いを支えている。

そんな中、自分の経験値や装備の事しか考えていないクラガは、非協力的な自己中、と見られる事になる。


(クソッ…… 結局、俺が追いつきそうになったから……

格下じゃなくなったから、もうお恵みの時間は終わりって事かよ!)


だがしかし、クラガはそれを曲解する。

優秀すぎる新人が、出る杭として打たれ始めたのだと、被害者意識をもって誤解する。


『そっすか、もういいっすわ』


素っ気なく書き込み、ダンジョンへ潜る。

そうした心の内の歪みは、口調の変化となって現れる。

今まで下手に出て、丁寧さを心がけていた分、余計に目立ち、鼻につく。


そういった変化は、本人以上に、他人からよく気付かれる。


『あいつ、ウゼェ』


『けっきょく期待の新人もクレクレ乞食くんだったって事かよ、ガッカリだな』


狭い世界、噂話の伝搬は、早い。







作者も英語力があるワケではないので、機械翻訳頼みです……

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