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44:アクト7、大魔王バルエン

コウヤ達はついにアクト7、最後の戦いへと到達する。

44:アクト7、大魔王バルエン




夜になり、ボイスチャットに集まったコウヤ達は、明日のユウイの誕生会の話で盛り上がる。

が、ラスボス戦を前にしてユウイ当人までもがテンションを上げ、早くゲームを始めたがっていた。

「流石に小学生の集まりに参加し辛いから」と断ったマヤを除いた四人で誕生会の打ち合わせを手早く終わらせ、いよいよ最後の戦い、アクト7終盤へと突入する。



辿り着いたのは、アクト7ボス戦前の最後の難関、「破王の玉座」。

玉座の間でありながら、無味乾燥な石造りの大広間があるのみ。

ここで中ボスラッシュを乗り切った後、ラスボスへの道が開けるのだ。



一番手、ゴブリン王・アニヒラス


大量のゴブリンシャーマンとゴブリン兵を従え、突撃と蘇生ラッシュによる人海戦術を仕掛けてくる。

ユウリの弓も中々ザコの壁に阻まれてボスに直撃を加えられないでいたが、ここはマヤのネクロが活躍。

蘇生される前に次々敵の死体を骸骨兵に変える事で、手早く敵の数を減らしていく事が出来た。

前線を構築するザコ兵士が片付けば後はこっちのもの。最後のゴブリン王の自爆にだけ気を付け、第一波の殲滅を完了する。



二番手、邪術王イアクメル


邪悪な太古の王のミイラが大量の骸骨兵を従えて登場。ボス、及び全ての雑魚が毒攻撃を使ってくるので、持久戦になると蓄積ダメージも馬鹿にならない。

敵がアンデッドばかりなので、「攻撃命中時体力回復(ライフ・オン・ヒット)」効果の付いた武器を使って回復できないのも厄介だ。

ユウイの「太陽の精霊」の回復効果の助けもあり、回復ポーションを幾つか使わされたものの、ここも労せず撃破。

ボスの死に際の猛毒の霧を避けつつ、次に備える。



三番手、黒き血のエルダーズ


バルエン四天王と言った風情の、老人のような姿をした四人の悪魔達だ。

それぞれが、氷、雷、炎、風、の四属性の攻撃を放ちつつ、召喚も次々設置してくる。

それでいて高速で走り回り、爪による近接攻撃も結構痛いという厄介な相手だが、敵がこちらの召喚NPCに気を取られている間にコウヤとカナリが近接攻撃を仕掛け、一体ずつ仕留めていく。

抑えきれない敵の召喚攻撃に後衛がかき回されたりもしたが、間もなく四体ともを撃破。次に備える。



四番手、大悪魔ヴァルター


言わば、魔王軍の大将軍。アメリカ人が悪魔と聞いて連想するそのままの姿、角と翼を持った巨体の大悪魔だ。

手にした大剣を振りかぶりつつ、高速の突進で痛撃を繰り出し、口からは炎を吹き出す。

行動はただそれだけ。

だが、大量のデーモン兵を引き連れ、一斉に火炎放射しながら突撃して来る勢いは凄まじく、ここで味方の召喚NPCは次々破壊されていく。

幸い、敵の死体には事欠かないため、マヤは次々骸骨兵を補充。ユウイも適宜狼の再召喚を行う。

ソロプレイでは一度後退し、敵を少しずつ誘き寄せて戦っていたコウヤも、味方の支援のお陰で正面から殴り合って勝つ事が出来た。

マナポーションはかなり消費させられたが、ここも間もなく殲滅を終え、次に備える。



五番手、破壊獣ギスター


魔王軍の最後の切り札。全てを食らい尽くし、踏み潰す破壊者、大怪獣である。

ティラノサウルス型モンスターを巨大化させたもので、大量の同型ザコとハーピーを引き連れ、恐ろしい勢いで猛突進を仕掛けてくる。

突進体当たりを受けた前衛は弾き飛ばされ、踏みとどまる事が出来ない。

流石に難易度ノーマルとは言え、ここは陣形を保つ事ができず、後方に下がりながらの戦いを余儀なくされる。

コウヤが「守りの加護」と「聖騎士の挟持」で恐竜の攻撃を引き受けつつ、一歩下がった位置でカナリがチクチクと痛撃を繰り出し、ユウリは後方から状態異常を飛ばしてくるハーピーを狙い撃つ。

