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62/104

62:今、この時から

ついにキツネは真相の一端に触れる事が出来たのだが……

62:今、この時から




「と、言う訳で…… 今もゲームサーバーは動いているんです。

ハッキングがあったのなら、すぐにも修正しないと、ゲーム自体がどうなるか!」


「まあ、まあ…… それは大変ねぇ」


端々の用語は理解していないようだったが、老管理人は概ねの話は理解してくれたようだ。

彼の死因は過労死と見られ、遺族は会社を訴えているらしい。

話し好きの老女はカノザキの境遇に同情しており、こちらの話も親身になって聞いてくれた。


「でも、流石にご遺族の了承無しには、ねぇ……」


今もまだこの部屋の中でサーバーが稼働しているのだとすると、遺族が維持してくれていると考えられる。

赤の他人が勝手に上がり込んで手を出せないのも道理だ。


「仕方ないわね、これは。

それで…… 管理人さん、御遺族の連絡先は頂けませんか?

おそらく、専門知識も無いまま、機械が一人で動き続けている、という状態だと思いますし……」


「悪い人が悪いことをしてるかどうか、コンピューターを調べたいのね。

ええ、分かりました。私から連絡してみますから、貴方達の連絡先を貰えるかしら?」


「ありがとうございます! それで構いません!」


キツネは手早く要点をまとめたメモを作り、遺族への連絡時に読み上げてくれ、と手渡した。

嘘偽りの無い、マジホリRSの現状を伝える内容で、今、カノザキ氏の作ったゲームが危機に瀕していると訴えた。


これ以上、今ここで出来る事は無い。

管理人と電話番号を交換し、キツネ達はアパートを後にした。


手に入れたのは、手掛かりと言うには、あまりに大きなパーツ。

あまりに大きく、重すぎる真実。

連絡を待つ時間は、この事実をどう受け止めるべきかを考えるいい機会となるだろう。


電車に揺られながら相談し、「公表はまだ控えよう」との結論を出し、二人は別れ、帰宅した。






「ね…… 姉ちゃん!? どうしたんだよ! おい!」


「どうしよう…… どうしよう…… コウヤぁ!!」


マジホリのプレイ会が終わり、姉はどうしているかと部屋を確認したコウヤは、涙で顔をグシャグシャにした姉と出くわした。

震える手でコウヤの肩を掴み、額を胸に押し付け、下を向いたままポロポロと涙の粒を落とし続ける。

……こんな姉を見るのは初めてだ。


「落ち着けって…… 何があったか、話してみろよ……」


「うっ…… うぅぅぅ……」


声にならない声で返事し、頷くマヤ。


父の挙動が不審で、虚無事件の犯人ではないかと疑っていた事……

それ以来、証拠が掴めないかと父の様子をずっと見張っていた事……

徒歩で出かけた父を尾行し、年上の裕福そうな女と密会しているのを見てしまった事……


もう、一人で胸の内に秘めて置く事は不可能だった。

マヤは、全てをコウヤに打ち明けた。






「観念しろ! とーちゃん!! 正直に話せ!!」


帰宅するなり、コウヤは父に掴み掛かり、怒りの形相で叫んだ。


「なんだ!? なんだなんだ!?」


事情が飲み込めず、ただただ狼狽えるばかりの父に、コウヤはますます怒りを溜め込んでいく。


「胸に手をあてて聞いてみろ、って言うんだろ!? こういう時は!」


怒鳴るコウヤの背後には、目を赤く泣きはらした、酷い様子のマヤ。


「ねぇ、パパ…… 浮気してるの……?」


「ハァ?!」


素っ頓狂な声を出し、一瞬、空気が凍ったように静まり返る。

一秒か、二秒か、痛切な沈黙を経て、コウヤの父は大声で笑い始める。


「なッ、なんだよ! こっちはマジなんだぞ!」


予想外の反応。

今度は、コウヤが事情を飲み込めずに混乱する番だった。


「ハハ、ハハハ…… いや、すまん! そりゃ誤解もするか!

悪かったな、マヤ、心配させてしまって」


「ちがう……の……?」


「分かった。お前達にも関係無い話じゃないからな。ここらでちゃんと話しておこう。

この上母さんまで勘違いさせちゃ、かえって逆効果だしな」


事態は未だ判然とせず、人の生死や裁判まで絡んで来ている。

どこまでを話したものかと悩みながら、父は少しずつ説明を始めていった……





ターニングポイント、です。


マヤの名前が初めて出てくる所で「サヤ」になっていた事に今さら気付いて、遅ればせながら修正してきました……

難易度選択描写とかも、修正する必要があるかも。

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