67:力を合わせて
キツネはいよいよRS開発者当人と連絡を取る事に成功するのだが……
67:力を合わせて
『またかよ! ダセぇな!』
『すんません!』
ウスデの戦闘工兵が背後から出現した敵に倒され、前方から戻ってきたクラガの暗黒騎士が蘇生する。
十秒経過する前に間に合えば、ペナルティ無しでその場で復活する事が出来る。
インフェルノのペナルティは経験値全損。ウスデはホッと胸をなでおろす。
やはり、クラガとのプレイは面白くない。
モジヤも、ウスデも、先日新人の育成を手伝った時の楽しさが忘れられないでいた。
こんな自分達でも、ゲームの中では女子と一緒に遊べるという、その嬉しさの余韻がまだ残っている。
だが、彼女達がパーティーを組んでくれたのは、自分達がクラスの嫌われ者の二人だと分かっていないからかもしれない。
結局、あの後、どのキャラが誰なのかは話さなかった。あの知らないおじさんの忠告通り、そうするのが一番だと考えたからだ。
正体を知られずに楽しく遊べたのも、そのお陰だと思っている。
クラガに対しても、彼が機嫌を損ねるのではないかと思い、他の皆と一緒にプレイした事は黙ったままだ。
『おら! 来るぞ! 壁立てろ!』
仲間のためにスキルを使うのと、ボスのためにスキルを使わされるのとでは、大きな違いがある。
「好きに遊べない」というのが、こんなにも苛立ちを募らせるものだったとは。
それでも彼らがクラガとのプレイをやめる事はない。
無論、それは他に誰も友人がいないから、ではあるが……
それ以上に、「自分達までクラガから離れたら、こいつはどうなってしまうのか」という恐怖の方が大きい。
きっと、暴れるのだろうな、誰彼かまわず喧嘩をふっかけて、また職員室に呼び出され、余計に立場を悪くするのだろうな、と、そんな光景が思い浮かぶ。
ウスデとモジヤは、まだマジホリに詳しいと言う訳ではない。
だから、そんなモヤモヤした思いの方が強く、異変に気付くことは無かった。
「もしもし? サイバラさんですか?」
キツネは、手に入れた連絡先にメールを打ち、すかさず電話を掛ける。
待ちに待った時がようやく訪れる。
電話の相手は、サイバラ。
マジホリRS開発中核メンバー三人のうち一人、バランス調整のバラさんだ。
RSの基礎を作ったキタガミ、オンライン周りを作ったカノザキ、この二人は、それぞれ自分の仕事が完成した時点で開発から離れているため、最後までRSを細かく調整していったサイバラこそ、最もよくマジホリRSを知る男、とも言える。
彼ならば、きっとザーバーをチェックして、異変の原因を突き止めてくれるだろう。
ここまでは順調だ。
RSサーバー管理人、カノザキ。その遺族に、カノザキの住むマンションの管理人が連絡。
遺族からの快い返答を受け、マンション管理人の仲介を経て、キツネと遺族とで連絡先を交換。
直接の打ち合わせを行い、サーバーマシンに手を出す事に了承を得られた。
だが、キツネ自身は「中身を調べられる人」ではない。
専門知識があり、RSの仕組み、ソースコードを理解出来る人間を探す必要があった。
遺族が回収したカノザキの遺品の中に、他の開発中核メンバー二名の連絡先があり、まず完璧にRSの中身を把握しているであろうカミさん、キタガミに連絡を取る。
だが、彼はアメリカのゲーム会社に引き抜かれ、現在日本にいない。
初期にソースコード解析に携わった人間が他にも数人存在するが、いずれも匿名で参加していたのみで、連絡は不能。
残るは、バラさんことサイバラのみとなる。
「いやぁ、まさかそんな事になっているとは……
すみません、僕がもっとサイトチェックしていれば良かったんですよね」
カノザキの遺族から一報を受け、サイバラは今、必死にwiki掲示板のログを辿っている所だった。
そう…… サイバラは虚無事件自体を知らなかったのだ。
あるいは、カミさん、バラさん、残る二名のどちらかが犯人ではないかと疑っていたキツネからすれば、肩透かしされた形である。
無論、彼が何も知らないフリをしているだけという可能性はあるが。
残る一人、カミさんがいよいよ怪しくなってくるのだが、今は犯人の追求より、先にやる事がある。
「でも…… これは、僕も専門じゃないですよ」
「っ!?」
サイバラもまた、必要な専門知識を持ち合わせていなかった。
彼はMODブーム当初のソース解析活動には参加せず、バランス調整に必要な知識しか持ち合わせていなかった。
「それでも、何の知識も無い私達よりかは……」
「ですね。いいですよ。コピーをください」
「コピー、ねぇ……」
現在のサーバーを一度止め、コピーを取って分析してもらう……
と言っても、キツネはサーバーの止め方、コピーのとり方も分からない。
キツネはその事も正直に打ち明け、伝える。
「貴方が来てくれるのが一番だけど、残り時間は少ないから……
まずはこちらで何とか、分かる人がいないか探してみます」
「じゃあ、僕は出来るだけ早くカノザキの家に行けるようにしますから、決まり次第メールしますね」
キツネはサイバラとの電話を終え、即座にパソコンに向き直る。
メールソフトを立ち上げ、信頼出来る人物に事情を伝えるメールを書き始める。
然るべき知識を持つ適任者が誰かいないかを尋ねるのだ。
ポォン……
:差出人:キツネっち
:タイトル:大至急! サーバーマシンを扱える人、誰かいない?
(あの人でも分からない事はあるんだな)
コウヤの父は、届いたメールに目を通し、何人か該当する人物を思い浮かべていた。
が、職場の人間や取引先の相手に趣味のゲームの事でこんな本格的な相談をするのも躊躇われる。
しばし悩んだ後……
(あ、そうか)
階段を降り、居間へと向かう。
作者本人にもサーバーマシンの知識は無いので、描写がいい加減になるであろう事をここに予告しておきます(汗)




