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32/104

32:苛つく者達

ムラマサ達トップランカーの不在で、残されたメンバーは苦戦していた。

32:苛つく者達




山田マンは悩んでいた。

自分が、自分こそが犠牲となって真相に近付くべきだったのに、と。

それが出来ていれば、とっくに楽になれたのに……


メインキャラのロスト? 上等だ。

それで肩の荷が降りて、長い道のりの果て、大いなる満足感と共に終わる事もできた。

なのに、これだ。

一番レベルが高いブッチーはまるで会話をしたがらないし、今夜もまた慣れない自分が指揮を執るしかない。

こんなのは自分の役目ではない。ムラマサは何をしている。早く戻って来い……


『ごめ 蘇生』


『無理』


また一人、見慣れない名前のプレイヤーが死んでいる。

「虚無祭」に惹かれて来ただけの、大して装備も揃っていないレベル400台のプレイヤーが、今日は三人も付いてきていた。

187階の階ボスとの慌ただしい戦いで、他のプレイヤーは持ち場を離れられない。制限時間内の蘇生に失敗し、犠牲者は町送りとなる。


『ポータルお願いします』


『k』


素早く一閃さんがポータルを開いて復帰支援をしているが、これでもう三度目だ。

日本語入力する手間も惜しんで半角のまま返事をしている状態だ。

他の同行者に任せた前線の方も火力が足りずに敵を通してしまい、パーティーは内側から殴られる状態で、ランカー勢三名が必死にカバーして回る。

自分、ブッチー、一閃、の三名に、レベル不足のプレイヤー五名という編成。

頭数こそ八人揃っているが、これでは一人の方が余程やりやすい。


「クソザコが足引っ張りやがって……」


思わず罵倒も出てしまう。

だが、ここで皆を守るのが自分に課せられた責務だ。

なんとしても守らねばならない。RSという掛け替えのない場所を、この自分の手で……





「で、またこれ」


RS開発者の足跡を辿ろうと、持ち前のストーカー能力を発揮し、あの手この手でネット上に残る情報の断片を探り始めたキツネだったが、予想外の展開に困惑していた。

こういった時に頼りになるWeb魚拓サイトが、まともに機能しないのだ。

数人の開発メンバーの個人特定は出来た。彼らの個人サイトの日記やブログ記事を当たり、当時の書き込みを探り出そうとしているのだが、十五年ほど昔の事でもあり、殆どが消えた後。そこで魚拓サイトにログが残されていないかと思って調べているのだが、不思議なほど「この魚拓は削除されました」に当たる事が多い。


(ここの魚拓は消されにくい事で有名だったはずだけど……)


南米にサーバーを置いていて、日本からの削除は特に通りにくく、逆に裁判をチラつかせて脅してくる事もあると言う。

そんなサイトが、こうも日本サイトの削除を行っているとは……

これだけやれば、普段は幾つか手がかりがつかめているのだが、偶然にしては出来すぎていると感じる程に、何もつかめない。


「そっちはどうですか……っと」


埒が明かない。

キツネはムラマサにメールを送り、一旦手を変える事にする。

こうなったら、中心メンバー以外を洗ってみるしかない……





「クッソ、遅ぇっつーの!」


クラガは一人、ネットオークションの連絡画面を見つめながら罵っていた。

いくら頭の悪い自分でも、今から虚無討伐競争に参戦しようとするのが難しい事くらい分かっている。

相手の返信を待ち、代金を振り込み、それを確認した出品者が荷物を発送し、その到着を待つ……

これでは、開始するまで何日掛かるか分からない。その数日が決定的な出遅れになる可能性がある。


クラガには、そんな自分でもチャンスがあると、そう見込みを付けていた。

全てのダメージが通らず、倒せないボス……そんなものがあるはずがないと思っていた。

だから、掲示板内でも根強い「ダメージ表記をゼロに見せかける能力」説に賭ける。

一発でも攻撃を当て、ボスを倒すその瞬間に居合わせる事が出来るなら、自分にもボスを倒した後の戦利品が手に入れられるはず。

そんな不確かな希望があるからこそ、戦力不足のプレイヤーまで集まって挑戦を開始しているのだ。


だから目標は、最低限パーティーに加えてもらえる程度、400レベルを越え、第三層を突破できるようになる戦力の確保、だ。

今から虚無が生きている間にそこに辿り着くのは、時間との戦いになる。

数日のロスが、どうしようもなくもどかしい。

我慢ならない。もう、待っていられない。


クラガは、検索を始める。


”Magical Holy Strength” ”Download”


今もマニアがプレイし続けているようなゲームなら、きっといるに違いない。

違法アップロードをしている者が。





犯罪を助長する内容、とかに抵触しないように手加減して書かなければ…

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