表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
43/104

43:ムーンナイト・グレイファントム

コウヤがプレゼント選びに頭を悩ませていたその頃、コウヤの父は絶体絶命の危機に陥っていた。

43:ムーンナイト・グレイファントム




「うーん…… 女子つったら、やっぱ……こういうの?」


コウヤが玩具売場で手にしたのは、プリティムーン・フレッシュⅤスターズ、DXフレッシュスターミラキュアパクト。

光って回って喋ってメロディが流れる上、液晶画面を備えて様々なミニゲームで遊べる5800円の番組マストアイテムだ。

これなら鉄板だろう。ユウイだって……


(いや……)


ユウイだぞ。ユウイへのプレゼントなんだ。

プリムンで喜ぶ年かどうか微妙にも思うし、何より……


(これはこれで小さい子にはいいんだろうけど……)


ユウイは、マジホリを喜んで遊べてしまう女の子だ。

ガッチガチに渋い、おどろおどろしくグロくてマッチョなRPGを遊んでいる女の子だ。

それがいくら兄達の付き合いで遊んでいるにせよ、既に本格派にハマりだしている以上、「こういうミニゲーム」はもう喜ばないのではないか、と…… そう思えた。


「うーん…… 難しいな」


「よく考えて決めなさいよ」


母に付き添われてのプレゼント選びとは言え、女児向け玩具のコーナーであれこれ悩んでいるのはいかにも気恥ずかしい。

さっさと決めて立ち去りたいところだが……


「なあ、やっぱり母ちゃんが決めてくれた方がいいんじゃないか? どういうの喜ぶかも分かるだろ?」


「こういうのは、あんたが選ぶ事に意味があるの。母さんが選んだら、母さんからのプレゼントになっちゃうでしょ? お金だって私が出すんだから」


「うーん、確かに……」


そもそも、いいかげんマジホリ会に引きずり込んでしまっている上に、更に別のゲームや玩具を渡してしまっていいものか、という気もする。

ゲームソフトが増えるとウチのかーちゃんも「また増えた」「遊ぶことばっか考えて」と嫌そうにするではないか。

何か、もっと無難で確実な、喜んで貰える物が何か他に無いものか……


(ユウイが喜ぶ物……)


ユウイの笑顔を思い出す。

ネコミミを付けて、本当に嬉しそうにしている、あの姿……

やっぱり、ユウイには可愛いのがいい。あんなに可愛いんだから。


「リボン……とか、どうかな?」


「あら、いいんじゃない?」


コウヤは母と共にアクセサリー売り場に行き、派手すぎず、普段使いがしやすい物の中から、少し豪華に感じられる物を3つほど選んで購入。

プレゼント用の包装を頼み、目的を達成した。





一方その頃、コウヤ宅では、父が絶対絶命の危機を迎えていた。


:ツバサ

:それで……何の用でしょうか?


:キツネっち

:ちょっと、情報が欲しくてね

:そちらさんでしか手に入らない、マジホリ情報


:ツバサ

:察するに、虚無絡みですね


:キツネっち

:当然


:ツバサ

:と、言いましても、私はグラフィックを提供しただけで、内部事情は何も知りませんよ


:キツネっち

:黒き影の夜想曲と書いてミッドナイトレクイエムと読んでも?


しばしの沈黙。

コウヤの父(片翼の天使)の忍耐が試される試練の時だ。


:ツバサ

:ええ、本当に、私は関わっていません 何も情報は持って無いんですよ


:キツネっち

:そう……

:じゃあ、貴方が私に提供出来るのは、開発者メーリングリストのログだけね


:ツバサ

:それは流石に、個人情報保護の観点からどうかと思いますが……

:開発参加条件にも反しますし……


:キツネっち

:本当に? それでいいの?


再び沈黙の時。

絶望的なまでに無力な、冷酷な死刑宣告を前にした哀れな生贄。


:キツネっち

:アルバム第二弾、月光に耽ける灰色の侵略者

:息子さんにプレゼントしてみてはいかがですかね?


震える指。食いしばられた歯。コウヤの父はソファを殴りながら、苦悶の声を上げる。


だめだ。叫んではダメだ。

家にはまだマヤがいる。

悟られてはいけない。

万が一、こんな画面を見られでもしたら、勘のいいあの子は……!!


:ツバサ

:ダメだ


:キツネっち

:あら? ほんと?


:ツバサ

:これは君が考えている以上によろしくない事なんだ

:ここでは不十分だ


:キツネっち

:あらまぁ…… そんなに?


:ツバサ

:そんなに、だ

:後は君が考えてくれ


:キツネっち

:分かったわ

:ではまた後日、という事で


:ツバサ

:ああ






チャットを閉じると、キツネは深く溜め息をついた。


(思ったより大事っぽいわね…… これは)


あれだけの黒歴史を家族に知られる危険と天秤に掛けながら、それでも途中までは耐える姿勢を見せた。

しかも、外部の人間が決して見ることの出来ないMisscode内ですら話すのを躊躇うという程の事。

それ程に「よろしくない」事であり、Misscodeという会社に記録が残る事ですら安全性が「不十分」で、手段の立案をこちらに「考えてくれ」と言う程の、それほどまでの事……


キツネは直感した。

これには、訴訟が絡んでいる、と。


「なーんか、少しだけ、見えてきたかも……」


キツネの頭の中にあるピースの幾つかが、カチカチと綺麗にハマッていった。

まだ自信は無いし、早とちりの可能性も大きい。

それでも、一歩前進した実感はあった。


「さーて、こうなるとますますムラマサちゃんじゃ手に負えないよねぇ……」


キツネは心底楽しそうな、品のない笑顔で計画を練り始める。







キツネはハッカーではありません。ただ情報を集めるのが上手いだけです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