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36:有志持久戦

ムラマサや山田マンは召喚連打による虚無足止め作戦を開始する。

36:有志持久戦




今回、山田マンが提案した作戦は、現状唯一虚無に対して「何らかの影響」を及ぼすことが出来るものだった。

つまり、大量の召喚をぶつけ、一瞬の即死処理を積み重ねる事によって敵の進行を遅らせるという、足止めに限定した作戦だ。

一見すると、ただ単に展望もないまま「とりあえず」で時間を稼いでいるだけの割に、長大な時間と労力を要するという、無駄な作戦にも思えるが、これにはちゃんとした目的がある。


このままでは、いずれジリジリと押し込まれ、四層最後の砦……151階が陥落する。

もしも、ここまでと同じように、151階の次、第三層150階まで進んでしまうのだとしたら、もうトップランカー達は虚無と戦う事ができなくなる。

インフェルノダンジョンでは、先の層に進めばもう元の層に戻る事は出来ないのだ。

もし火力が虚無撃破の解法であるなら、倒す機会はそこで潰える。

残された時間はそう多くない。


三層ボスを倒した後、四層に進む際には階段ではなく扉を開いて進行する。

階段が消えないなら、虚無の侵攻もそこで終わるという可能性もある。

山田マンは、そこに一縷の望みを見出していたが、楽観視は出来ない。

決戦を仕掛けるなら、151階だ。


そこまでにベストのメンバーを揃え、各プレイヤーの予定を調整しておく必要がある。

時間稼ぎは、第一にそのスケジュールを揃えるまでやる事が無いから、最低限出来る事をしておこうという事でしかなかったが、もう一つ目的がある。

151階の最終防衛ラインに備え、その戦いに参加可能な人間を少しでも増やすため、という方が大きい。


ムラマサや山田マン達は一つの疑問をまだ検証できずにいる。


2つのパーティーが同時に第四層に挑んだ場合、どうなるのか、という疑問だ。


皆が立てた仮説の中には、「これはレイドバトルではないか?」という物もある。

当時は実現しなかった、サーバーの全プレイヤーが協力して同じボスと戦う、というレイドシステムを、どうにかして実装してしまったのではないか、という推論だ。

山田マン自身、その可能性はある程度あると見ている。

つまり、複数のパーティーで同時攻略して初めて、何らかの対策が取れるようになるのではないか、という見通しだ。


今はそれを検証するための頭数が足りない。

今現在アクティブなプレイヤーの中で、第三層クリア済みの者は、おそらく16人に満たないだろう。

今、レベル450前後のプレイヤーは必死に育成と攻略を進めている。

皆、この祭に参加しようと必死なのだ。

だから、自分たちは彼らが出来るだけ多く第四層に辿り着けるよう、それまでの時間を稼いでおく必要がある。


MAPの地形にもよるが、虚無は一日に1階から3階のペースで進行して来ている。

四層を守り抜くための決戦は、大体三週間後、と言ったところか。


希望はまだある。

だから、まだ、出来る事を出来るだけやる。

今はまだ、大丈夫だ……





そして、虚無と遭遇したのは188階。

既に延々召喚を放ち続けるだけの不毛な戦いが、40分以上続いていた。



『第二便行くぞ』


『k』


町に帰還し、あらかじめ全員の協力で大量に床置きされたポーションを回収し、前線に戻るブッチー。

ブッチーも、なんだかんだ悪ぶっていても、やるとなったら協力する人間だ。

素早くつらぬき丸の足元に青ポーション、軍団長ゴリの足元に紫ポーション(体力とマナを同時に回復)を設置。一閃のパラディンと入れ替わって後方警戒に当たる。


『thx』


二人の召喚要員は感謝の言葉もそこそこに、素早くこれを回収して召喚の連打に戻る。

ポーションを召喚素材に使う必要はあるが、ビーストテイマーの召喚は消費が小さく隙が無い。

二人合計して50体近くの同時召喚を行い、怒涛のように次々虚無に突撃させていく。


(!?)


ムラマサは、その瞬間に一つの希望を見た。

大量の召喚が同時に虚無と接触し、その処理が行われるラグの間に、式神の一体が虚無を突き抜けて後方に出たのだ。


『見たか今の』


『ああ』


ブッチー達も気付いていた。もしかすると、ここに攻略の糸口がある可能性もある。


『あの瞬間に一撃を入れる事ができれば、死なずに接触出来るかもしれない……』


『攻撃が通らないまでも、一発さえ入れられれば未確認状態に持っていけるかもしれんな』


『いや』


効かないと分かっていながら延々射撃とドライアド召喚を続けていた山田マンが手を止め、応じる。


『やめといた方がいい。そういうリスクを取るのは、他の人間の役目だろう。偵察でロストされちゃ困る』


結局、死なずに接触している召喚NPCもダメージを出している訳ではない。

虚無を作った者の意図がどこにあるにせよ、ラグを利用しただけで、「これが正解」とは言えまい。

一撃を入れる事が出来たとして、次の瞬間死んでいる可能性が極めて高い。


動画も撮っている。検証は後でいい。

今はただ、淡々と時間稼ぎをする。


だが、試す機会があるのなら、これは……



ジリジリと、プレイヤーの忍耐力を削りながら、虚無は今日も僅かずつ、その歩みを進めていく。





レイドに説明を付けた方が良かったか… 後で編集するかもしんないです(※しました)

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