それでも尚、恐竜軍団の突撃は防ぎきれず、カナリとユウイは一度倒されてしまった。

すかさずコウヤとマヤが二人を蘇生し、なんとか持ち直して形勢を逆転。

数の優位を取り戻した後、大怪獣ギスターを仕留める。

ここでは、大量の敵を挑発して引き付け続けたコウヤの功績が最も大きかった。


そして……



玉座無き玉座の間に一条の光が差し、頭上から玉座が降りてくる。



アクト7ボス、大魔王バルエン。



バルエンは無数の棘と角に覆われた禍々しい玉座と一体化し、その玉座に据え付けられた魔王・邪神のコアストーンを取り込んでいる。

そして、頭上には輝く天使の輪。ラーテから奪った物だ。


開幕、バルエンはいきなり多重に状態異常と弱体化を重ねた呪いを広範囲に仕掛けてくる。

防御力、攻撃力、移動速度を大きく削られた所で、おもむろに三体に分身。

それぞれが炎、氷、雷の魔法攻撃を放ってくる。


『左が本体!』


ボイチャでコウヤが叫ぶ。

よく見ると、攻撃時の玉座の発光パターンで違いを判別出来るようになっている。

ユウリ達は「ボスの名前の文字で見分けがつく」という事前情報を仕入れていたが、乱戦の中でBaluenとBaIenを見分けるのは難しく、経験に勝るコウヤが先んじて見抜いていた。


火力を担当するカナリとユウリが本体に火力を集中しようとするが、バルエンは一定時間毎に玉座から生えた鉤爪を振るい、プレイヤーをノックバックで弾き飛ばし、自らも後退。

分身を改めて再召喚し、再びシャッフルしてから攻撃を再開する。


『今度は真ん中!』


なるほど、攻撃魔法を放った際、偽物は玉座も同じ色に発光するが、本物はずっと七色に光ったままか…… と、ユウリも判別方法を理解する。

が、正体が見抜けたとして、これを追尾するのは容易ではない。

巨体を揺すりながらガシャガシャと多脚歩行する玉座は、分身にも判定と体力がしっかり有り、プレイヤーの攻撃と進路を妨害してくる。

本体と比べれば破壊するのは容易だが、この分身の物理攻撃にもふっ飛ばし判定がしっかり備わっていて、本体追尾を妨害してくる。


『こういう時のために僕がいるんですよ!』


ユウリは覚えたばかりの最終習得スキル「ホーリーアロー」を放つ。

その放物線を描く射撃は障害となる分身体の頭上を飛び越え、大魔王本体に着実にダメージを与えていく。

使い所が難しいものの、この聖なる光による無属性ダメージは貴重で、大魔王含むデーモン系モンスターには特に効きやすいという付加効果も備わっている。


『本体は任せた! カナリ、俺達はニセモンの方だ!』


『ええ! こちらの方ならどうとでも!』


コウヤが挑発スキルで分身を引き付け、最終習得スキル「無敵の聖壁」でノックバックをも無効化する。

その隙にカナリは、こちらも習得したばかりの最終スキル「反撃の勅令」を放ち、その強力なダメージ上昇効果を乗せた「救国の一刺」を叩き込む。

分身が破壊された所で、「栄光の(とき)」を放ち、さらなる火力バフ(強化)を獲得。基本ダメージが元の三倍にも伸びた「一刺」でロードの持つ最高火力を叩き出す。


が、大魔王は再び分身の再展開を行い、破壊された分身も復活してしまう。


『私にも見えた……!』


本体を見抜いたマヤは、だがしかしあえて分身体の方を狙って、最終スキル「ボーンプリズン」を発動。

これは耐久力を有した骨の壁で敵の四方を囲んで閉じ込めてしまうスキルだが、ボス本体相手ではすぐに破壊されてしまうだろうし、MAPを埋める分身の巨体を一つ行動不能にした方が効果的だと判断したのだ。


『こっちもお待たせー!!』


コウヤ達の立ち回りで安全地帯を確保したユウイは、発動に時間の掛かるドルイドの最終スキル「霊獣召喚」の詠唱を終えた。

巨大な熊が出現。大魔王の鉤爪にも弾き飛ばされない強力な手駒が前線に加わる。


中ボスラッシュによる経験値荒稼ぎの後、各々レベル35に到達。

合間の僅かな安全な時間を使って各キャラクターの最終スキルを習得。

なんとかラスボス戦に間に合わせた形だ。


分身体を押し留めつつ、火力特化のユウリが大魔王に集中砲火を浴びせ、間もなく決着の時が訪れる。


大魔王は絶叫を放ちつつ全身をひび割れさせ、その体内からまばゆい光がほとばしり、その光は画面全てを真っ白に覆い……



ここからは、デモムービーによる演出だ。


肉体を破壊された大魔王バルエンは、最早他の邪神・魔王のコアストーンの力を制御出来なくなっていた。

内側から焼き尽くされたバルエンは自身も一個のコアストーンへと姿を変え、床の上に転がる。

その石を拾ったのは、破壊されずに残っていた、玉座から伸びた鉤爪の手だった。


玉座から、あのローブの男の上半身が生えている。

彼の正体は、偽りの神・ガラエル。

魔王と邪神との、地獄を二分する大戦争の果て、バルエンに飲み込まれていたもう一つのコアストーンであった。


彼はバルエンに吸収されて尚魂を失わず、ずっと反撃の機会を待ち続けていた。

長い時の果て、ついに肉体の支配権を奪い返し、彼は気付く。

2つのコアストーンを支配して得た力は強大である、と。

ならば、より多くのコアを取り込んだら、どうなる?


コアを自身の物として取り込むためには、一度現世に降臨した上で、その肉体を滅ぼす必要がある。

だから、それぞれのコアを人間界で受肉させ、プレイヤーに倒させてきたのだ。

そして今、全てのコアは最後に残った唯一の神、邪神ガラエルの中で一つになる時が来た。

大天使の光輪と言う予想外の力をも取り込み、最強の神が誕生する。

最も弱き神が、最後の勝者となるのだ!と、ガラエルは勝ち誇る。


だが、ガラエルもまた、今この瞬間、未だ力の器としての完成を見ていない。

ボロボロの玉座がコアストーンを取り込みつつ変形を始め、新たな肉体を形成し始めるこの時……


『これが最後のチャンスだ!』


そう叫び、ラーテが剣を振りかざしながら突進。

玉座から生えたガラエル本体の上半身を袈裟懸けに両断。その手に握られた魔剣を奪い取る。

次元を断つ二本の魔剣を合わせれば、コアストーンを完全消滅させる事が出来る。


コアストーンを破壊すれば、不浄呪いと魔力の爆発により、この地は穢れ、この場にいる全員が即死するだろう。

だが、彼らに迷いは無い。

ラーテの一撃で半壊した邪神の肉体から、最後の一つ、ガラエルのコアストーンが露出している。

7つのコアストーンが一つになるその瞬間、二本の魔剣を邪神に叩き込み、諸共に果てるのみ。


ここで、初めてプレイヤーの姿がムービー上に現れる。



『我らが女神よ、貴方の無念を今ここに!』


パラディンがザンダルナのコアストーンを掴み、走る。



『偉大なる先人よ、砂に埋れた叡智により、今こそ!』


ソーサラーがドゥゲムのコアストーンを掴み、瞬間転移する。



『我が故郷を穢した報い、今こそ受けるがいい!』


アーチャーがナートホープのコアストーンを弓につがえ、放つ。



『冥府の王よ、貴方様の命脈、今ここで人の子が絶ちましょうぞ!』


ネクロマンサーがデアゴーンのコアストーンを掴み、投げる。



『王国に仇なす者、その全てを我らは討つ! 今こそ報いを受けるがいい!』


ウォリアーが罪の神アムダーのコアストーン(巨大魔獣ビヒモスに埋め込まれた物)を掴み、突進する。



『貴様なぞを信仰させられた我が教団の屈辱、今こそ受けてもらう!』


アサシンがバルエンのコアストーンを掴み、跳ぶ。



『この星の大地に生きる者達の力、今ここに結集せん!』


ドルイドが変形し続ける邪神の体内に飛び込み、そのコアストーンを掴み取る。



ドルイドの手によって高く掲げられたコアに、次々コアがぶつかり、一体となって行く。

最後にパラディンが渾身の力を奮ってコアストーンを叩き込み、7つの石はついに一つとなる。



『神よ! 今この一瞬、我に力を!』


ラーテが二本の魔剣を振り上げ、交差させたその瞬間、天使の輪が彼の元に戻る。

閃光と共に大天使の姿を取り戻したラーテは、合体し、眩い発光体と化したその塊に両刀を振り下ろし……



ムービーが終わり、プレイヤー達はアクト5・6・7の拠点、戦士の王国バラートの町へと転送されていた。

傍らには、天使の幻影が立ち、ラーテがその身を犠牲としてプレイヤー達を魔剣の力で送り返してくれたのだと教えてくれる。

次元を断つ剣による巨大コアの破壊は全てを焼き尽くし、地下深くの地獄の領域は消滅。


<<戦いは終わった。ありがとう勇者たちよ……>>


そう言い残し、天使の幻影は消滅する。

人間界に関与してはならないという天界の掟を曲げてまで、感謝の言葉を届けに来てくれたのだ。


王国の将軍が現れ、残敵の掃討は任せてくれと言い残し、ウォリアー軍団と共に出陣。

最後に国王が登場し、プレイヤーに報酬を手渡す。


<<おめでとう! 貴方は世界を救い、『救国の英雄』に任じられました!>>


画面に大きく祝福のメッセージが表示され、眼の前に一つのポータルが開く。

そのポータルの名は……


<< この世界から旅立つ >>



難易度ノーマルの世界は、これで終わる。

RSMODの仕様だと、このポータルをくぐった後は二度と戻って来れない。


コウヤ達はクエストの取り損ねが無いかどうか入念に確認をした後、この門をくぐっていった。






ここまでは、「ムービー演出だとパーティー構成を反映できないから、プレイヤーの姿は出てこない」とか、そういうゲーム上の制約を考慮した表現をしていました。

最後はエンデイングらしく、全員が力を合わせて、各自の因縁めいた事を口走らせてみました。

きっとこの辺りのバックボーンも、分厚い説明書を読めば詳しく分かるのでしょう。


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