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69:消滅の危機

コウヤの父、ユウリの父、キツネ、サイバラの四名は、いよいよマジホリRSのサーバーを調べ始めるのだが……

69:消滅の危機




「やあ、しばらくぶりですな」


「こんにちわ。いつも息子がご迷惑をおかけして……」


「いえいえ、こちらこそ! 娘がお世話になって……」


コウヤの父とユウリの父は待ち合わせて合流し、キツネ達の待つ駅へと向かう。。

道中は息子と娘の微笑ましい恋話で盛り上がり、このまま上手く行ってほしいものだと笑い合う。



「お、来た来た、こっちですよ~」


「どうも、始めまして。本日はよろしくお願いします」


JRの駅でキツネ、サイバラと合流。


「すみませんね、ホント。僕がもっと勉強していれば、ご足労願う事も無かったのでしょうけれど……」


「いえいえ、息子もRSのプレイヤーでしてね。面白い案件ですし、私も楽しみにしています」


ユウリ父は子供のような笑顔でサイバラに応じる。

あの子にしてこの親あり。彼もまた、こういったマニアックな事柄には興味津々でやる気を出すタイプだった。

サイバラから概要を聞きつつ、遺族の待つカノザキ宅へと向かった。




「この度はご愁傷さまでした…… もう少し早く私も来れていればと……」


「いえ、いえ、実際に面識のあった方々では無いのですし……」


カノザキ宅に着き、サイバラは彼の両親と挨拶を交わす。

狭いマンションの一室に六人の大人が同席すると流石に手狭であり、作業に支障も出るであろうと、遺族の二人は全てをサイバラ達に任せる事にし、マンションの管理人室で待つ事になった。

二人は、息子の作ったゲームが失われ、その愛好家が居続けてくれる場所が失われる事を恐れており、協力は惜しまないと言ってくれた。必要ならば資金援助も惜しまないとの事だ。

当面は必要無いが、もしもサーバーマシンを新しくする必要が出てきたなら、その時は好意に甘える事になるだろう。


早速、ユウリの父はRSが稼働しているサーバーの確認を始める。

同時に、サイバラがバックアップデータの確認を開始。キツネとコウヤの父は作業行程の記録を行う。

何せ、部外者がよく分からないシステムに手を出そうと言うのだから、慎重にならざるを得ない。

一つ一つ、細心の注意を払って確認して行く。


「とにもかくにも、まずはサーバーを止め、バックアップデータの確保、ですかねぇ」


「ええ、僕もこれくらいなら、と思って今確認を……」


と、サイバラの手が止まる。


「すみません、こっち見てもらえますか。サーバーの停止は待ってください」


ユウリの父はメインサーバーの調査を止め、サイバラの方に目を移す。


「これ……は……」


「やっぱり、ですよね?」


コウヤの父やキツネにはよく分からないのだが、画面上ではファイルを開いたり閉じたりする操作が慌ただしく行なわれている。

が、開かれたファイルの中身は……


「消えてますね。バックアップデータ」


バックアップの中身から、プレイヤーデータや追加ボスデータの確認を繰り返し行っているのだが、どのフォルダの中身も、同様の状態。

複数あるバックアップのどれを見ても同じ。

ファイルが消えている訳ではない。全てのファイルに保存されている情報が、全て空白になっているのだ。


「虚無……」


ビデオカメラを構えたコウヤの父が、静かに呟く。


ゲーム内のボス一体がここまでの事態を引き起こせるものだろうか?

だが、この状況が無関係とも思えない。

もう、「隠しボス」などと言う段階ではなく、これはもうハッキング、クラッキングに類する危機であると認識すべきだ。


「サイバラさん、確かRSって今、メンテ自動でやってますよね?」


「ええ。そうです…… これは、マズいかもしれません」


コウヤの父がサイバラに話しかけ、彼は一層表情を険しくする。


「サーバーを止める前に一度バックアップを取り、そこから復旧・再起動……

バックアップが機能していない今、サーバーを止めたらどうなってしまうのか……」


「妙なシステムになっているんですね」


「素人三人……いえ、僕は関わっていませんから、二人……素人二人が間に合わせで作ったシステムですから、きっとプロの方から見ればデタラメなのでしょう。

ん……これ、見てください。更新日時」


「あっ……」


キツネは、サイバラが何を言いたいのか理解する。


バックアップは四つ存在する。週一回のメンテナンスで一つずつ更新され、約一ヶ月分は遡ってデータを巻き戻せるように出来ている。

そのバックアップされたファイルが空白に書き換えられたと思われる更新日時は、全て火曜の午前五時台……つまり、昨日の朝なのである。


「定期メンテがバックアップを破壊した……のか?」


「なら、なぜ今までゲームに異変が出ていないんだ」


虚無が出現してからも、定期メンテナンスは今までどおり行なわれていた。


「えっと、待ってくれ。虚無が出てから、何週間過ぎてたっけ?」


「ははっ…… そのひらめき、ナイスよ…… ピッタリ、四週間……」


コウヤの父の質問に、キツネは呆然として返す。

サイバラとユウリの父は事態が飲み込めず、怪訝な顔になる。


「……どういう事です?」


「もしかすると、よ。あくまで仮定の話。

メンテの度に、バックアップが一つずつ死んで行ったのだとしたら……」


「虚無の仕業、ですか」


「そう言い切るには早いけど、タイミングとしては、ね」


キツネの推論に、ユウリの父も深刻な顔になる。

どこかのマニアが作った謎のモンスターの正体を探るつもりが、とんだ大事になったものだ。

もし犯人がただサーバーを破壊するだけなら、そのつもりなら、とっくに壊されていただろう。

だが、この事態を仕組んだ者は、極めて歩みの遅い死神をゲーム内に配置し、その進行と共にサーバーが死んで行くように、わざわざそう作った、という事になる。


「やっぱり、次のメンテが来たら全てが消えてしまう恐れは大きいですね。

猶予期間はあと6日間、なのか……」


サイバラは消え入りそうな声で呟く。


「いや、サーバーを止めなくても、システムに手を加える事は可能です。

定期メンテをやめてしまえば、来週で全てが終わる、という事態は回避できるでしょう」


「対処療法ですが、まずはそれから、ですね……」


サイバラとユウリの父は、今後の方針を話し合いながら、ソースコードの調査を開始する。


サーバー関係の知識はあるものの、完全に部外者。


マジホリの知識はあるものの、システムは完全に門外漢。


マジホリRSの命運は、この二人の手に委ねられていた……




本職の目で見て、描写におかしい部分があるかもしれませんが、「アマチュアが間に合わせで作ったものだから」という設定で逃げを打つ事にします(汗)

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