59:それぞれの創意工夫
コウヤはハードで、クラガはインフェルノで、ランカー勢は虚無対策で……
彼らはそれぞれの難関に挑んでいた。
59:それぞれの創意工夫
「あーもー!!」
マヤに続き、ユウイのドルイドも倒された。前線で耐え忍んでいるコウヤ達では助けに行く事も出来ず、一番防御力が低いユウリでは尚の事無理だ。
蘇生猶予時間の10秒を過ぎ、二人は一度町へ戻され、装備なしのままポータルを使って復帰してくる。
難易度ハードの最後の難関、アクト7ラスボス+その前のボスラッシュ。
定時のマジホリ会以外のプレイも織り交ぜつつレベルを上げ、パーティー平均59レベルでの挑戦となったが、かなり苦しい戦いを強いられている。
『前線下げっぞ!』
『ええ!』
二人の離脱で召喚NPCも消滅。コウヤとカナリはやや後方に下がり、戻ってくる二人の死体回収しやすいように敵を引き付け、食い止めていく。
『サンキュ!』
『どもども』
マヤとユウイは素早く復帰して死体と装備を回収。
難易度ハードでの経験値ロスは現在値の10%。大した痛手ではないが、資金が半分減るのは痛かった。
その間にもユウリは黙々とコウヤとカナリに援護射撃を打ち込み、確実に敵の数を減らしていく。
群れが出現する最初のラッシュを乗り切れば、後はこっちのもの。ジワジワと前線を押し返し、破壊獣ギスターを撃破する。
『よっしゃー! ラスボス来るぞー! 今の内にスキル展開!』
『言われなくても分かってますわ!』
大魔王バルエンとの、二度目の戦いが始まる。
既に他のクエストは全て消化済み。ここを越えれば、いよいよ難易度ベリーハードに突入できる。
一つの山場を前に、五人は胸を高鳴らせながら一致団結して戦いに臨み……
「っしゃぁぁぁっ!!」
大魔王バルエンを撃破。
二人の育成に3日を割き、難易度インフェルノのラストバトルに再挑戦。難なく撃破する事に成功した。
逃げ回る事を最優先にと指示したウスデとモジヤの二人も、しっかりと役目を果たしてくれた。
全ての攻撃が自分に集中しない限り、クラガにとって最早この難易度での攻撃も脅威ではなくなった。
新人育成にと熟練プレイヤーが破格のレートで鉱石とトレードしてくれた装備のお陰もあって、各属性防御も充分な高さになって来ている。
「おつかれさんっす!」
「お役に立てて何よりです」
モジヤは魔獣使い♀を、ウスデは戦闘工兵♀を選択。
クラガの指示に従い、モジヤはコストの安い魔獣を大量召喚して逃げ回る戦法で敵のターゲットを散らし、ウスデは壁を設置して敵が後方に来るのを防ぎつつ、クラガを支援するための櫓を建てていき、二人は一度も攻撃を受ける事なく勝利する事が出来た。
レベル不足でも充分支援可能なキャラを選定したクラガの判断は正しく、思惑通りの結果となった。
もっとも、こうしろああしろと遊び方を強制された二人にとって、楽しいゲームプレイとは程遠かったのだが。
『まあ、どうせ無駄だとは思ったが』
『じゃあ、近接組は一人抜けて、召喚組と交代するか』
『わりぃ、ちょっと調べてみたい事があるんで、まず俺が抜けていいか』
『OK』
虚無調査隊は、投げポーション八属性同時攻撃を行い、効果が無い事を確認。
そのまま召喚による足止め作戦へと移行する。
護衛役の近接キャラは二人もいれば充分だったので、ブッチーは先に抜け、ビーストテイマーと交代した。
ウォリアーには、「パワースロウ」と「ダブルスロウ」の二つの投擲スキルがある。
サムライの武器投げとは違い、投げるために作られた「投げ槍」や「投げ斧」を用いるためのスキルで、元々は近接攻撃反射等の絶対不利な相手に対策するための補助攻撃に使う物だった。
今では即死級だった近接ダメージ反射も修正され、殆ど出番の無いスキルになっているのだが、他に遠隔攻撃手段を持たないブッチーのウォリアーでは、虚無に対して攻撃可能なスキルはこれだけだった。
命中時に敵を弱体化する効果など、珍しい効果の付いた投げ武器を多く持ち込み、試しに虚無に撃ち込んではみたものの、やはりいずれも効果は無い。
が、暇を持て余している際、マジホリRSの内部データを解析して作られた完璧なアイテムリストを眺め、投げ可能なアイテムを逐一調べてみている途中、投げられるのは何も武器だけでは無いと言う事に思い当たった。
火炎瓶等のポーションだけでなく、回復ポーションの類も発射可能なのだ。
まさかと思い、その場で体力回復の赤ポーションを虚無に投げてみたが、これも効果が無い事を確認。
他に投げられる物は持ってきていなかったため、思いつきの実験はここで打ち止めだった。
もしかすると、ダメージ上昇効果のある「火酒」や、攻撃速度を上げる「影の秘薬」を投げスキルで発射すると、ウォリアーでも味方の支援が出来るのではないか……と、ブッチーは考えていたのだ。
通常、これらのポーションは武器スロットに装備する事なく、直接クリックして飲むタイプのアイテムで、効果は微々たるものでしかない。
だが、ウォリアーの投げスキルなら投擲ダメージを大きく強化可能。もしかすると、この方法で大きなブースト効果が得られるのではないかという淡い期待も芽生えていた。
攻撃用の投げポーション同様、あまりに効果が低いため、わざわざクラフトしてまで用意する者は皆無で、すっかり忘れられているアイテムだった。
次の機会があるかどうかは分からないが、ムラマサの最大火力への挑戦の際には力になれるのではないかと思い、早速検証を始めようと、一足先にインフェルノダンジョンから抜けてきたのだった。
15 ブッチー ****/**/**(木) 00:12:45.67
前回の火力試験ではすっかり失念していたが、「火酒」系はまだ試してないよな?
RSではポーションを全種類投げられる仕様になっている事も忘れていた
パワースロウで味方をどれくらい強化出来るか実験してみる
この切り口で何かチート臭い動きが出来ないかどうか、誰かいい知恵は無いか?
虚無対策スレも、もう3スレ目になっている。
相変わらず有用な情報は殆ど無いが、一番多くのプレイヤーの耳目が集まっているのはここだ。
何かを告知したり情報を求めたりするのなら、今はこのスレにするのが一番いい。
と、ブッチーは少し上の書き込みに目を留める。
12 マッチー ****/**/**(水) 23:45:18.11
召喚攻撃の自動化BOTの件、承りました
すぐに用意出来ると思います お待ち下さい
ほう、案外いるもんだな、とブッチーは感心する。
こんなにも早く有能な人材が出てくるとは、ありがたい限りだ。
BOT製作は本領ではない。これはコイツに任せた方が良さそうだ。
(しかし、なんだよマッチーって…… マジでチーターってか?)
自分の場合口だけチーターだしな、と納得させられてしまうブッチーであった。
新ジョブ、戦闘工兵を登場させてみました。
壁、罠、やぐら、テント、砲台等を敷設(召喚)して味方を援護するキャラクターとして考えています。




