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50:一歩進む勇気

虚無調査隊2チーム11名は検証のため虚無を探してダンジョンを突き進む。

50:一歩進む勇気



快進撃。

無理をせずトップランカーに戦闘を任せるように意識を切り替えただけで、戦闘の快適性は格段に改善されていた。

190階台の地獄の難易度と比べ、ここまで来ると敵の強さ自体もかなり緩和されている。

エンジェルの回復効果のお陰もあり、ポーションの損耗も少なく、調子良く進行できていた。


侍チーム、戦士チームの両調査隊は173階に到達。

先日の虚無観測位置は176階。そろそろ危険な頃合いとなる。


カベの時の教訓から、全員がMisscodeを導入。

マイクを持たない者以外、ほぼ全員がボイスチャットに参加している。

これで手を止めずに即時報告が可能となる。マイクを持たない「聞き専」でも音声を聞くことは可能だ。

後の検証のため、数人でプレイの録画もしている。特に、階段を降りる際には録画を欠かさないように取り決めている。


もしもの時のためトップランカー以外が階段を降りて偵察する、という取り決めは続いていて、今回はみみかとゴリが交互に階段降りを担当していた。

174階行きは、みみかの番。

毎回ながら、この瞬間だけは重い覚悟が必要となる。


『じゃ、……行きます!』


覚悟を決めたみみかがボイチャで宣言し、階段をクリック。

残るムラマサ達は報告を待つ。


が、みみか、無言。

五秒ほどの沈黙が、何倍も長く感じられる。

階移動の読み込み処理と、プレイヤーの反応を待つ、緊張の時間。

ボイスチャットなら、直ちに反応を返せるはずだが……


『ヤバい!!』


叫ぶみみか。

と、階段を上がり、みみかのエンジェルが再び姿を現す。

テレポート回避ではなく、そのまま階段をクリックする程に余裕が無かったという事か。


『下がって!』


全員が一斉に階段から距離を取る。

今すぐにも、ヤツが出てくる!


虚無、173階に出現。


仲間を失わずに済み、一安心する一行。

軍団長ゴリとみみかは早速召喚スキルで足止めしつつ、「まだ試していない攻撃」を虚無に打ち込み始める。

いつもの包囲態勢は取った。


だが……


だが、肝心な事はまだ確認できてない。


「あっちはどうなった!?」


:ムラマサ

:174~173の階段に虚無発生。 タイミング危険。 注意!


護衛役で手を動かす余裕のあるムラマサが、無事の報告を打ち込みつつ、戦士チームのチャットを確認する。

と……




:山田マン

:キャバさんがやられた


:ブッチー

:173 虚無包囲中


短い報告が、状況を物語っている。


第二の犠牲が出たのだ。






∨(ビクトリー)キャヴァリアー。

通称キャバさん。

名前の意味は「勝利の騎士」。

その名の通りのパラディン(♀)。レベルは481レベル。

守りを硬めつつ雷属性での一撃に重きを置く一閃のパラディンとは違い、「高速打撃」による手数で勝負する正統派。

ソロプレイではそこまで重視される事の無い「加護」系スキルにもポイントを割き、ある程度の支援効果も持っている堅実なバランスタイプだ。

教科書通りのプレイスタイルで、カベをリスペクトした真面目で礼儀正しいプレイヤー。

いい意味でも悪い意味でも、地味で目立たたない、中堅らしいプレイヤーと言える。


メンバーの中で最弱である事を自覚していた彼は、自ら望んで階段降りを一人で担当。

鈍重な砲兵(アティラリー)や、召喚担当の忍者にリスクを背負わせまいとしていた。


侍チーム同様、彼らも万全の備えをして、打ち合わせ通り順調にダンジョンを進行。

だが、その進行速度が、ほんの僅か、数秒遅れたのが運命の分かれ道となった。


キャバが階段を降りた瞬間、回避不能の距離に虚無を確認。

猶予は一秒も無かった。


その一瞬、彼は決断した。


(俺に出来る事を……!!)


録画もしている。

来るべき時が来た。


目の前に一歩進み、聖騎士の「高速打撃」で秒間7発の攻撃を繰り出し……





『やられた!! 退けーーーーッ!!』


キャバの叫びがボイスチャットのスピーカーを震わせる。

状況は明白。

ブッチー達戦士チームは一斉に階段から距離を取る。


つらぬき丸が式神を、山田マンがドライアドを召喚し、砲兵の竜発破はカノン砲を設置。迎撃態勢を整える。


と、間もなく虚無が姿を現す。


「クソがぁっ!!」


ブッチーは机に拳を叩きつける。


第二の犠牲者を出しつつも、状況に変化無し。

近接戦闘による「鑑定」は失敗に終わった。


虚無の姿は、未だ巨大な?マーク付きの四角い板のままだった。







※プレイヤーは全員男です※

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