51:検証の代償
第二の犠牲者を出した虚無調査隊。だが、彼らはまだ撤退をする訳には行かなかった。
51:検証の代償
当初の目的である「同時遭遇」の検証は果たした。
だが、まだ出来る検証はある。
犠牲者を出したからと言って即時撤退と言う訳にはいかない。
まずは、竜発破が幾つかのまだ試していないスキルを虚無に撃ち込み、効果が無い事を確認。
その後、第二の検証が始まる。
戦士チームは虚無の足止めをせず、そのまま放置。
一方で、侍チームは全力で足止め。召喚連打が可能なつらぬき丸も戦士チームを抜け、侍チームに加わる。
残る戦士チームは移動の足枷となる砲兵・竜発破を一度離脱させ、ブッチー、山田マン、一閃の三人で行動。
熟練の三人が揃っていれば、この辺りの敵は最早脅威ではない。
一応、下への階段がどこにも存在しない事を確認し、一度帰還する。
そこから、三人は大急ぎで再び下へと降り始める。
まずは、「この状況下で一度目を離した場合、再会位置はどうなるのか」、の検証だ。
再度173階に辿り付き、「足止めされていない位置」に虚無が存在する事を確認。
戦士チームと侍チームとで、虚無の位置にズレが生じている状態である。
そして、次の検証に移る。
戦士チーム全員がログアウトし、サーバーが保持していた戦士チームのゲームが消滅するのを待つ。
それから、再び新たなゲームを始め、151階から再スタート。
この状況では、虚無の位置情報はどうなっているのか、それを検証すべく、三度ダンジョンを降りていく。
ブッチー、山田マン、一閃の三人に、休憩していた竜発破も再加入する。
長時間プレイの疲れもあり、今はレベル不足のメンバーであろうと助力が欲しい所だった。
眠気に襲われながらも、彼ら五人はすばやく的確にボスを撃破し、階を降りていく。
ボス戦においては、流石に貴重な鉱石を消費してスキルを発動するだけあり、竜発破の放つ大砲の属性火力も予想外の大きな貢献を見せた。
ソロが苦手な砲兵も、こういったチームプレイでは切り札足り得たのだ。
そして、戦士チーム四名は再び虚無と遭遇。
場所は173階。
丁度今、侍チームが召喚連打で抑え込んでいる場所、その地点と全く同じ位置であった。
先に確認した「前進後の位置」から、大きく虚無の位置が巻き戻っている事が確認できた。
「よし……ここまででいいだろ。これ以上は俺達が持たない」
ムラマサの提案に反対する者はいない。
徹夜の超長時間作戦で、皆疲れ果てていた。
まず戦士チームが撤退し、解散。戦士チームのゲームが消滅するのを待ち、その後で侍チームが撤退・解散。
10人の疲れ果てた冒険者は、反省会をする余力もなく、次々とログアウト。
プレイ開始から既に6時間以上が経過。夜が明け始め、窓の外はうっすらと明るくなりつつある。
仕事のある者は仮眠を取り、それ以外の者も即座に布団に潜り込んだ。
失意のまま先に落ちた∨キャヴァリアーは、起床した後で録画動画をUP。
調査隊寝落ち不在の中、物見遊山の外野達による検証が進んでいた。
賢明にもデスクトップ全体を録画していたキャバの動画によって、以下の現象が確認出来た。
・近接攻撃はどう見ても複数回ヒットしている。
・攻撃が三回命中した辺りで即死。仲間に警告する。
・10秒の蘇生猶予時間が過ぎて町に戻されると、パーティーから外されている。
・数秒後、マジホリRS強制終了。
・マジホリRSを再起動すると、使っていたキャラクターが削除されている。
カベの証言は正しかったと証明された。
そして、長時間足止め作戦により、以下の推論も成り立つ事となる。
・2つのパーティーが同時に挑んだ場合、虚無は同じ位置に出現する
・一度撤退した後も、パーティーを解散しない限り同じ位置に存在する
・虚無の出現位置や移動距離は、最後にプレイヤーが観測した位置が起点となる
実際に足止めに効果があるのだと立証出来たのが一番の収穫だった。
2チームで挑む場合の注意点も分かった。
足止め中のチームがいる場合、彼らを最後にログアウトさせなければ努力が無駄になる可能性があるという事だ。
一応は気を付けた方がいいだろう。
四時間の足止めの成果が、どの程度の距離になっているのかも、具体的に分かった。
ささやかな抵抗ではあるが、効果は確実に出ている。
検証は確実に進んだ。
だが……
それでも、やはり、全マジホリプレイヤーは動揺している。
命を捨てて殴りに行ったキャバのパラディンの勇気が、何の成果ももたらさなかったという、その理不尽さに恐怖していた。
そして、何より…… カベの時にも発生していた謎の強制終了が、偶然では無かったのだという事実が重くのしかかる。
システムが書き換えられているのではないか?
戦力が足りないとか、強い、弱いとか、そういった次元では無い無力感。
彼らマジホリRSプレイヤー全員が、自分が遊んでいるゲームが知らない間に得体のしれない何かに変貌してしまったという不安感に襲われていたのだ。
キツネもまた動画を検証し、ザワつくスレッドに目を通し終え、溜め息をついていた。
(リスクを取るしか…… 無いようね)
職場で携帯からこっそりと掲示板をチェックする山田マンも、眉間にシワを寄せて覚悟を決めている。
(ブッチーには悪いが、もう手段は選べないな……)
ムラマサもまた、事ここに至って、最早正攻法ではどうにもならないと感じ始めていた。
(まずは、一度ベストメンバーで最大火力をぶつける…… それでダメなら……)
それぞれの想いと覚悟を乗せ、決戦の時は近付きつつあった。
MORPGやった事が無いと分かりにくい描写になったかも……
部屋の解散からのゲーム消滅の辺りとか……




