42:汚い手
デートと称してユウイから映画に誘われたコウヤだったが……
42:汚い手
「アホかーーーー!!」
「痛ぇっ!!」
日曜朝のヒーロー番組を見終え、明日映画に連れて行ってもらえる件を母に伝えると、コウヤは頭に思いっきりゲンコツを食らわされた。
「三年生の女の子に気を使われて、ダサさの極みとか思わないのアンタは!」
「うっ…… それは確かに……」
小遣いが無い事を心配され、プレゼントするどころかプレゼントされる始末。
特にカッコつけようとかモテようとか気にしていない男子からしても、これはもう「男がすたる」というものだ。
「ほら、三千円くらい出してあげるから、あの子が好きそうなモン買いに行くわよ!」
コウヤは母に連れられ、近場のスーパーに出かける事になった。
「ほーん、なるほどね…… やっぱランカーは違うな」
クラガはブッチーの助言に従い、下準備のための育成を進め、その方法を試してみたのだが、確かに段違いの経験値効率だった。
ある時期から、マジホリRSの仕様に穴が出来て、新たな「狩り場」が見つかっていた。
通常、一度倒した敵はそのゲーム中復活しない。一度ゲームをやめ、パーティーを解散し、新たにログインし直さなければゲームにリセットが掛からない。
ところが、RSで独自に配置したユニークエネミーに関しては、このフラグ管理が「部屋を立てた者」基準で行われるようになっている。
手順はこうだ。
・アカウントを2つ作る
・サブアカでゲームを開始し、メインキャラをパーティーに招待
・サブを放置したまま、メインキャラでユニークエネミーのいる宝部屋に向かう
・宝部屋を出入りする度にユニークエネミーが復活するので、狩り放題となる
有効なマジホリアカウントが2つ必要である事から、そこまでして効率化をする人間は少ないのだが、RSMODサーバーでは「ちゃんとした製品版かどうか」のチェックが行なわれない。
クラガが違法ダウンロードしたマジホリのIDで問題無くプレイできているのもそのためだった。
調べられていない、バレていないだけで、禁止事項に変わりはない。本来ならちゃんと製品付属の登録IDが2つ必要となる。
幸い、クラガにはオークションで落札した分のIDがある。
クラガはデスクトップPCにもマジホリをインストールし、2つ目のIDでサブキャラを作り、そちらもベリーハードまで進め、先の方法を試してみた所だった。
メインキャラと同じ難易度で部屋を作らなければならないため、サブキャラを育成する手間が掛かる事も、この方法が流行っていない理由の一つだ。
ベリーハードならまだいいが、インフェルノでこれをやるためには、常にメインキャラと同等の戦いが出来るサブキャラが必要となる。
だが、クラガはトップランカーの助言ならばと、「それだけの価値がある」と判断。サブキャラの育成に踏み切った。
宝部屋の番人等で出現するユニークエネミーでは、ドロップアイテムの「ボス補正」が掛からない分、戦利品にはあまり期待出来ないが、経験値効率は飛躍的に上昇する。
クラガは丁度今、サブキャラのサブキャラを用意し、この二人目の育成をも超高速で進めている所だった。
「流石にこれはヤベーだろ……」
部屋を出入りするだけでアクトボスを上回る経験値が得られる。いかにもゲームバランスを壊すようなシステムの穴だ。
本来はこうでは無かったのだが、どこでそうなったのか。インフェルノダンジョン作成の際にシステム的に相当な無茶をやった弊害だとも言われている。
が、そんな事情はクラガに知る由も無い。
規約違反でも無いのなら、使える手段は使わせてもらうだけだ。
そもそも、当初からこうだった訳でもないため、昔からのプレイヤーでもこの方法を知る者は少ない。
こんな美味しい手を教えてくれたブッチーには感謝しなければ。
コウヤの父は、深刻な顔付きで自室のPCの電源を入れ、携帯の画面を見ながら、教えられた手順通りにして準備を整える。
当時とはメールアドレスも変わっているのに、どこでどう調べて来たのか……
いや、彼女ならこれくらいはやる。キツネっちとはそういう女性だ。
覚悟を決め、チャットツール「Misscode」に作られたキツネの部屋に入る。
:ツバサ
:どうも、お久しぶりです
:キツネっち
:待ってたよ~ お久しぶり、片翼の天使さん!
胃がキリキリと締め付けられ、嫌な汗が滲み、動悸が高まる。
こいつは、この女は知っている。ニヤニヤしながら、その手に握っている。
俺の弱みを!!
正規のマジホリを違法ダウンロードで遊ぶ事は出来なかったが、MODサーバーだから大丈夫、という事です。
(出回って多数に利用されているような個人利用の規模を越えているIDは会社のサーバーで弾く)
RSMOD側の利用規約でも禁止はしていますが、チェックするシステムが存在しないので、実質ザル状態という事です。




