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53/104

53:(1+2)×2

カナリとクラガは、それぞれの悩みを抱えていた。

53:(1+2)×2




「ふぅ……」


「珍しいですね、カナリさんが溜め息なんて」


「あら、まあ…… 私とした事が」


カナリの友人が心配して声を掛ける。

ユウリ&コウヤの二人とは確実に親しくなり、良好な関係を築いているはず。

声を掛けられただけでパニックに陥って怒鳴り散らしていた頃とは大違いだ。


だが、そこまで。

つい先日もカナリの誕生日だったというのに、それを知らせようともしなかった。

身に付いたツンデレの悪癖は抜けていない。

未だゲーム仲間のまま、それ以上には近付けてはいない。

この年でそれ以上に進展する必要も無いだろうが、なんとも、最近のカナリは様子がおかしい。

寂しげにあらぬ方を見つめて溜め息などついて……


(恋の悩みすぎる)

(すぎますねー)


カナリの友人達はそんな様子を半分心配、半分面白がって見守っている。

努力家で、勉強熱心で、他人に優しく自分に厳しい、そんな彼女だから皆応援したくなるのだ。

彼女の本命がコウヤである事は既にほぼ確定事項。

応援団としては、コウヤにもう少し王子様としての自覚を持たせるべきなのでは、とも考えたのだが、やはり彼女の望まぬ手出しをして逆効果となってはいけないだろうと自重する事にしていた。


ならば、援軍を出すのはどうか。


生真面目すぎて融通の効かない彼女をサポートすべく、戦線に加わるのだ。


「あの~…… ユウリくん、ちょっといい?」


「何でしょうか?」


「私達も、カナリさんと同じゲーム、やってみたいんだけど……」


カナリの友人から、ゲームが得意そうだという人選で斥候が放たれた。


人付き合いは苦手だが、読書好きでファンタジーに強い眼鏡女子、ソノカ。

背が低い割にスポーツやゲームで男子とも張り合う元気女子、ハナミ。


上記二名、マジホリ参戦。







「クッソ!!」


クラガは罵りながら机を殴り、ペン立てが中身をぶちまけながら床に転がる。


難易度インフェルノでの死亡ペナルティは所持金半減と、経験値喪失。

レベルが下がる事は無いが、経験値は現レベルの初期値、0まで戻される。

急ぎすぎた。

所持金の半分は死体回収時に取り戻せるが、残り半分は死と同時に消失している。

節目となる99レベル到達を目前にして、とんだ大損害になってしまった。


アクト7ラスボス前の怒涛の中ボスラッシュ。

単身でこれを凌ぎ切るのは並大抵では不可能だ。

敵の大群が出現するのと同時に後方にテレポート連打で逃げ切り、そこから敵を少しずつ誘導して各個撃破していくのが安定の戦法なのだが、転移位置を指定してクリックする際、間違ってMAP上の障害物上をクリックしてテレポートが不発。その一瞬の隙に恐竜の突進攻撃を食らってスタン+ノックバック。画面がブレて位置関係を把握出来ないまま、大群にもみくちゃにされて死亡してしまった。


「くっっっっそぉぉぉぉぉ……壁が足りねぇ……」


クラガの使用する暗黒騎士(ダークナイト)にもデコイとして機能する召喚スキルは存在する。

だが、「使い魔」は召喚コストが安い反面、耐久力が低く、長持ちしない。

多様なスキルを習得できる反面、補助スキルに割り振るポイントが不足しがちで、スキルランク不足からこういう事になりやすい。

wikiにもそう書かれていたし、分かっていたはずの事だった。


ここまで万事順調に進んできた慢心が、このような結果を招いたのだ。


「金がやべぇぞ、こりゃ……」


ただ一度死んだだけでは終わらないと、クラガは覚悟していた。

あの敵の群れの真っ只中で死んでしまったのだ。

一線級の装備無しに死体を回収しに戻って、ただで済むとは思えない。

有り合わせの適当な装備で、あの凶悪なモンスターの群れを処理する間に、何回殺されるだろうか。

装備を取り戻すまでに何度も死に続け、その度に所持金は半減。殆どを吐き出す事になるだろう。


「チッ……」


ソロプレイに限界が来ている。


時間を掛けてじっくりトレハンとレベリングを繰り返せば、ソロでもなんとかなるだろう。

スタン耐性の付いた装備を拾えれば、恐竜にハメ殺される心配もなくなる。

だが、その選択肢は無い。悠長に運任せのドロップを待っている時間は無いのだ。

このままアクセル全開で追いつく。

……ソロの限界を越え、このまま突き進むためには、仲間が必要だ。


だからと言って、ブッチーや山田のような熟練勢に助けを借りたくはない。

あの掲示板のように、ああだこうだと他人のプレイにケチをつける連中にアレコレ言われながら遊ぶなんてまっぴらだ。

増して中堅勢の助けなんてのは論外。聞く価値が無い。

実力ならある。俺の火力は充分高い。後は俺をサポートする便利な駒がいてくれさえすればいい。

大してレベルは必要ない。支援スキルを展開し、召喚を連打してくれるだけでいい。


「しゃーねえか……」


あいつらなら、俺の言う事を黙って聞くはずだ。


クラガは、スマホから二人のクラスメイト宛てにメールを打ち始める。

数少ない、かろうじて友人と呼べる関係の…… クラスの日陰者同士の二人を、駒として使えるように仕上げる。


(あいつらだってRPGは大好物だろう。プレゼントしてやろうじゃないか)


いつか使う事もあるだろうと、暗黒騎士には必要ない装備をドッサリ倉庫に抱え込んでいる。育成は簡単だ。

ベリーハードクリアまで自力で到達するのはあっという間…… 何せ、この俺様が強烈に「おねがい」するのだから、3日もあれば充分やれるはずだ。

後は、俺が直々に引率してやって、インフェルノ進行もさっさと終わらせる。


多少手間は掛かるが、こういう「効率化のための下準備」が重要だって事は、よくよく身に沁みている。

ブッチーの教えは正しい。

一々ネットで仲間を募集して、よろしくおねがいしますなんて頭を下げながら待ち合わせしてプレイするなんて言うのは、いかにも非効率的だ。

ウスデとモジヤ、あの「子分」二人を使った方が余程効率的。

そのために数日の遅れを取ったとしても、後で充分プラスになって返ってくる。


こうするのが一番の近道と分かっている。


俺は出来る男なんだ。







新キャラ四名は本筋に大きく関わらせる予定はありません。

まあ…… アドリブ執筆次第ではどうなるか……

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