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54:虚無討伐隊

週末、戦線離脱していたキツネが帰還し、いよいよ虚無に最大火力を叩き込む「討伐隊」が結成される。

54:虚無討伐隊



土曜夜、予定されていた当日が、ついに来た。

22時の出発を前に、各参加者は慌ただしく準備を進めていく。


ムラマサ、キツネっち、マジメイジ、ブッチー、山田マン、人形姫、一閃。


久々にトップランカーのフルメンバー七名が揃っていたが、人形姫は今回参加を辞退。

今回の作戦目的は、ムラマサ、山田マン、マジメイジの最高火力を叩き込む事。

今実現し得る最大最高の火力をぶつけ、効果があるか無いかを検証する。

そのため、支援力の低いドールマスターを外し、残る二枠には、この日のために淡々とレベル上げを行った付与術士(エンチャンター)君主(ロード)が起用された。

パーティープレイ向けのキャラクターを、スキルを振り直してまで仕上げてくれた両名に、ムラマサ達は深く感謝する。


付与術士(エンチャンター)♀ レベル587 プレイヤー名「辻スミス」


君主(ロード)♂ レベル499 プレイヤー名「発光大王子」


辻スミスは復帰勢。祭と聞いて駆けつけた類の、年単位で放置していたアカウントでの参戦だ。

元々は武器にランダムで付加効果を加えるという「アイテム強化屋」の役割しか担っておらず、インフェルノダンジョンでの戦闘経験が乏しい点は不安要素だが、常に極限難易度で他人のサポートを続けてきた経験は、まさに今回の挑戦にピッタリの人選と言えた。

自分には掛けられない味方強化専用スキル「対人強化(マンブースト)」系スキルにMAXの20ポイントまで全振りし直して仕上げてきた効果は驚異的で、付与した後、次の一撃のみダメージを爆発的に高める「瞬間強化(フラッシュブースト)」は四層の階ボスすら秒殺可能とする最大の切り札だ。

この切り札に、赤色(アルティメット)武器を使い捨てるというムラマサ必殺の「武器投げ」を組み合わせれば、一体どういう事になるのか……

マンブーストスキルは10分に一度しか発動出来ないというクールタイムの長さが欠点で、エンチャンター自体の性能の低さもかなり問題が多い。

それでも、今回の検証には必須の人材と言え、彼の復帰はランカー勢にとってこの上ない朗報であった。


発光大王子はレベル不足の中堅勢の中でも、今回のために必死にレベル上げに励んで仕上げてきた努力の人だ。

その名の通り、とにかく光る。

各種号令スキルを細かく使い分けながら連発し、通常なら重ねがけ出来ない複数の号令スキルを、「効果が消滅する前に次の号令を使う」事を繰り返して強引に重ねてしまうという荒業を使いこなせる稀有な人材だった。

重複可能なのは僅か数フレーム程でしかないのだが、超高速の号令連打でその数フレームを次々発生させ、火力効率を大幅に増強させる事が可能だ。

マウスボタンにマクロを入力して操作を半自動化している点など、ムラマサやカベのような正統派プレイヤーの嫌うタイプではあったが、この際この程度の事で目くじらを立てている余裕は無かった。

ゲームの仕様の枠を越え、物理火力、攻撃速度、属性火力を同時に強化する「号令」は、山田マンやマジメイジのような弾幕タイプに驚異的な時間火力効率の上昇をもたらすだろう。



<火力担当>

ムラマサ:武器投げの一撃火力

山田マン:物理弾幕による時間火力

マジメイジ:属性火力による時間火力


<支援担当>

キツネっち:忍術による敵弱体化+薬丸による味方強化

ブッチー:雄叫びによる敵弱体化+味方強化

一閃:加護重複による味方強化(マクロ使用)

発光大王子:号令重複による味方強化(マクロ使用)

辻スミス:対人強化による一撃必殺支援



雄叫び(ウォークライ)担当のブッチーを他の支援専キャラクターと入れ替える等、改善の余地はまだあるが、この編成が、現状で集められるベストメンバーと判断。

本気で虚無を倒すつもりの、「討伐隊」が結成された。



本挑戦において、火力担当三名の責任は重大だ。

ここで何の成果も出せないなら、この先の見通しは暗い。


山田マンは、人付き合いは悪いが面倒見のいい「良き先輩」として、これまで多くの中堅勢を育ててきた。

ボイスチャットやMisscodeを嫌う昔気質の所はあるが、RSプレイヤーのコミュニティに最も貢献した人物と言える。

ムラマサ達、最古参プレイヤーと比べると少し経歴こそ浅いが、実力も折り紙付き。

怒涛の物理射撃弾幕と、ここぞという時の無属性攻撃の一点集中火力で、トップランカーの名に恥じない時間火力(DPS)を叩き出す。

ドライアド召喚で微力ながら支援も可能。間違いのない人選だ。


マジメイジは、RSwiki管理人という立場の人間だが、MOD開発には携わっていない。

RSをプレイし続ける廃人勢の中でも一際の暇人だったというだけの事だ。マジホリ歴も山田より浅い。

もっとも、今では更新する事も無く、wikiの管理自体は大した労力が必要な訳でも無かったが。

そんな暇人だからこそ、実力は高い。人生の時間の多くをマジホリに注ぎ込み続けた成果が、圧倒的な殲滅力として猛威を奮っている。

時間火力(DPS)こそ山田マンに劣るものの、各種範囲攻撃魔法による瞬間の殲滅力の高さは全プレイヤー随一だ。


ムラマサは、言わずと知れたトップランカーナンバーワンの実力者。

カベ、キツネっち、ムラマサの、最古参三人組のリーダー格と言われている。

全身を長年のトレハンの成果となる最高級装備で硬め、敵の耐性を下げる効果の積み重ねにより、必殺の「雷鳴剣」はスタン無効の敵でさえ強制的にスタンさせてしまう。一部ボスを除いた全ての敵を完全封殺してしまう力を持ち、パーティーの守護神として機能する。

だが、いくら近接火力が高かろうと虚無には接触できないし、いくら強制スタンがあろうと虚無には通用しない。

ムラマサはただ一つ、「武器投げ」によってゲームの限界に挑む一撃必殺のダメージを叩き込む、ただそのためだけに選抜されている。



:ムラマサ

:準備OK?


:一閃

:いつでもいいぞ。行くか?


:発光大王子

:よろしくお願いします。足引っ張らないよう頑張ります!


:山田マン

:ポーションは充分持ったか? 忘れ物は無いか?


:辻スミス

:完ポ増産中~ ちょっとだけ待って!


:マジメイジ

:道中ザコは任された。護衛は頼むっす


:ブッチー

:道中は俺に任せてマナ温存しとけ。着いたら後暇だからな、こっちは


:キツネっち

:みんなを待たせた分しっかり活躍しなくちゃね




今日こそ虚無を仕留める。

その覚悟を持った討伐隊が、出発した。











辻スミスは、通りすがりのプレイヤーの武器を強化してくれる親切な人物なので、辻スミス(鍛冶師)という名前になっています。

素材はプレイヤー持ち。詐欺られて素材を持っていかれる心配もない、安心の知名度の持ち主(当時)でした。

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