63:そして、今はまだ
コウヤとマヤは、父から虚無事件の進展を知るのだが……
63:そして、今はまだ
「いいか、事が事だからな。誰にも言うんじゃないぞ。
ネットはもちろん、友達にも話しちゃいけない。ユウリ君にもだ。
分かったな?」
人の死が関わっている以上、軽率に扱うべきではないと言われ、マヤもコウヤも納得する。
遺族の方々と連絡し、確認と許可が取れるまで待つ事になった。
つまり、「キツネっち」が掲示板上で話を公表するまでは静観しておけ、と言う事だ。
無論、父が関係者である事や、実際に家まで出向いて話してきた事なども個人情報に関わる部分なので、公表された後であれ、話すべき事柄ではない。
先んじて特別な事を知り得たからと言って、何も話せる事が無いというのは、コウヤにとって非常にもどかしい事だった。
「せめてユウくんやカナリさんくらいは事情を教えてあげたい所ね」
「あいつら超真面目だし、内緒にしといてくれそうだしな」
「ああ。公表されたら、その後で話すといい。
ただし、父さん達が……いや、「キツネっち」さんがどうやって情報を手に入れたか、という点には触れない方がいい。
父さんだって詳しく知らないし、知りたいとも思わない。微妙な話になるからな」
万が一にも黒歴史を掘り返されるのはゴメンだ。父としてはその辺りの話は絶対に避けたいところだ。
翌日、学校で……
「どうしたんですか、今日はやけに口数が少ないですね」
「あ、あぁ…… うん」
喋ってはいけないという意識ばかりが働きすぎ、普通の日常会話まで困難になってしまっていた。
結果、明らかな挙動不審。
ユウリに真剣な眼差しで心配されてしまうコウヤであった。
「何か心配ごとでもあるのなら、話してくださいよ……」
「いやぁ、まあ、うぅぅん……」
常日頃のコウヤとまるで違う煮え切らない態度に、はっきりしない言葉。
完全に、「何かある」と勘付かれていた。
「話せ無い事が何かあるんだろうと思いますけど…… それは、僕達が心配しなくてもいい事なのですか?」
「うん…… そう、だな。そうだよ。
しばらくすれば話せるようになるから、それまで待っててくれれば……」
「そうですか…… まあ、コウヤ君がそう言うのでしたら……
しかし、そう言われると余計に気になるじゃないですか」
コウヤの様子から、そこまで深刻な話では無いのだろうと察しは付く。
だが、深刻では無いとなると余計に遠慮なく探りを入れてしまいたくもなる。
ユウリの眼差しは好奇心に満ち溢れ、妖しい物になっていた。
「そ、それより……!! そう! あいつら、どうなってんのかな!」
コウヤは口ごもりながら、わざとらしく話題を切り替え、カナリ達の方へと向かう。
(コウヤ君にしては上手い逃げ方ですね……)
カナリ達と接するのが苦手なユウリとしては、そう出られるとこれ以上追求出来なくなってしまう。
「ちょっとコウヤー! あんなゲーム女子に勧めるとか、あたしちょっとどうかと思うよー?」
「えっ!? ま、まぁ、それはそうだけどさ」
マジホリの調子はどうかと尋ねると、予想外の回答。
当たり前の事を今さら言われて、少し驚いてしまうコウヤであった。
「まあ、そうだよなぁ 普通女子は嫌いか、ああいうグロいの」
「それは、私が普通の女子ではないと……そう言いたいのかしら? コウヤくんは」
「ち、ちげーよ! そんなつもりじゃ」
(藪をつついて蛇を出すというヤツだな……)
ユウリは遠巻きに眺めて苦笑する。
カナリをなだめようとして余計に怒りを買うコウヤ。笑うハナミ。おろおろとフォローに入るソノカ。
すっかり自然な友達付き合いが出来るようになっているな、と、少し驚かされもする。
特に、カナリの変化が一番大きい。
今まで張り詰めていた何かが、いい意味で砕けている感じもする。
「お前ら、ゲームで女子と仲良くなるとか、上手いことやってるなぁ」
クラスメイトの男子が半ば呆れ、半ば羨ましそうにしてユウリに話しかける。
「コウヤくんは、ほら、無神経で何も気にせず突っ込んでいくでしょう?
あれがあるからですよ」
僕にはとても無理だ、と言いたげな表情のユウリに、友人も納得する。
「でも…… そうですね、やっぱり……
ゲームがよく出来ているからこそ、妹やカナリさんでも楽しめているんじゃないかな、と……」
ゆっくりと考えながら、つぶやくように話すユウリ。
「お前がそこまで言うかぁ~ 俺も古いノートパソコン無いか、親父に聞いてみようかなぁ」
「歓迎しますよ」
少しずつ、クラスの中にマジホリの話が広がり始めている。
コウヤの人となりが、良きにつれ悪しきにつれ、周囲の耳目を集め、「場」を作っていく。
そんな彼の危なっかしい所は、自分が支えてやらなければと、ユウリは想いを巡らせる。
何を隠しているにせよ、それだけの理由があるはずだ。
今はただ、黙って待とう。
別にキツネは違法な手段で情報を集めているワケではないのですが、怪しさを自己演出する人物であるため誤解されています。




