71:明日のための今
四層崩壊が間近に迫る中、追い詰められているのはトップランカー達だけで無かった。
71:明日のための今
171 ムラマサ ****/**/**(木) 18:18:27.35
だからと言って、やる事は変わらない
そうだろう? みんな!
今すぐには解決しない事が分かり、虚無対策スレッドには諦めの空気が漂っていた。
虚無が四層を突破するまで、あと4~5日ほど。
おそらく、ソースコードの解析は間に合わないだろう。
だが、彼らは今まで通り足止めを続けるしかない。
他に出来ることは無いのだから。
ムラマサ、ブッチー、マジメイジ、一閃達の護衛により、今日も召喚BOT作戦は敢行される。
悲壮な決意と共に、24時間ノンストップの戦いが淡々と継続して行く……
「僕達はこのまま遊び続けていていいのだろうか」
ゲームの崩壊が迫る中、いつものように集まる五人。そんな中、ユウリはボイスチャットで胸の内を吐露。
「このまま続けたとして、いつまで遊べるか分からない訳でもありますわよね……」
それはカナリにも理解できる物だった。
忙しい日々の合間、貴重な時間を浪費してまでマジホリを続けるべきなのかどうか、悩み始めていた。
「うーん……」
思ってもみなかった、と言うような、怪訝そうなコウヤの声。
「それって、逆じゃねーか?」
そのコウヤの返事は、意外な程に軽い。
「前にも似たような話しなかったっけ?
楽しまなきゃもったいないって話さ」
ユウリはハッとする。
何を今さら、だ。
コウヤは、いつも通り「楽しむこと」を何より優先する人間じゃないか。
「もしみんなと一緒に遊べる時間が残り少ないのなら、その時間を楽しむ事こそが大切。
続ける意味とか、時間の無駄とか言い出せば、ゲームをする事自体に意味がない。
楽しむためにこそゲームを遊ぶのだから…… って、そういう事ですよね? コウヤくん」
「うん、そんな感じな!」
「盛らなくていいわよ、ユウくん」
「まあ、そういう考え方もあるという事ですわね……」
時間を浪費する意味や損得で物を言うのなら、友と共に居ることこそを大事にする……
ある意味、死生観や人生にも通ずるものとカナリは気付かされる。
自分の中にある、友情や愛情に飢えた部分に、その考え方が腑に落ちて行く。
当人にその自覚は無いのだが、その考え方は彼女にある種の落ち着きを与えるものであった。
「私だって、もちろんやる気バンゼンだよー!」
初めからコウヤと一緒にいたいだけでゲームを始めたユウイにとっては、言わずもがなの事である。
結局は、マジホリがどれだけ名作であるかに関係なく、彼ら、彼女らにとっては、誰と一緒にプレイするのかが最も大きな要素なのだ。
だから、最後が来ると言うのなら、最後までそれを貫くのがコウヤの流儀であり、彼らのやり方。
急がず、慌てず、あえて今まで通りに、いつものプレイを続ける。
そして、その日コウヤ達はベリーハードのアクト4ボス・魔王デアゴーンを撃破し、アクト5へと到達した。
「があぁぁぁぁぁぁーーーーっ!! ダメだあぁぁぁぁ!!」
サイバラは机をバンと叩き、頭を抱えて仰け反る。
皆の最後の希望、RSが終わるか否かは、自分達の解析に掛かっている。
いつ何が起きてゲームが崩壊するかも分からないというのに、その上、RS最大の魅力とも言えるインフェルノダンジョン最奥・第四階層は、あと数日で攻略不可能になってしまう。
時間が無い。
時間が無いのに、人手も無い。
元グラフィッカーが連れてきた、あの部外者の協力を得られたのは何よりの僥倖だったが、彼には彼の仕事があり、これ以上彼の手を借りる訳にはいかない。
後は、ソースを理解出来る過去にMOD開発に携わった者達が戻って来てくれる事くらいしか期待できない。
つまり、今は自分一人でなんとかしなければならないのだ。
「クソッ…… 誰だ、こんなMOD作ったヤツは……」
思わず悪態も付きたくなる。それほどにマジホリRSのソースコードはデタラメだった。
素人目にも分かる程、洗練されず、場当たりで、力技な、言わば「文系」が強引に仕上げた代物。
いわゆる、スパゲッティコードと言われる部類の難物だ。
それでも、サイバラは根気強くソースコードの戦闘システムやボス生成に関わる部分を調べ続け、なんとかして虚無の正体を探ろうと奮闘していた。
まず何より求められているのは、虚無の排除だ。
システムのどこかに潜んでいる虚無のデータを削除さえしてしまえば、安心して全体のチェックと修復に取り掛かれる。
そのために必死になってシステム全体を洗い直しているのだが……
「ハァ……」
大きく長い溜息が出る。
おおよそ、可能性があると思われる全てのファイルをチェックした。
しかし、それらしいデータは全く見つからない。
何がどうなれば、追加ボスモンスターのファイルを使わず、あのような存在を生み出す事が出来るのか……
その原理を究明しようにも、複雑怪奇なソースコードが壁となって立ちはだかる。
「あいつがいてくれれば全部片付くのに…… 何やってんだよ畜生……」
その複雑怪奇なソースコードを、当時突貫工事でやっつけた、訴訟で死にかけたマジホリを生き返らせた立役者、キタガミ。
このMODを作った張本人が協力しさえしてくれれば、誰もこんな苦労しなくて済む。
だが、彼は今日本にはおらず、今現在マジホリ販売の権利を有しているアメリカのゲーム会社、「バジリオン・エンターテイメント」社で忙しい毎日を過ごしている。
洋ゲー、ハクスラの本場で、今もハクスラオンラインRPGを作り続けているのだ。
その仕事を投げ出してこちらの解析に協力してくれと頼むのも、無理な話ではある。
だが、そもそものRSを作った本人が、この期に及んで知らぬ存ぜぬで連絡一つ寄越して来ないというのは、なんとも腹立たしい現実であった。
「誰か、助けてくれ……」
自分だって仕事があるのに。
俺には無理だ、と、サイバラはストレスと疲労で一杯の頭をユサユサと振り回す。
これ以上生活を犠牲にする事は出来ない。
もう、過去のゲームだ。
俺には…… いや、誰にだって、未来がある……
なぜこんな昔のゲームに、いつまでも引きずられなければならないんだ……
その日、山田マン……本名、ミホロ……彼が訪れたのは、カノザキのマンションではなかった。
ピンポーン……
インターホンを押し、家の中から現れたのは、カノザキの両親。
山田マンは、深く頭を下げ、まずは謝罪をする。
許しを得られなければ、前には進めない。
前に進むために、通すべき筋を通す。
過去と決別し、未来を守るため、必要な禊だった。
前にウォーロック・コースト社に言及したのってドコだっけ… 設定矛盾を起こしてないかチェックしないと……
※追記※ 以前に言及したのはフリゲートゲームスでした。今回登場させたウォーロック社は元ネタ事情を考慮してバジリオンに社名変更しました(編集済み)。




