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64:時間との戦い

虚無の足止めを行うランカー勢のもとに、キツネからの一報が届く。

64:時間との戦い




>どもども、キツネです。

>RSサーバーの所在を確認しました。管理者とも交渉中。

>許可を得るのに少し掛かりますが、真相究明の決定的一打まで後少し。

>また後日報告します。

>それまでなんとか保たせてくださいね。

>頑張って!



キツネからのメールを受け取り、ムラマサは今日もまたインフェルノダンジョンへと向かう。

急いで仕事を終わらせた後、ポータルを開いて、既にダンジョンに潜っているメンバーと交代。

召喚BOTを走らせているメンバーの護衛を行う。


現在、虚無は160階にまで到達。残された時間はそう多くない。どれだけ引き伸ばせても、あと10日前後で阻止限界点=151階が陥落する。

後がないランカー勢は可能な限りの時間を使って足止め用キャラクターを守り、継続的な足止めを続けていた。

BOT勢の方も、下手をすると自動化処理の間に敵に倒されたり、虚無に殺されたりする危険性を秘めているため、油断はできない。

いつ終わるとも知れない、気の休まらない戦いが、今日も繰り広げられている。



『キツネさんから朗報があったぞ。サーバーの確保が出来そうだ』


『マジかーッ!! 実力で倒せないのはシャクだが、これで事件解決か?!』


『まだ交渉に時間が掛かるそうだから、それまでなんとかこっちを保たせて欲しいってさ』


『誰か山田にも知らせといてやれよー!』


『ようやくやり甲斐が出てきたな』


『と言っても、我々はBOTの護衛をするだけですがね。

頑張ると言っても、このままこれを続けるしか……』


『BOTの回転速度を上げるか?』


『やめとけやめとけ、昔の荒らしのせいで、インチキ判定厳しくなってんだ。

これ以上加速するとBAN(抹消)されかねねーぞ!』


BOTにセットした動きは、召喚連打と、足元クリック(ポーション回収と移動を兼ねる)とを複数パターンに分けて繰り返す物で、ゲーム側に「自動化」と判定されないためのゆらぎを持たせてある。

とは言え、過去に高速自動処理によってサーバーを攻撃された過去の経緯から、RSでは本来のマジホリより違反行為判定が厳しく設定されている。

用心に越したことはない。


それでも、効果はしっかりと出ている。

階の地形にもよるが、一日に2~3階のペースで進行してきていた虚無の進行が、今では一日に1~2階にまで落ちている。

キツネの事だから、積極的に動き、管理人に現状の解決を訴え出るはずだ。

それが間に合うか、間に合わないか、それはこの足止め作戦の成果に掛かっている。

例え無力な抵抗であろうとも、これが、今できる事の全てだ。


『俺もボチボチキツいから、交代要員いるかチェック頼む!』


『OK』


ボイスチャットで盛り上がる一行。

その音声を、山田マンは「聞き専」として聞いていた。

その場に山田マンのアーチャーも居合わせているが、彼はチャットには加わっても、ボイスチャットに加わる事はない。

表向き、「ボイスチャットが苦手」「マイクを持っていない」と言う理由で断っているが、実際の所は、声を聞かれたくないからでしかない。


彼はあの頃、悪名高い悪魔(デビル)使い、MAN_DEVILこと「悪魔人間」としてあまりに有名すぎた。

パーティーの連携効率を上げるため、流行り始めの頃のボイスチャットツールも利用していた。

きっと、自分の声を記憶している者もいる。

ムラマサも、ブッチーも、マジメイジも、当時の自分を知っている。


苦労して「面倒見のいい先輩タイプ」として生まれ変わった今の自分を壊したくはないのだ。


:山田マン

:ちゃんと聞いてますよー 良かったですね!

:残り10日ほど、頑張りましょう!


Misscodeに返事をして、またゲームプレイへと戻る。

キツネは上手くやってくれている。

後は、祈って待つのみ、だ。






虚無対策スレッドには、懇切丁寧なBOTの使い方の解説と、注意点とが記されていた。

本来なら外部ツールの利用はwiki、および掲示板の規約違反なのだが、管理人であるマジメイジも今回ばかりは例外としてこの書き込みを認めていた。


wiki付属のアップローダーを開くと、52人がこのBOTツールセットをダウンロードしている事が分かる。

そのカウント数が、53になる。


(これで、効率がまた上がるな…… 流石廃人勢、いい知恵出してくれるぜ)


クラガは使い方も分からないまま、ファイルをダウンロード。

自分の頭が良くない事は分かっているが、それでも、マジホリのためならこれくらいのツールは使いこなしてみせると、そう意気込んでいた。

インフェルノもアクト2終盤まで来ている。四層の決戦には間に合わないにしても、三層の戦いにはなんとしても間に合わせたい。

ウスデとモジヤの戦力UPのためにも、このツールはなんとしても使って見せなければならない。


バカで無神経な乱暴者と見下された自分が、誰よりも賢く、スマートに、このゲームで決定的な大活躍をする。

そして、あの生意気なカナリを「見下せる」高みに立つ。


(俺は……出来る男だ!)


煮えたぎる恨みと復讐心が、クラガを奮い立たせていた。








勉強は苦手でも、漫画やゲームを通じてなら英語や算数を理解できる……なんていう事もよくありますよね。

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