60:遠征計画
煮詰まった虚無対策。せめてプレイヤーの負担を減らそうと、BOTの開発が行なわれたが……
60:遠征計画
21 マッチー ****/**/**(木) 09:40:55.71
足元のポーションを拾いつつ召喚を前方に連打するBOTを作りました
皆さんが悩んでいるのを見て、以前から用意していたものです
自分では四層に行けないので、実地試験はできてません
不備があれば指摘お願いします >あぷろだ0531番
(これでよし、と)
無論、BOTをアップロードしたのはキツネである。
山田の作ったBOTを代理でUPし、スレッドで知らせる。
これでしばらく、第四層完全終了に至るまでの時間を稼げるだろう。
こちらはこれでいい。
悪いが、今はニンジャとしての活躍より、こっちでの活躍が必要なはずだ。
皆にはこのまま耐えてもらおう。
(こっちはこっちで忙しいのよ……)
夫の出勤を見送ると、慌ただしく身支度を整え、出発する。
応援も呼んだ。
いよいよ、今日が山場だ。
『なあ委員長、ハナちゃんとソノさんどれくらい進んだ?』
『ハナミさんはノーマルクリアした所で、ソノカさんはハードのアクト4。
まだまだ私達と合流するには早いですわよ?』
『うーん、残念。そろそろこっちも厳しいからな~』
難易度ベリーハードでの冒険を開始する前、コウヤ達はボイスチャットで雑談していた。
男女の区別なく気軽に接するコウヤは、ハナミとソノカの二人とも多少の面識がある。
パーティーに加わってくれるなら大歓迎といった様子だ。
が、しかし、ゲーム慣れしているソノカのバンパイヤ♂はともかくとして、ハナミの修行僧♀の方はまだまだ追いつくのに時間が掛かりそうであった。
『今日はマヤさん欠席ですか』
『ざんねーん』
今日は祝日。せっかく長くプレイ時間を取れると言うのに、欠員が出たのは残念な事だった。
とは言え、全員揃わない時でもそのまま出発し、後日遅れたメンバーの手伝いをして進行度を揃えるというのが当初の取り決め。
今日は四人でゆっくりアクト1を攻略して行く事になる。
そろそろ難易度も上がってくる頃合いで、トレハンするには丁度いい頃合いだ。サブクエストも今の内に済ませておくといいだろう……
「お待たせ~ 待ったぁ~?」
「なんで先に来てる方がその挨拶なんですか」
キツネと待ち合わせしていたのは、コウヤの父だった。
マジホリRSのサーバー管理人、カノザキ。彼の電話番号は分かったが、試しに掛けてみても「その番号は現在使われていません」の状態であったし、メールの方も返事が無い。
そこで、直接自宅に出向いて現状を確認しようとしている訳だが、キツネ一人では全く接点の無い相手の家に押しかけるのも不自然な話であるし、接触をスムーズにするためにも、わずかなりと接点のあった開発メンバーを連れて行く事にしたのだ。
「ゲームで大問題が起こっているのに全く連絡が取れない、だから心配になって会いに来た」……と、そういう話の切り出し方ならば、胡散臭さも多少は薄まろうという考えだ。
「やれやれ、なんで僕がこんな事を……」
「貴方だって気になってるんでしょ? 息子さん娘さんのためにも、問題は解決しときたいじゃない」
「それはまあ、そうだが……」
キツネはコウヤ父のメールアドレスから個人ホームページを特定。
そのホームページに記載された、引越し先のブログへと辿り、結婚、出産、子育ての報告をチェック。
書き込まれていた娘&息子の名前から、新人パーティーの正体にまで辿り着いていた。
ロビーでの会話の端々から読み取れる情報で、まだ小学生らしい事と、親からゲームを継承した二世プレイヤーである事は分かっていた。
気付いた時は多少驚きはしたものの、今頃になってマジホリRSを始めようなどという酔狂な小学生が、開発関係者の子供であるというのは、可能性として考えれば驚くに当たらない事でもある。
キツネとしても、ここまでストーキングするつもりは無かったのだが、期せずしてコウヤ父に圧力を掛ける丁度いい材料が手に入ってしまったというワケだ。
「ま、何事も無く、仕事が忙しくてサバ管忘れてただけ、とかだといいんだけど」
「負荷の掛かるPCを付けっぱなしで放置するのは危ないですからね」
いいかげんな構成のパソコンでサーバーを立てた挙げ句、留守中にPC内に溜まったホコリが電源の熱で発火、家を燃やしてしまった、などという話も聞いた事がある。
虚無の件を置いておくにしても、誰かが一度現状を確認しておいた方が、皆安心出来るだろう。
あれだけ自分が熱中していたゲームに、今もプレイヤーが集まって盛り上がっている。
その中には娘と息子も含まれている。
そんな「場所」を守るためなら、多少は恥を偲んで苦労もしよう。戻る気をなくした場所だとは言え。
「しかし、君もいい老け方したわねぇ~? どう、浮気デートって事にしてみたりは?」
「しません」
戻る気を無くさせた張本人が隣にいるという一点が、耐え難い苦痛ではあったが……
遠出の乗り継ぎのためか、二人は地下鉄に乗り、姿を消した。
その様子を遠くから伺っていた帽子の人影。
(予想外の展開…… ママに話さなくて正解だった……)
マヤである。
結局名称はコウヤ父のまま……
以前出た「ツバサ」は、過去のハンドルネーム「片翼の天使」の名残りであり、本名ではありません。




