41:親子の悩み
ユウイの誕生日を前にして、コウヤはプレゼント選びに悩んでいた。
41:親子の悩み
「お、コウヤ、今日のマジホリは終わったのか?」
「うん。丁度今解散したとこ」
コウヤがプレイを終えて明日の学校の準備をしていると、廊下で父と出会った。
「で、どこまで進んだ?」
「ラスボス手前。明日にはノーマルクリア」
「以外と手間取ってるな。
まあ、初めての子もいるなら仕方ないか。一人の時と違って時間掛かるからな」
確かに、一人で遊んでいた時の方が進みはずっと早かった。
強敵相手の戦いではグッと楽になるが、やはり歩調と日程を合わせての進行では気楽なソロプレイよりどうしても遅れてしまう。
「父ちゃんがやってた頃って、オンラインプレイ流行ってたんだろ?」
「ああ。ロビーに集まってる人間に、今からアクト3ボス狩り行くけど、どうですかーって呼びかけたりな。
知らない人と適当に集まって、適当にやって、ロクに会話もしないまま適当に終わる。
サッパリしてて、あれも悪くは無かったな」
「ふーん……」
正直、コウヤにはそれで本当に面白いのか実感は無かったが、そういう時代だったんだろうな、とアバウトに理解する。
「RSさ、今凄い事になってるけど、父ちゃんは復帰しないの?」
「うーん…… 今から新キャラ作ってもな…… 父さんも掲示板は見てるよ。
みんなと同じ、相変わらず何がなんだか分からない状態だよ」
「作った人でも分かんないってどうなってんだよホント」
「作ったって言っても、父さんは絵のデータを提供しただけだからねぇ」
「そう言えば、前言ってたロードのお姫様のモデルって、結局……」
「その話は無しだ! じゃあな!」
「なんだよもー!!」
慌てて話を打ち切り、自室へと姿を消す父。
自分から勧めておきながら、どうにも父はマジホリを避けたがっている様子が伺える。
何か過去に嫌なことでもあったのか……
(ん……? 珍しいな)
ブッチーは、掲示板に見慣れないスレッドが上がって来ている事に気付く。
はじめまして マジホリRS始めました(2)
たった2件の書き込みしかないが、どうやら虚無事件に触発されてマジホリを始めた奇特な新規勢がいるようだ。
興味本位でスレッドを開いてみると、一緒にストーリー攻略する仲間募集でのスレ立てのようだったが、当然ながら返事は無い。
今どき新規にこのゲームを始め、しかもこんな場末のMODwikiの掲示板をチェックするような人間が他にいるはずもない。
が、しかし、数日遅れて、今日になってからもう一件書き込みが来ている。
2 見習い暗黒騎士 ****/**/**(土) 23:15:02.18
俺もRS初めました。今ベリーハードです。
もうすぐインフェルノ入りですが、初心者のソロプレイではどういった所に気を付ければいいでしょうか。
できるだけ早くレベルを上げまくって、出来れば虚無調査隊に入れれば、と思ってます。
手段は問わず、どんな事でもして、ガチで育てるつもりです。(2日でベリハアクト3まで行った!)
よろしくおねがいします。
いかにも考えの甘い、物見遊山の素人らしい書き込みだ。
「始めました」の字を間違っている辺りが余計に初々しい。
今から鍛え始めて虚無戦に加わるなんて、どうやったって無理だろう。
インフェルノクリアまでならともかく、あのダンジョンに挑むには、いくら時間があったって足りやしない。
そもそも、新人が虚無と戦えるくらいに虚無討伐に時間が掛かってしまった場合、ランカー勢の住む四層が「終わった」という事になる。
中堅プレイヤーがいくら集まった所で、ガチ勢が勝てなかった虚無を相手にしてどうこう出来るとは思えない。
(だが……見どころはあるな)
初心者が2日でベリーハードまで行っているのは中々のやる気具合だし、手段は問わずどんな事でもすると言ってのける覚悟もいい。
ブラックチーターを自称する彼としては、なにがしか助言くらいはしてやりたくなる。
3 ブッチー ****/**/**(日) 03:41:53.88
>>02
本当に何でもする覚悟があるなら、3ボスラン以上の狩場を幾つか教えられるが
かなり準備は面倒だぞ
インフェ対策なら、まず耐性付き防具を揃えるのが第一
退屈でも3ボスランと7ボスランを繰り返すといい
せっかくの貴重な新人だ。
せいぜいマジホリ沼に引きずり込んで、立派なハクスラ廃人に仕立て上げてやろうではないか。
モニターの光を浴びながら、ブッチーはニンマリと邪悪な微笑みを見せる。
明けて翌朝、日曜日。
ユウイは明日の誕生祝いがてら、家族で出かけているため、マジホリ会は夕方からになる。
今日のうちにプレゼントを何にするのか考えなければいけないコウヤは、真剣に頭を悩ませていた。
昨夜、困った挙げ句に母に相談し、「本人に聞いたら?」と言われ、アドバイスに従う事にした。
買い物に行くなら今日しかないし、朝起きてすぐのメール確認。
Re:プレゼント何がいい?
良かった。返信がもう届いている。
少しくらいなら母が資金を用立ててくれると言うし、後は要望を聞くだけでいい。
ユウイの事だから無茶な注文はしてこないだろう。
私、誕生日プレゼントは、コウヤさんとのデートがいいです!
誕生会が終わったら映画を見に行くんですが、コウヤさんも一緒に行きませんか?
(チケット一枚余ってます!)
(そ、そう来たか……!?)
動揺するコウヤ。
確かに、好かれているのは分かっていたが、こう直球でデートなどと言われると、流石に意識はしてしまう。
文面からすると、家族と一緒のようだし、ユウリも一緒来るのだろう。
デートと言っても、そう気にするような話じゃないはずだ……
しかも、これならタダで映画が見られる上、プレゼント代も気にしなくていい。
よく気の利くイモウトならではの完璧な提案じゃないか。
コウヤは上機嫌で返信。快諾の旨を伝えた。
日曜日はいつも遅いコウヤの父は、この日も昼前になってようやく起床。
仕事用と私用と、2つの携帯のメールを確認。
そこで初めて、昨夜届いていたメールに気付く。
お久しぶり、キツネっちです。マジホリの件でメールしました。
血の気が引く音を感じながら、眠気が一瞬で消し飛ぶ。
これだ。
これだからもうマジホリには近付きたく無かったのに!
なぜ今頃になってあちらから……
相談してないというのもおかしいですし、ここまでの間のどこかで、コウヤ&マヤと父親の間で、虚無に関する話は既にしている、という事にしました。




